レバノンの落花生生産量推移（1961年～2023年）

国連食糧農業機関（FAO）が発表した最新データによると、レバノンの落花生生産量は、1961年から2023年までの間、波動的な増減を繰り返しており、長期的なトレンドとして見ると緩やかに生産量が底上げされています。特に1990年代以降急激な増加を見せたものの、近年では減少と増加を交互に繰り返している状況です。2023年の生産量は7,573トンであり、直近数年間の平均値とほぼ一致しています。

1961年に2,000トンから始まったレバノンの落花生生産量は、その後数年間に急速に増加し、1965年には5,201トンに到達しました。しかし、1967年以降は減少傾向に転じ、1975年から1980年にかけては生産量が一定の水準、すなわち3,800〜4,000トンの範囲に収まりました。この時期はレバノン内戦（1975年〜1990年）初期にあたり、政治的混乱と農業基盤の弱体化が影響を与えたと考えられます。

1981年から1984年にかけてはさらに生産量が大きく減少し、最低値の1,000トンを記録しました。しかし、1985年以降、内戦が収束に向かうにつれて農業の復興が進み、1990年代には急激な生産量の増加が見られます。1994年には過去最高の9,808トンに達しました。その後の1995年から2005年にかけては7,000トン前後で推移する安定的な期間を挟みながら、生産量は浮き沈みを繰り返しました。

2006年以降、農業政策の改善や気候に恵まれた条件が一部地域で整ったこともあり、再び生産量が上昇しました。特に2013年から2014年は10,000トンを超える重要な期間を迎えました。しかし2018年を境に再び減少傾向が目立ち、2022年には7,496トンまで減じました。このような変動要因には、地政学的リスク、自然災害の影響、肥料や種子などの資材コスト増加が挙げられます。

世界的に見ると、アメリカ、中国、インドといった主要生産国が100万トン単位の生産規模を誇るのに対し、レバノンの生産量は比較的小規模であり、自国内需要を満たすのが主な目的です。そのため、輸出規模の拡大にはほど遠く、市場競争力を向上させるには多くの課題があります。たとえば、日本やヨーロッパ諸国では、落花生における安全性や品質基準への意識が急速に高まっており、レバノンが国際市場で存在感を示すには生産体制の近代化だけでなく、高付加価値化が求められます。

また、レバノン国内の農家が抱える課題には、不安定な降雨量や水不足、限られた栽培面積、慢性的な政治的・経済的不安定などが含まれます。特に経済危機による通貨価値の下落が肥料や種子供給に影響を及ぼし、生産の持続性を脅かしている状況にあります。一方で、2013年や2020年における短期的な生産量回復の例は、適切な資源管理や気候に対する適応力の高さを示しています。

今後の具体的な対策としては、まず水資源の効率的な利用が挙げられます。灌漑技術の導入や雨水の収集といった取り組みを通じて、乾燥による収量低下を防ぐことが可能です。次に、政府および国際機関による農家支援プログラムの拡大が望まれます。地元農家への補助金やローン提供、教育プログラムが整えば、持続可能な生産体制が確立されるでしょう。また、外部市場をターゲットにしたオーガニック落花生や加工製品の開発を進めることで、競争力の向上が期待されます。

結論として、レバノンの落花生生産は過去数十年にわたり数々の困難に直面しながらも回復の兆しを見せてきましたが、現在の課題は多岐にわたります。その解決には、地理的条件を活かした持続可能な農業振興、政策支援、外部市場への開拓が重要です。国際社会との協力を深めることで、将来的には安定した生産基盤の構築が可能となると考えられます。