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ブラジルのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、ブラジルのカカオ豆生産量は1961年から現在までの約60年間で大きな変動を見せています。1961年には約15万トンだった生産量は、1986年にはピークの約45万トンに達しました。その後減少傾向に転じ、2000年代初頭には20万トン前後で横ばいを続けましたが、2021年には再び30万トンを超える水準まで回復しました。特に2021年からの増加傾向は注目に値します。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 296,145
8.13% ↑
2022年 273,873
-9.35% ↓
2021年 302,126
12.01% ↑
2020年 269,740
3.97% ↑
2019年 259,451
8.41% ↑
2018年 239,318
1.49% ↑
2017年 235,809
10.26% ↑
2016年 213,871
-23.15% ↓
2015年 278,299
1.65% ↑
2014年 273,793
6.87% ↑
2013年 256,186
1.17% ↑
2012年 253,211
1.89% ↑
2011年 248,524
5.58% ↑
2010年 235,389
7.74% ↑
2009年 218,487
8.15% ↑
2008年 202,030
0.19% ↑
2007年 201,651
-5% ↓
2006年 212,270
1.75% ↑
2005年 208,620
6.44% ↑
2004年 196,005
15.29% ↑
2003年 170,004
-2.74% ↓
2002年 174,796
-5.85% ↓
2001年 185,662
-5.65% ↓
2000年 196,788
-4.01% ↓
1999年 205,003
-26.99% ↓
1998年 280,801
1.02% ↑
1997年 277,966
8.25% ↑
1996年 256,777
-13.46% ↓
1995年 296,705
-10.25% ↓
1994年 330,577
-3.02% ↓
1993年 340,885
3.76% ↑
1992年 328,518
2.35% ↑
1991年 320,967
25.26% ↑
1990年 256,246
-34.66% ↓
1989年 392,184
4.72% ↑
1988年 374,491
13.92% ↑
1987年 328,740
-28.45% ↓
1986年 459,477
6.66% ↑
1985年 430,789
30.58% ↑
1984年 329,903
-13.24% ↓
1983年 380,256
8.29% ↑
1982年 351,149
4.63% ↑
1981年 335,625
5.17% ↑
1980年 319,141
-5.11% ↓
1979年 336,326
18.22% ↑
1978年 284,490
13.91% ↑
1977年 249,755
7.75% ↑
1976年 231,796
-17.77% ↓
1975年 281,887
16.29% ↑
1974年 242,400
23.73% ↑
1973年 195,916
-11.54% ↓
1972年 221,469
1.27% ↑
1971年 218,701
10.98% ↑
1970年 197,061
-6.68% ↓
1969年 211,162
41.4% ↑
1968年 149,338
-23.3% ↓
1967年 194,692
12.6% ↑
1966年 172,900
7.51% ↑
1965年 160,823
4.64% ↑
1964年 153,685
7.1% ↑
1963年 143,495
2.23% ↑
1962年 140,363
-9.97% ↓
1961年 155,901 -

ブラジルは世界的に重要なカカオ豆生産国の一つであり、主に国内消費および輸出用に生産されています。データによれば、1960年代から1980年代はカカオ豆生産量が着実に拡大しており、特に1986年には約45万トンというピークに達しました。この時期は、気候条件が安定していたことや農業技術の向上、農地の拡大が大きく寄与したと考えられます。しかし、その後はさまざまな要因により、生産量は一貫して減少傾向をたどりました。

減少の要因として、1990年代に入りラテンアメリカ全体で広がった「ウィッチーズブルーム病」と呼ばれるカカオ豆作物への感染病が挙げられます。この植物病害によってカカオの収穫量は大きな打撃を受け、多くの農家がカカオの生産から撤退しました。また、国内外のコモディティ価格の変動による農家の経済的インセンティブの低下や、大規模農地の乱開発による土壌劣化も影響を及ぼしました。この時期のデータを見ても、1990年以降、生産量が急減し、特に2001年には18万トン台にまで落ち込んでいることが分かります。

しかし、2005年以降、カカオ豆の生産は徐々に安定し始め、2010年代に入ると生産量は持続的な向上傾向を示します。この背景には、ブラジル政府と国際機関の協力による病害対策や品種改良が挙げられます。具体的には、ウィッチーズブルーム病に耐性のある新しい品種の導入や、持続可能な農業の普及が進められました。また、国際的な健康志向からカカオ製品への需要が高まったことが、ブラジルの生産回復を後押ししました。2021年の生産量は30万トンを突破し、直近のデータである2022年でも約27万トンと高水準を維持しています。

しかし課題は依然として残っています。気候変動による降雨パターンの変化や気温上昇は、生産地への直接的な脅威となり得ます。また、違法な森林伐採による環境破壊がカカオ農地にも影響を与えており、この状況を放置すれば将来的な供給能力が危ぶまれる可能性があります。さらに、カカオ栽培に従事する農家の多くは低所得層であり、農業教育や金融支援の不足が依然として大きな障壁となっています。

これらの課題に対する解決策として、まず持続可能な農業をさらに推進し、環境負荷を抑えた農地管理の技術を普及させることが必要です。例えば、アグロフォレストリー(森林農法)の導入を進めることで、環境保護と収益性を両立させることが可能です。また、農家への金融支援や教育プログラムを強化することで、生産者の生活向上と技術力向上を同時に実現することが重要です。さらに、気候変動への対応策として、気象予測システムの導入や耐性品種のさらなる開発を進めるべきです。

地政学的には、国際市場でカカオの競争力を維持するために、ブラジルは他の主要生産国であるガーナやコートジボワールと連携し、市場の調整や持続可能性への取り組みを進めることも有効でしょう。国際的に認証された持続可能なカカオプログラムに参加することで、ブラジル産カカオのブランド価値を高めることも期待されます。

カカオ生産は単に経済的な意義を持つだけでなく、環境保護や地域社会の発展にも直結する重要な産業です。ブラジルがその持続可能性を確保し、過去の繁栄を復活させる鍵は、技術革新と国際協力にあります。今後の政策によって、この成長が加速することを期待しています。