Skip to main content

ブラジルの馬肉推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、ブラジルにおける馬肉生産量は、1961年の39,700トンをピークとしてその後減少期を経験し、1987年には最低値の6,179トンまで落ち込みました。しかし、1990年代以降は回復基調に入り、直近の2023年では22,524トンに達しています。全体的には長期的な減少傾向と、近年の安定的な生産が見受けられる結果となっています。

年度 (トン) 増減率
2023年 22,524
0.47% ↑
2022年 22,418
1.56% ↑
2021年 22,073
-2.4% ↓
2020年 22,617
2.38% ↑
2019年 22,090
2.29% ↑
2018年 21,596
1.92% ↑
2017年 21,190
-0.34% ↓
2016年 21,263
-2.53% ↓
2015年 21,814
-1.21% ↓
2014年 22,080
-4% ↓
2013年 23,000 -
2012年 23,000
5.5% ↑
2011年 21,800
-0.91% ↓
2010年 22,000
1.85% ↑
2009年 21,600
0.47% ↑
2008年 21,500 -
2007年 21,500
0.47% ↑
2006年 21,400
0.94% ↑
2005年 21,200 -
2004年 21,200
0.47% ↑
2003年 21,100
0.48% ↑
2002年 21,000 -
2001年 21,000
14.13% ↑
2000年 18,400
11.52% ↑
1999年 16,500
7.14% ↑
1998年 15,400
7.69% ↑
1997年 14,300
0.7% ↑
1996年 14,200
-8.39% ↓
1995年 15,500
-15.47% ↓
1994年 18,337
-13.47% ↓
1993年 21,191
5.71% ↑
1992年 20,047
62.69% ↑
1991年 12,322
98.01% ↑
1990年 6,223
-12.46% ↓
1989年 7,109
15.05% ↑
1988年 6,179
-3.33% ↓
1987年 6,392
-48.2% ↓
1986年 12,339
-40.57% ↓
1985年 20,762
-13.57% ↓
1984年 24,021
27.23% ↑
1983年 18,880
-23.28% ↓
1982年 24,609
-18.18% ↓
1981年 30,077
-9.27% ↓
1980年 33,149
-23.07% ↓
1979年 43,088
0.03% ↑
1978年 43,075
19.1% ↑
1977年 36,167
-32.74% ↓
1976年 53,769
10.56% ↑
1975年 48,635
0.07% ↑
1974年 48,600
-19% ↓
1973年 60,000
36.05% ↑
1972年 44,100
2.08% ↑
1971年 43,200 -
1970年 43,200
-1.14% ↓
1969年 43,700
-1.35% ↓
1968年 44,300
0.91% ↑
1967年 43,900
-2.01% ↓
1966年 44,800
1.13% ↑
1965年 44,300
3.5% ↑
1964年 42,800
2.64% ↑
1963年 41,700
3.99% ↑
1962年 40,100
1.01% ↑
1961年 39,700 -

ブラジルの馬肉生産量は、1960年代の約4万トン強という高い水準からスタートし、その後、1973年に一時的に6万トンまで上昇しました。しかし、この後は大幅な減少期に入りました。特に1980年代後半は、生産量が著しく落ち込み、1987年にはわずか6,179トンという低水準に至っています。その後、1990年代に入ると徐々に回復し始め、2000年代以降はおおむね2万トンを超える安定的な生産が続いています。

この馬肉生産量の変動には、いくつかの背景が考えられます。第一に、ブラジル国内の畜産業における主要な収益源が牛肉や鶏肉など他の肉類であることが影響しています。馬肉は、国内市場でも消費量が限定的であり、輸出需要にも大きく左右されます。このため、1970年代以降、国際市場での馬肉需要が下がった時期には生産量も低下しました。また、馬肉は地域によって消費文化が異なり、世界的にも特定の国や地域に限定される食材という特性を持ちます。

さらに、地政学的なリスクやブラジル国内の経済状況も大きな影響を及ぼしてきました。特に1980年代は、ブラジルにおける経済危機の影響で畜産業全般が縮小し、それが馬肉の生産量減少にも反映されたと考えられます。また、ヨーロッパなど主要輸出先国での食品規制強化や、消費者の嗜好の変化も需要に影響を与えた可能性があります。

直近の傾向を見ると、馬肉生産量はおおむね安定しています。2023年の生産量は22,524トンであり、過去の低迷期に比べると顕著な回復を示しています。最近の安定化には、国際市場における需要変動がある程度緩やかになったことや、ブラジルの畜産技術の向上が影響していると考えられます。また、新興市場や輸出先の多様化も、回復の一因となっているのかもしれません。

しかし、課題も依然として残されています。ブラジル国内では、依然として馬肉の消費が他の肉類に比べて控えめであり、輸出依存型の産業構造であることに伴うリスクが存在します。たとえば、主要輸出先の経済的・地政学的リスクや、動物福祉に関する規制強化が将来的な障壁となる可能性があります。また、新型コロナウイルスのようなパンデミックや自然災害なども、畜産業全般に影響を及ぼすことが予見されます。

このような状況を踏まえ、持続可能な馬肉産業を確立するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。例えば、国内市場の需要喚起に向けた教育的取り組みや、馬肉の栄養価や調理法を紹介するキャンペーンが挙げられます。また、輸出市場のさらなる多様化を図ると同時に、国際基準に則った動物福祉規制の強化を進める必要があります。さらに、畜産業全体の気候変動対策への適応も重要です。具体的には、持続可能な牧草管理技術や温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが求められるでしょう。

ブラジルは、世界有数の畜産業国家として豊かな資源を持つ一方で、地政学的リスクや国際市場の変動による影響を受けやすい立場にあります。馬肉産業においても、こうした状況を踏まえた経済・環境面での調整が求められることが今後の課題です。