Skip to main content

ブラジルのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が最新公開した2024年データによると、ブラジルのナシ生産量は1961年の45,092トンをピークに、数十年にわたって一貫した減少傾向を示しています。1990年代には生産量が1万5千トン台を中心に安定し、2000年代後半以降も低水準の状態が続きました。2023年には15,681トンにとどまり、過去60年以上にわたる生産量の減少がはっきりと確認できます。この長期的減少は、国内の農業の条件や世界的な市場競争が密接に絡んでいます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 15,681
-10.52% ↓
2022年 17,525
10.95% ↑
2021年 15,796
2.82% ↑
2020年 15,363
-7.99% ↓
2019年 16,697
-15.73% ↓
2018年 19,813
-10.45% ↓
2017年 22,125
48.34% ↑
2016年 14,915
-29.51% ↓
2015年 21,160
10.81% ↑
2014年 19,096
-13.51% ↓
2013年 22,078
0.4% ↑
2012年 21,990
7.1% ↑
2011年 20,532
25.22% ↑
2010年 16,397
10.37% ↑
2009年 14,856
-14.58% ↓
2008年 17,391
1.86% ↑
2007年 17,074
-5.99% ↓
2006年 18,161
-8.03% ↓
2005年 19,746
-0.74% ↓
2004年 19,894
0.53% ↑
2003年 19,790
0.48% ↑
2002年 19,696
-8.48% ↓
2001年 21,522
26.82% ↑
2000年 16,970
3.01% ↑
1999年 16,474
-1.68% ↓
1998年 16,755
6.02% ↑
1997年 15,804
0.64% ↑
1996年 15,703
-16.88% ↓
1995年 18,892
-0.08% ↓
1994年 18,908
12.47% ↑
1993年 16,812
1.97% ↑
1992年 16,487
0.07% ↑
1991年 16,475
-2.16% ↓
1990年 16,839
-4.02% ↓
1989年 17,545
-7.01% ↓
1988年 18,868
-6.63% ↓
1987年 20,207
-14.04% ↓
1986年 23,507
-7.64% ↓
1985年 25,452
-4.66% ↓
1984年 26,697
-8.41% ↓
1983年 29,147
-5.38% ↓
1982年 30,804
1.66% ↑
1981年 30,302
-9.17% ↓
1980年 33,362
-7.48% ↓
1979年 36,059
-2.33% ↓
1978年 36,919
-15.14% ↓
1977年 43,505
-6.64% ↓
1976年 46,598
13.7% ↑
1975年 40,984
-1.49% ↓
1974年 41,605
26.5% ↑
1973年 32,889
-39.01% ↓
1972年 53,927
-0.27% ↓
1971年 54,075
-10.88% ↓
1970年 60,676
2.46% ↑
1969年 59,217
2.58% ↑
1968年 57,725
3.37% ↑
1967年 55,843
5.87% ↑
1966年 52,747
2.03% ↑
1965年 51,698
5.36% ↑
1964年 49,070
-3.53% ↓
1963年 50,868
7.57% ↑
1962年 47,287
4.87% ↑
1961年 45,092 -

ブラジルは温暖な気候と広大な土地を誇る農業大国ですが、ナシにおいては他の果樹作物と比較して大きな成果を収めているとは言えません。1961年に45,092トンの生産量を記録した後、1970年まで緩やかな増加を維持しましたが、その後の50年にわたる持続的な減少傾向は注目に値します。1989年以降は1万7千トン前後で推移し、2023年には15,681トンとなりました。この推移には国内外の地政学的要因、気候変動の影響、そして市場競争力の喪失など、複数の要因が影響していると考えられます。

この減少の背景には、まずブラジル国内での他の果物への重点的な栽培政策が挙げられます。同国では、オレンジ、コーヒー、サトウキビといった輸出競争力のある作物が重視される一方で、ナシのように輸出依存度が比較的低い作物は優先順位が低下しました。このような政策的な背景のもと、ナシが商業的栽培の中心ではなくなっていることが挙げられます。

さらに地政学的リスクも影響しています。ブラジルはナシのような果物で、欧州やアジア市場の大国、特に中国や韓国の高効率な栽培技術を持つ競争相手とは、価格や品質で競争するのが難しくなっています。中国や韓国、日本などの国々では、長年の技術革新によって作物の収量が著しく向上しており、国際市場でのブラジル産ナシのシェアが低迷していることが推測されます。この状況下で、輸入品への依存度が増加している可能性も懸念されます。

気候変動の影響も無視できません。ブラジル全体では気温上昇や降水パターンの変化が観測されており、ナシの栽培に適した条件が部分的に失われている可能性があります。また、病害虫の発生も栽培の課題となることでしょう。これらの自然条件の変化は、より耐性のあるナシ品種を開発し、栽培に適応させる努力が求められます。

今後の課題として、ナシ生産の回復のためにはいくつかの具体策が考えられます。まず、栽培技術の向上が欠かせません。例えば、他国で成功を収めた最新の栽培技術や灌漑技術を導入することで、収量を増加させる可能性があります。また、農業従事者に対する教育プログラムや専門知識の普及を強化し、効率的な営農を促進することも重要です。次に、国内外市場への積極的なアプローチも必要です。例えば、地理的表示保護(GI)の取得や、有機ナシとしてブランディングすることで、価格競争力を補完できる可能性があります。

さらに、地政学的影響に関しては、地域間協力による技術共有や共同研究が有効です。例えば、環境に配慮した栽培を進めることで、海外市場における「持続可能な農業」という訴求ポイントを強化できます。一方、輸入品に押されがちな国内市場での競争力を維持するためにも、政府や地方自治体による農家支援策の充実が求められます。

結論として、ブラジルのナシ生産量の減少は、国内の農業政策や地政学的要因、気候変動など多様な影響の結果として説明されます。持続可能な栽培方法の導入や市場競争力の強化を通して、ナシ生産の安定的な増加と収益効率の向上に取り組むことが急務です。政府や国際機関が連携して課題解決を進めることで、ブラジルのナシ生産に新たな成長の可能性をもたらすことができると期待されます。