国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、2023年におけるレバノンの桃およびネクタリンの生産量は44,502トンです。長期的には生産量は増加傾向にあり、1961年の10,000トンから2018年のピークとなる73,260トンまで大きく伸びました。しかしながら、2019年以降は急激な減少傾向となり、2020年から2023年にかけては特に不安定な推移が見られています。これには、国内外の地政学的背景、経済的課題、そして気象条件などの影響が複合的に関与していると考えられます。
レバノンの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 44,502 |
24.13% ↑
|
2022年 | 35,851 |
8.16% ↑
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2021年 | 33,146 |
-15.4% ↓
|
2020年 | 39,180 |
-16.5% ↓
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2019年 | 46,920 |
-35.95% ↓
|
2018年 | 73,260 |
5.58% ↑
|
2017年 | 69,391 |
9.56% ↑
|
2016年 | 63,337 |
21.52% ↑
|
2015年 | 52,119 |
21.22% ↑
|
2014年 | 42,997 |
28.3% ↑
|
2013年 | 33,512 |
0.9% ↑
|
2012年 | 33,213 |
3.27% ↑
|
2011年 | 32,162 |
5.13% ↑
|
2010年 | 30,592 |
0.3% ↑
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2009年 | 30,500 |
-27.38% ↓
|
2008年 | 42,000 |
1.69% ↑
|
2007年 | 41,300 |
10.43% ↑
|
2006年 | 37,400 |
9.68% ↑
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2005年 | 34,100 |
-1.16% ↓
|
2004年 | 34,500 |
29.21% ↑
|
2003年 | 26,700 |
9.88% ↑
|
2002年 | 24,300 |
-11.96% ↓
|
2001年 | 27,600 |
-7.07% ↓
|
2000年 | 29,700 |
-44.9% ↓
|
1999年 | 53,900 |
9.11% ↑
|
1998年 | 49,400 |
20.03% ↑
|
1997年 | 41,158 |
-15.37% ↓
|
1996年 | 48,632 |
6.88% ↑
|
1995年 | 45,500 |
1.11% ↑
|
1994年 | 45,000 |
2.27% ↑
|
1993年 | 44,000 |
2.77% ↑
|
1992年 | 42,816 |
2.25% ↑
|
1991年 | 41,873 |
10.19% ↑
|
1990年 | 38,000 |
2.7% ↑
|
1989年 | 37,000 |
5.71% ↑
|
1988年 | 35,000 |
9.38% ↑
|
1987年 | 32,000 |
6.67% ↑
|
1986年 | 30,000 |
7.14% ↑
|
1985年 | 28,000 |
7.69% ↑
|
1984年 | 26,000 |
13.04% ↑
|
1983年 | 23,000 |
5.02% ↑
|
1982年 | 21,900 |
9.5% ↑
|
1981年 | 20,000 | - |
1980年 | 20,000 | - |
1979年 | 20,000 | - |
1978年 | 20,000 | - |
1977年 | 20,000 |
-9.09% ↓
|
1976年 | 22,000 | - |
1975年 | 22,000 |
192.94% ↑
|
1974年 | 7,510 |
-61.32% ↓
|
1973年 | 19,415 |
16.42% ↑
|
1972年 | 16,676 |
34.74% ↑
|
1971年 | 12,376 |
2.16% ↑
|
1970年 | 12,114 |
60.68% ↑
|
1969年 | 7,539 |
-56.46% ↓
|
1968年 | 17,316 |
72.45% ↑
|
1967年 | 10,041 |
86.15% ↑
|
1966年 | 5,394 |
-43.22% ↓
|
1965年 | 9,500 |
-13.64% ↓
|
1964年 | 11,000 |
37.5% ↑
|
1963年 | 8,000 | - |
1962年 | 8,000 |
-20% ↓
|
1961年 | 10,000 | - |
レバノンの桃とネクタリンの生産量は、長年にわたり着実に増加してきました。1961年から1990年代半ばまでは、比較的緩やかな上昇を見せていますが、1996年には48,632トン、1999年には53,900トンと拡大が進みました。この間、農業技術の向上や市場の需要増加が主な要因と考えられます。しかし、2000年代初頭には収量が一時的に大きく減少し、2002年には24,300トンにまで低下しました。この減少は経済状況の悪化や気象災害の影響を受けた可能性が示唆されます。その後、生産量は増加に転じ、2016年からの記録的な成長により、2018年に至って73,260トンという過去最高の水準に達しました。
一方で、2019年以降は一転して急激な減少が記録されています。この時期には、国内の経済危機や中東地域の政治的な不安定性が深刻化しており、農業生産システムがその影響を大きく受けたとみられます。2020年以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行も重要な要因として挙げられ、多くの国と同様に農業の供給網や労働力の確保に支障が生じました。また、気候変動も無視できない要素であり、高温や水資源の不足が収量に影響を与えたと推測されます。
2023年の生産量は44,502トンで、依然として2018年のピークから大きく下回る水準にあります。ただし、これは2021年の最低水準(33,146トン)から回復傾向を見せており、今後の政策や取り組みによって更なる改善が期待されます。
他国と比較すると、レバノンの桃とネクタリンの生産量は、中国やアメリカのような主要生産国に比べると小規模ではありますが、国の経済状況や農業資源を考慮すると、その成長率は注目に値します。特に、2010年代後半の伸びは際立っており、農業分野での潜在的な競争力を示しています。
現在直面している課題を解決するためには、まず適応型農業技術の導入が必要です。例えば、節水灌漑技術や耐乾性に優れた品種の開発は、気候変動に伴うリスクを軽減させる可能性があります。また、国内外の投資を誘致し、現地農家に機材や技術へのアクセスを提供する政策も効果的です。加えて、地域間協力の枠組みを強化し、隣国や国際機関と連携することで、輸出市場の拡大にも取り組むことができます。
地政学的背景に目を向けると、レバノンは中東地域の不安定な情勢に多大な影響を受ける位置にあります。この輸出に不利な環境を解決する一つの方法として、貿易ルートの多様化や信頼できる物流基盤の構築が挙げられます。また、紛争の影響を最小化するため、国際支援を活用した危機管理体制の整備も急務といえるでしょう。
これらの課題を受けて、今後のレバノンの桃・ネクタリン生産への期待は、産業の持続可能性を確保するところにあります。具体的には、環境に優しい農業への移行や、気候変動の影響に対する対応力強化が求められます。また、地域的・国際的な枠組みの中で持続可能な成長を達成するための協力が今後も必要となるでしょう。このような取り組みはレバノン農業だけでなく、国内経済全体の安定化にも寄与するものと考えられます。