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ブラジルの羊の毛生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブラジルの羊の毛生産量は1961年から2022年の間に大きな変動を見せています。1960年代から1970年代には増加傾向が見られたものの、1990年代以降は急激に減少し、2020年代に入ってからも低水準を維持しています。直近の2022年には8,884トンの生産量が記録されましたが、全盛期であった1972年の37,100トンと比べると大幅な減少が続いていることが明らかです。

年度 生産量(トン)
2022年 8,884
2021年 8,299
2020年 7,984
2019年 8,379
2018年 8,681
2017年 9,362
2016年 9,756
2015年 10,924
2014年 11,851
2013年 12,041
2012年 11,994
2011年 11,805
2010年 11,646
2009年 11,395
2008年 11,642
2007年 11,160
2006年 10,876
2005年 10,777
2004年 11,172
2003年 11,312
2002年 11,419
2001年 12,081
2000年 13,301
1999年 13,402
1998年 14,558
1997年 14,658
1996年 14,969
1995年 24,959
1994年 25,993
1993年 25,617
1992年 27,654
1991年 29,300
1990年 29,077
1989年 27,159
1988年 31,050
1987年 31,042
1986年 30,543
1985年 29,100
1984年 29,768
1983年 30,563
1982年 30,002
1981年 32,636
1980年 32,246
1979年 30,563
1978年 28,685
1977年 30,205
1976年 30,591
1975年 29,096
1974年 34,772
1973年 35,711
1972年 37,100
1971年 31,700
1970年 31,713
1969年 31,277
1968年 30,682
1967年 28,284
1966年 27,942
1965年 29,075
1964年 28,135
1963年 26,515
1962年 25,247
1961年 24,570

ブラジルの羊の毛生産量の推移を見ると、1961年から1970年代にかけては安定した生産増加が確認されます。この時期のピークは1972年の37,100トンであり、これは羊毛産業の成長期にほかなりません。この背景には、国内および国際市場での羊毛需要の高まり、気候条件の安定、農業政策による支援などがあったと推測されます。この当時、ブラジルは世界の羊毛生産市場における比較的重要な役割を果たしていました。しかし、1980年代以降、生産量はおおむね横ばいもしくは緩やかな減少を示しており、1990年代半ば以降は顕著な減少が続いています。とくに1996年以降の減少幅は著しく、2022年には8,884トンと1972年のピーク時の4分の1以下にまで数字が落ち込んでいます。

この傾向にはいくつかの原因が考えられます。第一に、国内需要の減少が挙げられます。合成繊維の登場やその低コスト化により、羊毛製品の需要が縮小しました。また、ブラジル国内における羊毛の産業基盤の相対的な弱体化も顕著で、牧羊よりも他の家畜や農業生産に重点を置いた政策変更が影響を与えた可能性があります。第二に、気候や環境条件の変化も見逃せません。一部地域での砂漠化や気候変動の影響により、羊の飼育に適した環境が減少し、生産性が大きく低下したと言われています。

さらに国際貿易の文脈では、羊毛を主要生産物とするオーストラリアやニュージーランドなど国際市場での競争力を持つ国々が大規模で効率的な生産を進めてきました。これらの競合国に対抗するための技術投資や生産効率の向上がブラジルでは十分に実現されなかったことも一因と考えられます。

最近のデータを見ると、2021年と2022年には若干の回復傾向が見られますが、これは長期的な回復につながるのか不確実であり、今後の羊毛生産の行方を見守る必要があります。今後の課題としては、まず生産者への積極的な支援が挙げられます。具体的には、効率的な羊毛生産を可能にする技術導入や、羊毛製品のブランド化といった付加価値を高める政策が有効でしょう。また、地域ごとの気候に適応した牧羊方法を導入し、生産の安定化を図ることも重要です。そして、国内市場における合成繊維と羊毛製品のバランスを再調整し、環境にやさしい天然素材としての羊毛の価値を再評価する取り組みも大切です。

加えて、地政学的リスクや気候変動への対応も視野に入れる必要があります。たとえば、近年の異常気象や干ばつの影響で牧草地の質が低下し、羊の健康や生産性に悪影響を与えている場合には、環境対策が迅速に求められます。また、コロナ禍やそれに伴う貿易の停滞が国際市場への輸出に影響を与えた場合、地域間協力の枠組みを強化し、危機に強い供給チェーンの構築を進めることも有効です。

結論として、ブラジルにおける羊の毛生産量は過去数十年間にわたって大きな変動を見せてきましたが、近年の減少傾向は国際的な競争、生産基盤の弱体化、環境の変化など多岐にわたる要因に起因しています。この現状を打破するためには、政府や民間が一体となった戦略的な取り組みが必要不可欠です。テクノロジーの活用、生産の効率化、気候変動への対応といった戦略を推進することで、ブラジルが羊毛産業において再び成長できる可能性は十分にあります。