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ブラジルの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ブラジルの牛乳生産量はこれまで順調に増加傾向を示し、2023年には36,436,492トンに達しました。ただし、近年のデータから、一部の年で停滞や減少傾向も見られます。特に過去10年間では、成長のスピードが緩やかになり、2015年以降、不安定な推移が確認されています。この背景には、国内外の市場動向や気候変動といった複雑な要因が関係している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 36,436,492
2.21% ↑
2022年 35,647,495
-1.63% ↓
2021年 36,238,558
-0.38% ↓
2020年 36,376,167
1.14% ↑
2019年 35,966,213
2.98% ↑
2018年 34,925,136
1.79% ↑
2017年 34,311,513
-1.09% ↓
2016年 34,690,813
-2.68% ↓
2015年 35,647,876
-1.47% ↓
2014年 36,178,091
2.54% ↑
2013年 35,282,893
6.04% ↑
2012年 33,273,554
0.65% ↑
2011年 33,059,100
4.5% ↑
2010年 31,636,924
8.77% ↑
2009年 29,085,496
2.27% ↑
2008年 28,440,492
8.81% ↑
2007年 26,137,266
-0.18% ↓
2006年 26,185,564
3.16% ↑
2005年 25,384,106
4.88% ↑
2004年 24,202,408
5.49% ↑
2003年 22,943,732
2.82% ↑
2002年 22,314,700
5.53% ↑
2001年 21,145,800
3.76% ↑
2000年 20,379,988
3.66% ↑
1999年 19,661,220
2.01% ↑
1998年 19,273,424
0.15% ↑
1997年 19,244,656
0.81% ↑
1996年 19,089,400
12.39% ↑
1995年 16,985,100
4.38% ↑
1994年 16,272,800
1.24% ↑
1993年 16,074,200
-1.22% ↓
1992年 16,273,320
4.67% ↑
1991年 15,546,642
4.11% ↑
1990年 14,933,430
2.76% ↑
1989年 14,531,798
4.24% ↑
1988年 13,941,059
4.04% ↑
1987年 13,399,388
4.04% ↑
1986年 12,879,055
3.42% ↑
1985年 12,452,830
1.22% ↑
1984年 12,302,828
4.1% ↑
1983年 11,818,372
0.02% ↑
1982年 11,816,513
1.21% ↑
1981年 11,675,010
-2.35% ↓
1980年 11,955,761
13.83% ↑
1979年 10,503,032
4.14% ↑
1978年 10,085,416
2.26% ↑
1977年 9,862,172
-7.54% ↓
1976年 10,666,700
6.98% ↑
1975年 9,970,500
10.51% ↑
1974年 9,022,000
16.22% ↑
1973年 7,763,000
6.01% ↑
1972年 7,323,000
-0.31% ↓
1971年 7,346,000
-0.1% ↓
1970年 7,353,143
1.38% ↑
1969年 7,252,707
0.24% ↑
1968年 7,235,182
4.79% ↑
1967年 6,904,546
0.22% ↑
1966年 6,889,152
1.69% ↑
1965年 6,774,857
6.86% ↑
1964年 6,340,177
14.23% ↑
1963年 5,550,272
1.66% ↑
1962年 5,459,591
4.44% ↑
1961年 5,227,380 -

ブラジルの牛乳生産量データを見ると、長期的には着実な増加が観測されています。1961年の5,227,380トンから2023年の36,436,492トンまで、約7倍の成長を達成しており、特に1970年代後半から1980年代半ばにかけての急増が顕著です。この期間は農業政策の推進やインフラ整備が進み、乳業の技術革新が加速したことが主な要因と考えられます。また、1996年には19,089,400トンに達し、2000年代以降も生産量は堅調に伸びてきました。

しかしながら、2015年以降のデータを見ると、急激な増加のペースは緩やかになり、一部の年では前年度比で減少が見られます。例えば、2015年の35,647,876トンから2016年の34,690,813トン、さらに2017年の34,311,513トンと下落し、この時期は顕著な減退期と言えます。その後、2020年や2023年には再び増加傾向を示していますが、安定的な成長曲線には至っていません。

この変動要因には、複数の社会経済的および環境的な理由が挙げられます。一つの要因として、ブラジル国内の経済情勢やインフレ率の変動があるでしょう。特に、2015年から2017年はブラジル国内で経済不況が深刻化し、農業分野全体に影響を与えた可能性があります。また、気候変動の影響も無視できません。ブラジルは広大な国土を有し、多様な気候帯が存在しますが、近年は異常気象が頻発しており、乳牛の飼育環境や飼料生産に悪影響を及ぼすことが懸念されています。

さらに、地政学的な背景もこの動向に影響を与えている可能性があります。例えば、国際的な乳製品市場での競争激化や、アメリカ、ヨーロッパ、中国といった主要市場との貿易摩擦も、ブラジルの牛乳生産量に影響を及ぼしているかもしれません。このような外的要因は、国内需要のみならず、輸出の割合に影響を及ぼし、生産者の経済的な意思決定に波及しています。

ブラジルが今後も牛乳生産を安定的に拡大するためには、いくつかの具体的な対策が求められます。まず、乳牛飼育に適したインフラのさらなる整備や、効率的な飼料供給体制の構築が重要です。また、気候変動に対応した持続可能な農業技術の採用も必須でしょう。例えば、乾燥地帯や洪水被害を受けやすい地域では、耐久性のある改良品種の飼育やスマート農業技術の導入が助けになると考えられます。加えて、これらの技術革新や対策を実現するために、政府や国際機関による資金や技術援助を強化する必要があります。

また、国際市場における競争力を高めるためには、乳製品の品質向上やプロセス効率化にも投資を進めていくべきです。特に、日本やドイツなど、品質重視の市場向けに高付加価値の製品を供給することが、ブラジルの乳製品産業の発展に寄与するでしょう。さらに、ブラジル国内でも乳製品消費を促進する政策、たとえば学校給食への安全で高品質の牛乳提供の支援などを行うことが、国内市場を活性化させる一助となるはずです。

総じて、ブラジルの牛乳生産量は、過去のデータからも分かるように着実に増加し、世界的な乳製品供給国として重要な役割を果たしていますが、安定的な成長には複合的な課題の解決が必要です。国内外の市場環境と気候リスクに柔軟に対応しつつ、持続可能な生産体制を構築することで、さらなる飛躍が期待されます。