Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)による2024年7月の最新データによると、レバノンの大麦生産量は2023年時点で30,000トンに達しています。この数値は過去数年間で安定しており、2018年以降は大きな変動が見られません。一方で、1960年代からの長期的な推移をみると、大麦生産量は一時的な増減を繰り返しつつも、気候変動や社会的要因による影響を随所に受けてきました。
レバノンの大麦生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 30,000 | - |
2022年 | 30,000 | - |
2021年 | 30,000 |
-3.23% ↓
|
2020年 | 31,000 |
-3.13% ↓
|
2019年 | 32,000 |
6.67% ↑
|
2018年 | 30,000 |
-15.64% ↓
|
2017年 | 35,561 |
-27.11% ↓
|
2016年 | 48,790 |
31.5% ↑
|
2015年 | 37,101 |
12.43% ↑
|
2014年 | 33,000 |
-5.71% ↓
|
2013年 | 35,000 | - |
2012年 | 35,000 |
16.67% ↑
|
2011年 | 30,000 |
35.68% ↑
|
2010年 | 22,110 |
-25.55% ↓
|
2009年 | 29,700 |
2.41% ↑
|
2008年 | 29,000 |
-12.39% ↓
|
2007年 | 33,100 |
4.09% ↑
|
2006年 | 31,800 |
9.66% ↑
|
2005年 | 29,000 |
21.85% ↑
|
2004年 | 23,800 |
-4.8% ↓
|
2003年 | 25,000 |
46.2% ↑
|
2002年 | 17,100 |
111.11% ↑
|
2001年 | 8,100 |
-13.83% ↓
|
2000年 | 9,400 |
-32.37% ↓
|
1999年 | 13,900 |
-7.33% ↓
|
1998年 | 15,000 |
-42.4% ↓
|
1997年 | 26,043 |
-8.37% ↓
|
1996年 | 28,423 |
-14.93% ↓
|
1995年 | 33,410 |
65.52% ↑
|
1994年 | 20,185 |
0.93% ↑
|
1993年 | 20,000 |
-5.23% ↓
|
1992年 | 21,103 |
9.36% ↑
|
1991年 | 19,296 |
-4.65% ↓
|
1990年 | 20,238 |
12.37% ↑
|
1989年 | 18,010 |
6.02% ↑
|
1988年 | 16,988 |
1.34% ↑
|
1987年 | 16,763 |
28.95% ↑
|
1986年 | 13,000 |
44.44% ↑
|
1985年 | 9,000 |
80% ↑
|
1984年 | 5,000 |
-16.67% ↓
|
1983年 | 6,000 | - |
1982年 | 6,000 | - |
1981年 | 6,000 |
-14.29% ↓
|
1980年 | 7,000 |
40% ↑
|
1979年 | 5,000 |
-37.5% ↓
|
1978年 | 8,000 | - |
1977年 | 8,000 |
-38.46% ↓
|
1976年 | 13,000 |
-7.14% ↓
|
1975年 | 14,000 |
7.12% ↑
|
1974年 | 13,069 |
100.72% ↑
|
1973年 | 6,511 |
-13.81% ↓
|
1972年 | 7,554 |
19.75% ↑
|
1971年 | 6,308 |
7.32% ↑
|
1970年 | 5,878 |
-12.92% ↓
|
1969年 | 6,750 |
-41.64% ↓
|
1968年 | 11,567 |
-26.54% ↓
|
1967年 | 15,746 |
23.76% ↑
|
1966年 | 12,723 |
0.98% ↑
|
1965年 | 12,600 |
-16% ↓
|
1964年 | 15,000 |
50% ↑
|
1963年 | 10,000 |
-23.66% ↓
|
1962年 | 13,100 |
9.17% ↑
|
1961年 | 12,000 | - |
レバノンの大麦生産量の過去60年を振り返ると、明確な変動パターンが認められます。1960年代は大麦の生産量が年間10,000~15,000トン程度で推移していましたが、1970年代に入ると生産量が特に低下し、5,000~8,000トンの範囲で推移しました。この減少は、当時のレバノン内戦や地域的な不安定要因が農業基盤や物流に打撃を与えたことが影響していると考えられます。
1980年代後半以降、大麦生産量は次第に回復し、1990年代半ばには33,410トンを記録するなど、一時的に著しい増加がみられました。この回復は穀物栽培の技術発展や農地の回復が寄与した可能性があります。しかし、1996年以降の生産量は再び徐々に減少し、2000年代初頭には8,000~10,000トン程度まで低下しました。この減少の背景には、干ばつや異常気象の頻発、農業に対する公的支援の不足が挙げられます。
その後、2003年以降、大麦生産量は安定的に増加傾向を示し、2016年には48,790トンと記録的な生産量に達しました。しかし、このピークの後にはやや減少がみられ、2018年以降は30,000トン前後の安定した水準を保っています。特に近年、新型コロナウイルス感染症の世界的流行や地政学的緊張の影響を受けながらも、生産量が極端に減少することはありませんでした。これは、農業従事者がパンデミック下での柔軟な労働環境を整えたことや、地域的な需要に支えられたことが考えられます。
他国と比較すると、レバノンの大麦生産量はドイツやフランスなどの主要生産国と比べて大幅に少なく、これらの国では毎年数百万トン規模の大麦が生産されています。一方、レバノンは乾燥地帯が多い中東地域に位置しており、環境条件や土地の制約を考慮すると、現在の生産量は比較的小規模ながらも安定したものだと言えます。
一方で、レバノンの農業全体にはいくつかの課題が残されています。干ばつや気候変動の影響が生産量に与える可能性は依然として高く、農業灌漑システムの改善や気候に適応した作物品種の開発が今後の鍵となります。また、内戦や地域紛争の影響が長期にわたり農業インフラを損なったことから、これを回復させるための持続可能な政策が必要です。さらに、輸入品への依存を減らし、地元生産の大麦を利用した食品加工産業を強化することで、国内経済の安定確保に寄与することも期待されます。
今後、レバノンが大麦生産量を維持・向上させるためには、いくつかの具体的な施策が必要です。まず、国際機関や国内政府による農業技術への投資を通じて生産効率を高めることが考えられます。例えば、韓国や中国などが導入した先進的な灌漑技術や土壌改良の成功事例を参考にして、地域に適した農業技術を導入することが有効です。また、農業への若年層の参加を促進するために教育や資金援助政策を拡大することも重要です。
結論として、1960年代から現在に至るまで、大麦生産量の推移はレバノンの社会的・経済的状況の影響を反映しています。現在の安定した生産量は多くの課題を抱えながらも持続されている一方で、気候変動や地域情勢に対応するための政策と技術開発が求められます。これらを実現することで、大麦生産はレバノンの食料安全保障における重要な柱として更なる発展を遂げるでしょう。