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ブラジルの羊飼養数推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新した最新データによると、ブラジルにおける羊の飼養数はここ60年以上にわたり減少と増加の波が見られています。1961年には1,400万匹だった飼養数が1990年前後に約2,000万匹に達したものの、1990年代後半には急激に減少しました。一方で2004年以降再び回復傾向にあり、2022年には2,151万4,274匹と過去最高の水準に達しています。この推移はブラジル国内の経済状況や農業政策、また羊肉や羊毛市場の需要動向の影響を受けており、今後の景気や地政学的状況によって更なる変化が生じる可能性があります。

年度 飼養数(匹)
2022年 21,514,274
2021年 20,544,899
2020年 20,623,064
2019年 19,971,802
2018年 18,947,352
2017年 18,606,767
2016年 18,403,947
2015年 18,410,551
2014年 17,614,454
2013年 17,290,519
2012年 16,789,492
2011年 17,668,063
2010年 17,380,581
2009年 16,811,720
2008年 16,630,408
2007年 16,239,455
2006年 16,019,170
2005年 15,588,041
2004年 15,057,838
2003年 14,556,484
2002年 14,277,061
2001年 14,638,925
2000年 14,784,958
1999年 14,399,960
1998年 14,268,387
1997年 14,533,716
1996年 14,725,503
1995年 18,336,432
1994年 18,436,098
1993年 18,008,283
1992年 19,955,874
1991年 20,127,945
1990年 20,014,512
1989年 20,041,456
1988年 20,084,880
1987年 19,859,616
1986年 19,659,744
1985年 18,658,960
1984年 18,447,248
1983年 18,121,376
1982年 18,588,000
1981年 19,054,000
1980年 18,381,008
1979年 17,806,272
1978年 17,418,304
1977年 18,008,592
1976年 18,002,160
1975年 17,828,224
1974年 17,400,000
1973年 17,500,000
1972年 17,500,000
1971年 17,643,040
1970年 17,773,008
1969年 17,887,008
1968年 16,767,000
1967年 16,116,000
1966年 16,219,000
1965年 16,100,000
1964年 15,600,000
1963年 15,000,000
1962年 14,500,000
1961年 14,000,000

ブラジルの羊飼養数データを見ると、1961年から1990年代初期まで一貫して増加が見られ、2,000万匹を超える水準に達していました。この時期は、特に国内市場における羊肉および羊毛の需要が安定的に推移したことが一因とみられます。しかし、1990年代中盤から1996年にかけて突如大きな減少が起こり、1996年には1,472万5,503匹を記録しています。おそらくここにはブラジルにおける経済的な変動や家畜飼育に関連する政策変更、さらには国際市場の競争激化が影響したものと推測されます。

1990年代後半から2000年代序盤にかけて飼養数の停滞が続きましたが、2004年を境に飼養数が再び増加へと転じました。2022年には2,151万4,274匹に到達し、過去最高を更新しました。このような回復の背景には、国内外での羊肉の需要拡大や新たな政策支援の導入、そして技術革新による生産効率の向上が挙げられるでしょう。特に、輸出市場でのブラジル産羊肉への需要の増加は、ブラジルの畜産業にとって大きな追い風となっています。

一方で、羊飼養数の推移における急激な変動は持続可能性に課題を残しています。例えば、1990年代後半のような急落を防ぐためには、安定的な市場創出と動物農業の支援政策が必要です。現行のブラジル政府による支援策のさらなる拡充や国際的な協力体制の構築が検討されるべきと言えます。例えば、日本や韓国、中国では羊肉の需要が拡大傾向にありますが、これらの市場への輸出競争力を高めるための取り組みが重要です。また、オーストラリアやニュージーランドといった羊肉輸出大国との競争を念頭に置いた品質向上やブランド化も必要となるでしょう。

地政学的リスクについては、高まる世界的な食糧危機や気候変動の影響がブラジルの畜産業に及ぼす可能性が懸念されます。旱魃や洪水などの自然災害は家畜飼育に深刻な影響を及ぼします。また、地域的な政治不安定や経済衝突が輸出市場に与える影響も無視できません。このようなリスクを最小化するためには、災害に強いインフラの整備や輸出先市場の多様化、そして家畜管理のデジタル化を推進することが有効でしょう。

未来への提案として、まずは持続可能な飼育方法への転換が急務です。例えば、放牧地の改良や飼料の効率的な利用を通じて、限られた資源で生産性を高める工夫が必要です。さらに、輸出先市場での存在感を拡大するため、羊肉のブランド化や認証システムの構築が重要です。これにより、他国と差別化を図り、消費者に品質の高さをアピールできます。また、地域間の協力体制を強化し、いざという時の販売先変更やサプライチェーンの安定化を図る戦略も求められます。

ブラジルの羊飼養数は、国内外の多様な要因の影響を受けつつここ数年で回復基調にあります。この上昇傾向を引き続き持続させるためには、短期的な政策のみならず、長期的な視点に立った持続可能な農業運営モデルの構築が求められるでしょう。国や国際機関が協力してその枠組みを整えることで、ブラジルは世界の羊肉市場でより重要な役割を果たすようになる可能性があります。