国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブラジルの牛飼養数は1961年の約5,600万頭から2022年には約2億3,400万頭に増加しました。この61年間で4倍以上の増加を記録しており、特に2000年代以降の成長が顕著です。ただし、いくつかの年では減少や停滞も見られ、その背景には経済的要因や環境保護の動き、疫病の発生、地政学的な要因なども影響を及ぼしています。
ブラジルの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 234,352,649 |
2021年 | 224,601,992 |
2020年 | 217,836,282 |
2019年 | 215,008,958 |
2018年 | 213,809,445 |
2017年 | 215,003,578 |
2016年 | 218,190,768 |
2015年 | 215,220,508 |
2014年 | 212,366,132 |
2013年 | 211,764,292 |
2012年 | 211,279,082 |
2011年 | 212,815,311 |
2010年 | 209,541,109 |
2009年 | 205,307,954 |
2008年 | 202,306,731 |
2007年 | 199,752,014 |
2006年 | 205,886,244 |
2005年 | 207,156,696 |
2004年 | 204,512,737 |
2003年 | 195,551,576 |
2002年 | 185,348,838 |
2001年 | 176,388,726 |
2000年 | 169,875,524 |
1999年 | 164,621,038 |
1998年 | 163,154,357 |
1997年 | 161,416,157 |
1996年 | 158,288,540 |
1995年 | 161,227,938 |
1994年 | 158,243,229 |
1993年 | 155,134,074 |
1992年 | 154,229,303 |
1991年 | 152,135,505 |
1990年 | 147,102,320 |
1989年 | 144,154,096 |
1988年 | 139,599,104 |
1987年 | 135,720,288 |
1986年 | 132,221,568 |
1985年 | 128,422,672 |
1984年 | 127,655,008 |
1983年 | 124,186,000 |
1982年 | 123,488,000 |
1981年 | 121,785,008 |
1980年 | 118,971,424 |
1979年 | 109,177,488 |
1978年 | 106,942,560 |
1977年 | 107,296,560 |
1976年 | 101,674,000 |
1975年 | 92,495,360 |
1974年 | 90,437,008 |
1973年 | 85,500,000 |
1972年 | 83,000,000 |
1971年 | 78,562,256 |
1970年 | 75,446,704 |
1969年 | 72,965,856 |
1968年 | 70,566,608 |
1967年 | 68,246,224 |
1966年 | 66,002,144 |
1965年 | 63,831,856 |
1964年 | 61,732,944 |
1963年 | 59,703,040 |
1962年 | 57,739,888 |
1961年 | 56,041,312 |
ブラジルは世界最大の牛肉生産国および輸出国の一つであり、その飼養数の推移は国内外の経済や食糧供給に深い影響を与えています。データによれば、ブラジルの牛飼養数は1960年代から一貫して増加を続けていますが、増加ペースには時期ごとに違いが見られます。特に1970年代後半から1980年代にかけては急激に頭数が伸びていますが、1996年や2007年前後では一時的に減少しています。2022年には史上最高の2億3,400万頭を記録し、これはブラジルが世界の牛肉産業で持つ重要性を象徴するものです。
牛飼養数の増加の背景には、いくつかの要因が考えられます。一つはブラジル国内に広大な牧草地が存在し、気候も牛の育成に適している点です。また、ブラジル政府や民間企業が牛肉の輸出を国の主要経済目標として推進してきたことも、飼養数の増加に寄与しています。さらに、中国やアジア諸国を中心とした国際市場の需要の高まりに対応し、生産が伸び続けていることも見逃せません。
一方で、一部の期間で見られる減少には特定の要因が絡んでいます。例えば、1996年の減少はブラジル国内での農業政策の変化と冷え込む経済が原因であり、2006年から2007年にかけての減少は口蹄疫の発生や、環境保護への国際的な圧力の高まりで森林伐採の制限が進んだ影響があると考えられます。また、疫病などの外的ショックや、輸出相手国の貿易規制も飼養数に影響を及ぼします。
地政学的背景も無視できません。森林伐採による牧草地拡大が環境問題、特にアマゾン最大の森林破壊に関連して批判を浴びています。ブラジル産牛肉が温室効果ガス排出や生物多様性の損失に与える影響を懸念し、持続可能な生産への国際的な圧力が一層強まる可能性もあります。こうした批判や規制が進む中で、ブラジルがどのように政策を調整していくかが注目されています。
今後の課題としては、持続可能性を確保しながら、経済と生産量を維持するバランスが重要となります。一つの対策として、放牧地の効率化や農業技術の導入によって、牛の増産が森林破壊を伴わない形で進む仕組みを整備することが挙げられます。また、家畜におけるメタンガスの排出を削減するための技術開発や、肉牛以外の畜産物への転換を支援する政策も有効です。これらを実現するには、国家レベルの戦略だけでなく、国際的な協力や投資も欠かせません。
ブラジルの牛飼養数の増加は、食糧供給と経済発展において大きな意義を持つ一方で、環境や地域政治のリスクを伴います。2030年や2050年といった長期的な目標を見据え、ブラジルだけでなく、輸入国や国際機関も共同して地球環境を脅かさない持続可能な取り組みを進める必要があります。