レバノンのオクラ生産量は1979年以降、1980年代半ばまで着実に増加していましたが、1997年以降に大幅な減少となり、1999年には1,100トンという底値に達しました。その後、何度か増加傾向が見られるものの、2010年代以降は再び減少に転じ、横ばい状況が続いています。2023年の生産量は984トンとなり、1990年代のピーク時である12,813トン(1996年)には遠く及びません。この長期的な減少傾向には政治的不安定さや経済状況の悪化などの要因が影響しています。
レバノンのオクラ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 984 |
1.45% ↑
|
2022年 | 970 |
-9.89% ↓
|
2021年 | 1,076 |
2.51% ↑
|
2020年 | 1,050 |
8.25% ↑
|
2019年 | 970 |
16.87% ↑
|
2018年 | 830 |
2.09% ↑
|
2017年 | 813 |
-6.27% ↓
|
2016年 | 867 |
-2.4% ↓
|
2015年 | 889 |
-7.78% ↓
|
2014年 | 964 |
-11.53% ↓
|
2013年 | 1,089 |
-5.72% ↓
|
2012年 | 1,155 |
337.44% ↑
|
2011年 | 264 |
-72.77% ↓
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2010年 | 970 |
-59.58% ↓
|
2009年 | 2,400 |
-14.29% ↓
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2008年 | 2,800 | - |
2007年 | 2,800 |
21.74% ↑
|
2006年 | 2,300 |
-20.69% ↓
|
2005年 | 2,900 |
7.41% ↑
|
2004年 | 2,700 |
-43.75% ↓
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2003年 | 4,800 |
84.62% ↑
|
2002年 | 2,600 |
100% ↑
|
2001年 | 1,300 |
18.18% ↑
|
2000年 | 1,100 | - |
1999年 | 1,100 |
-35.29% ↓
|
1998年 | 1,700 |
-66% ↓
|
1997年 | 5,000 |
-60.98% ↓
|
1996年 | 12,813 |
16.48% ↑
|
1995年 | 11,000 |
10% ↑
|
1994年 | 10,000 |
12.36% ↑
|
1993年 | 8,900 |
2.75% ↑
|
1992年 | 8,662 |
10.53% ↑
|
1991年 | 7,837 |
0.47% ↑
|
1990年 | 7,800 |
0.13% ↑
|
1989年 | 7,790 |
0.52% ↑
|
1988年 | 7,750 |
1.31% ↑
|
1987年 | 7,650 |
0.66% ↑
|
1986年 | 7,600 |
2.7% ↑
|
1985年 | 7,400 |
1.09% ↑
|
1984年 | 7,320 |
0.97% ↑
|
1983年 | 7,250 |
3.57% ↑
|
1982年 | 7,000 |
1.45% ↑
|
1981年 | 6,900 |
1.47% ↑
|
1980年 | 6,800 |
1.49% ↑
|
1979年 | 6,700 | - |
国連食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、レバノンのオクラ生産量の長期的な推移は、地域の政治的・経済的背景が農業生産にいかに影響を与えてきたかを如実に物語っています。1979年から1996年にかけて、生産量は6,700トンから12,813トンまで順調に増加し、農業が一定の安定成長を遂げていたことが分かります。しかし、1997年以降では急激な減少が見られ、1999年には1,100トンと、ピーク時の1割未満にまで激減しました。
この劇的な変化の背景には、最低でも2つの要因が考えられます。第一に、1990年代後半以降、レバノンでは地政学的リスクが高まり、国内外の不安定要因が経済や農業活動に深刻な影響を及ぼしました。特に、戦争や地域紛争が農業活動を阻害し、生産インフラの破壊や農業従事者の減少につながったと考えられます。第二に、2000年代に入ると、国内の経済状況の悪化も農業生産の減少を加速させました。この当時、オクラだけでなく、他の農作物生産量にも同様の減少傾向が確認されています。
2000年代後半から2010年代にかけても、オクラ生産は低水準で推移しました。2023年において生産量は984トンであり、依然としてピーク時の12,813トン(1996年)に遙か及ばない水準です。この長期的な低迷の背後には、気候変動の影響や乾燥地の拡大も関係している可能性があります。また、近年は新型コロナウイルス感染症の影響により労働力の確保が困難になり、生産活動にさらなる負担がかかった点も指摘されています。
地域の地政学的背景を考慮すると、隣接するシリアでの内戦やその他の紛争が、物資の流通や輸出機能を著しく低迷させたことも、この減少の一因と考えられます。さらに、国内における農業政策の不備も、農業インフラ支援や技術支援の停滞につながり、生産効率の向上に向けた取り組みが不十分だった部分も課題として浮き彫りになっています。
今後の課題としては、気候変動への適応策を速やかに講じる必要性があります。乾燥耐性のあるオクラ品種の導入や、水資源の効率的な利用を目的とした灌漑システムの構築が重要です。また、農業従事者の技術力向上を図るための教育プログラムや、輸出市場の拡大を促すための貿易政策の見直しも必要です。さらに、地域間協力を通じて農業技術や市場情報の共有を進めることで、レバノンのみならず中東全域における農業の持続可能性向上に寄与することが期待されます。
結論として、オクラ生産量の推移はレバノンの経済的および地政学的状況を直接反映しており、農業の復興と発展には政府や国際機関による積極的な支援が不可欠です。特に、多面的なアプローチを通じて労働力の回復、生産性の向上、安定した輸出市場の確保を目指す施策が急務です。このような取り組みは、地域の食料安全保障の観点からも極めて重要です。