ブラジルのサツマイモ生産量は、1961年から2022年までの60年以上にわたるデータによると、初期には増加傾向を示し、1970年代以降には減少に転じ、その後2000年代から次第に安定し、2015年以降では再び増加が見られます。しかし、生産量のピークだった1967年の2,225,705トンと比較すると、2022年の847,100トンは大幅に減少していますが、近年の増加傾向は注目に値します。
ブラジルのサツマイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 847,100 |
2021年 | 848,281 |
2020年 | 849,397 |
2019年 | 803,626 |
2018年 | 741,000 |
2017年 | 780,461 |
2016年 | 672,866 |
2015年 | 595,977 |
2014年 | 525,814 |
2013年 | 505,350 |
2012年 | 479,425 |
2011年 | 544,820 |
2010年 | 495,182 |
2009年 | 477,472 |
2008年 | 548,438 |
2007年 | 529,531 |
2006年 | 518,541 |
2005年 | 513,646 |
2004年 | 538,503 |
2003年 | 533,165 |
2002年 | 498,046 |
2001年 | 484,719 |
2000年 | 484,443 |
1999年 | 472,422 |
1998年 | 444,925 |
1997年 | 490,087 |
1996年 | 414,283 |
1995年 | 619,186 |
1994年 | 655,613 |
1993年 | 575,872 |
1992年 | 603,347 |
1991年 | 622,432 |
1990年 | 636,691 |
1989年 | 682,152 |
1988年 | 677,240 |
1987年 | 756,742 |
1986年 | 768,897 |
1985年 | 755,644 |
1984年 | 762,603 |
1983年 | 682,252 |
1982年 | 746,781 |
1981年 | 762,481 |
1980年 | 726,457 |
1979年 | 819,412 |
1978年 | 882,071 |
1977年 | 1,074,358 |
1976年 | 1,377,708 |
1975年 | 1,599,906 |
1974年 | 1,595,307 |
1973年 | 1,828,366 |
1972年 | 2,249,116 |
1971年 | 2,155,531 |
1970年 | 2,133,983 |
1969年 | 2,175,143 |
1968年 | 2,120,450 |
1967年 | 2,225,705 |
1966年 | 1,912,586 |
1965年 | 1,721,405 |
1964年 | 1,597,826 |
1963年 | 1,546,272 |
1962年 | 1,447,784 |
1961年 | 1,355,738 |
FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データを基に、ブラジルのサツマイモ生産量の推移を分析すると、いくつかの重要な傾向や背景が浮かび上がります。1960年代は一貫して増加しており、特に1967年には2,225,705トンという最高生産量を記録しました。しかし、それ以降は経済構造や農業政策の変化、作物選択の再編成といった背景から徐々に減少に転じました。1970年代後半から1980年代にかけての急激な減少は、特に顕著で、1980年には初めて100万トンを下回る726,457トンという数字にまで落ち込んでいます。この時期の背景には、生産の効率性向上を目指した農業機械化や競争作物の台頭が影響したと考えられます。
一方、2000年以降は50万トン前後で安定した生産が続き、2015年以降にはサツマイモの需要拡大や健康志向の高まりを背景に、生産量が再び増加しています。2020年代に入ると、生産量は800,000トンを超え、2022年には847,100トンに達しました。この増加の背景として、国内外でのサツマイモの健康食品としての評価が高まり、国内需要だけでなく輸出市場の確立も影響していると推察されます。
ブラジルは広大な土地と多様な気候条件を有し、サツマイモの栽培に適した自然環境を備えていますが、その生産を制約する要因もいくつか存在します。特に、多くの小規模農家に依存する生産体制や、気象の変化、農業インフラの脆弱性が課題として挙げられます。また、近年の気候変動や異常天候も、収穫量に影響を与えるリスクを増大させています。さらに、新型コロナウイルスのパンデミック時には労働力不足が生じ、2020年以降の生産活動にわずかな遅れをもたらしましたが、全体的な影響は限定的でした。
今後の展望として、持続可能な生産の促進と国際市場への対応が鍵になると考えられます。具体的には、小規模農家への技術支援や農業機械化の導入、気候変動対策に向けた耐乾性品種の開発などが効果的な施策となるでしょう。また、サツマイモの加工食品産業の発展を支援することで、国内の付加価値を高め、労働市場における雇用創出も期待できます。輸出においては、健康食品市場のニーズを満たすための販路拡大や、品質向上に向けた取り組みが不可欠です。
地政学的な視点では、ブラジルの農業政策は地域間協力の枠組みにおいても重要な位置を占めています。他国、特にアジア市場でのサツマイモ需要増加に伴い、ブラジルは積極的な輸出戦略を展開する機会を得るでしょう。中国やインドでは人口増加と経済発展を背景に健康食品への関心が高まっており、ブラジル産のサツマイモの輸出市場として有望です。一方、農業セクターにおける地政学的リスクとして、貿易制限や原材料価格の変動が挙げられます。これを回避するため、地域協力の強化や分散型サプライチェーンの構築が必要です。
結論として、ブラジルのサツマイモ生産量は、歴史的な観点から見るとピーク時に比べて減少しているものの、近年の回復傾向が期待されています。このポテンシャルを最大限に活用するためには、国内外の需要の動向を的確に捉えた農業政策の策定、農業技術の革新、そしてサプライチェーンの強化が求められます。これらの改善が進めば、ブラジルは再び世界の主要なサツマイモ生産地としての地位を確立することができるでしょう。