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レバノンの羊飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、レバノンの羊飼養数は1961年の16万匹から2022年の約44万3,461匹へと増加しています。一方で、この増加の過程には大きな変動が見られ、特に1975年から1990年にかけての内戦や2000年以降の経済的混乱によって急減や停滞が発生した時期もありました。2011年以降は回復傾向を維持していますが、依然として地域の紛争、経済危機、気候変動などの課題に影響されています。

年度 飼養数(匹) 増減率
2023年 434,209
-2.09% ↓
2022年 443,461
0.14% ↑
2021年 442,823
2.57% ↑
2020年 431,720
-5.29% ↓
2019年 455,840
3.39% ↑
2018年 440,910
1.82% ↑
2017年 433,018
0.94% ↑
2016年 428,985
-0.54% ↓
2015年 431,302
-4.16% ↓
2014年 450,000 -
2013年 450,000 -
2012年 450,000 -
2011年 450,000
69.59% ↑
2010年 265,345
-28.69% ↓
2009年 372,100
12.76% ↑
2008年 330,000
1.73% ↑
2007年 324,400
-12.42% ↓
2006年 370,400
9.81% ↑
2005年 337,300
10.46% ↑
2004年 305,360
0.94% ↑
2003年 302,513
1.57% ↑
2002年 297,829
-9.36% ↓
2001年 328,579
-7.18% ↓
2000年 354,000
-6.36% ↓
1999年 378,050
8.01% ↑
1998年 350,000
8.68% ↑
1997年 322,052
3.04% ↑
1996年 312,545
25.02% ↑
1995年 250,000
2.89% ↑
1994年 242,975
0.82% ↑
1993年 241,000
0.42% ↑
1992年 240,000
1.04% ↑
1991年 237,539
10.48% ↑
1990年 215,000
2.57% ↑
1989年 209,613
2.87% ↑
1988年 203,760
-1.85% ↓
1987年 207,595
3.8% ↑
1986年 200,000
8.11% ↑
1985年 185,000
15.63% ↑
1984年 160,000
14.29% ↑
1983年 140,000
-3.11% ↓
1982年 144,500
-0.34% ↓
1981年 145,000
-0.05% ↓
1980年 145,068
-12.08% ↓
1979年 165,000
-2.94% ↓
1978年 170,000
70% ↑
1977年 100,000
-33.33% ↓
1976年 150,000
-25% ↓
1975年 200,000
-17.36% ↓
1974年 242,000
6.86% ↑
1973年 226,456
-5.15% ↓
1972年 238,756
-1.21% ↓
1971年 241,680
-0.79% ↓
1970年 243,604
14.42% ↑
1969年 212,904
6.7% ↑
1968年 199,540
0.85% ↑
1967年 197,849
-7.19% ↓
1966年 213,172
-2.9% ↓
1965年 219,539
-1.15% ↓
1964年 222,088
11.04% ↑
1963年 200,000 -
1962年 200,000
25% ↑
1961年 160,000 -

レバノンの羊飼養数は、1961年の16万匹から始まり、1970年代には20万匹を超えた後、緩やかに増減を繰り返していました。しかし、1975年からの内戦を背景に、1977年には10万匹まで急減しています。この内戦の終了後、1990年には約21万5,000匹まで回復を見せ、1990年代後半には30万匹を超える水準に達しました。この期間中の回復は、地域の安定回復や農牧業政策の改善によるものと考えられます。

2000年以降になると、飼養数は時折の減少を挟みながらも、全体として増加傾向が続きました。2011年には45万匹に達し、これはデータが示す中で最も高い水準です。しかし、この増加は一時的なものであり、その後は40万匹台での推移が続いています。2020年には約43万2,000匹まで数が落ち込みますが、2021年から再び上昇に転じました。

この長期的な推移を見ると、レバノンの羊飼養数には、地政学的な環境や経済状況が直接的な影響を及ぼしていることがわかります。例えば、レバノンは内戦や近隣諸国との緊張、シリア難民の流入といった地政学的問題が頻発しており、これが農牧業に大きな負担を強いています。また、気候変動による干ばつや降雨パターンの変化も、牧草地の確保や食糧生産において挑戦をもたらしています。

さらに、経済的な課題も無視できません。レバノンでは、2020年からの深刻な金融危機の影響で多くの牧畜業者が経済的な困難に直面し、これが飼養数にも影響を与えています。特に輸入飼料や医療サービスのコストが高騰していることが、羊の健康や生産効率にマイナスの影響を与えている可能性が指摘されています。

### 課題の克服と提言

レバノンの羊飼養の発展にはいくつかの課題への対応が不可欠です。まず、地政学的な不安定性を軽減するために、地域協力と国際社会による支援が重要です。特に農牧業が紛争や経済危機で被害を受けた際に、それを迅速にカバーするための財政的支援や技術的な援助が必要です。また、気候変動への適応策として、牧草地の管理や羊の飼育方法の改善に向けた研究開発が求められます。例えば、乾燥に耐性のある牧草の普及や効率的な水資源利用技術の導入が挙げられます。

さらに、金融危機の影響を緩和するため、国内外からの投資を促進し、特に農牧業セクターへの支援を重点的に強化することが重要です。政府による家畜生産支援プログラムの充実や、羊肉や羊毛の輸出を拡大するための海外市場開拓も検討すべきでしょう。これにより牧畜業者の収入源が多角化され、経済不安定性への耐性が高まります。

これらの取り組みを通じて、レバノンは持続可能な牧畜業の発展を目指し、地域や国際市場でその競争力を高めていくことが可能です。また、これにより食糧保障の強化や農村地域の安定化も期待されます。将来的には、レバノン国内での生産能力を大きく向上させ、輸入依存を軽減することで経済全体の健全性を高めることが目標となるでしょう。

結論として、レバノンの羊飼養数の推移は、地元の農牧業の回復力を象徴しますが、それでも解決すべき課題が数多く存在します。地政学的、経済的、そして環境的課題への対策を講じることで、持続可能性を確保しつつ、更に大きな発展へと導くことが可能です。そのためには、国のみならず、広範な国際協力や技術支援が必要不可欠です。