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ブラジルのオレンジ生産量推移(1961-2022)

国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブラジルのオレンジ生産量は1961年以降増加傾向を続け、特に1980年代〜1990年代中盤にかけて急激な成長を見せました。ピーク時となる1997年には23,046,800トンを記録しましたが、それ以降は緩やかな減少傾向を示しています。直近の2022年には16,929,631トンとなり、2010年代以降大きな増減がない安定した状況にありますが、近年は気候変動や生産コストの上昇など複数の課題が浮き彫りになっています。

年度 生産量(トン)
2022年 16,929,631
2021年 16,217,839
2020年 16,721,556
2019年 17,090,362
2018年 16,841,549
2017年 17,492,882
2016年 16,980,379
2015年 16,953,015
2014年 16,928,457
2013年 17,549,536
2012年 18,012,560
2011年 19,811,064
2010年 18,503,139
2009年 17,618,450
2008年 18,538,084
2007年 18,684,984
2006年 18,032,312
2005年 17,853,444
2004年 18,313,716
2003年 16,917,558
2002年 18,530,582
2001年 16,983,436
2000年 21,330,258
1999年 22,893,312
1998年 20,850,504
1997年 23,046,800
1996年 21,079,044
1995年 19,837,212
1994年 17,445,968
1993年 18,797,188
1992年 19,682,292
1991年 18,936,344
1990年 17,520,520
1989年 17,773,580
1988年 14,975,260
1987年 14,611,100
1986年 13,233,370
1985年 14,214,307
1984年 12,944,524
1983年 11,713,731
1982年 11,598,204
1981年 11,393,332
1980年 10,891,814
1979年 8,445,223
1978年 7,826,336
1977年 7,164,691
1976年 7,168,270
1975年 6,313,171
1974年 5,858,941
1973年 4,930,400
1972年 3,789,163
1971年 3,256,829
1970年 3,099,440
1969年 2,896,811
1968年 2,717,346
1967年 2,504,656
1966年 2,353,313
1965年 2,285,524
1964年 2,054,960
1963年 2,106,470
1962年 1,850,900
1961年 1,761,768

ブラジルは世界最大のオレンジ生産国であり、その果実は国内消費だけでなく、ジュースなどの加工品として国際市場にも広く供給されています。1961年の生産量は1,761,768トンと控えめでしたが、その後の技術革新や農業政策の推進、世界的な柑橘需要の拡大により急速に増加しました。特に1980年代の生産量の劇的な伸び(1980年の10,891,814トンから1988年には14,975,260トンへの増加)は、冷凍濃縮オレンジジュースの輸出需要が背景にあると考えられます。

1997年に記録したピーク時(23,046,800トン)を境に、ブラジルのオレンジ生産量は減少傾向に転じました。この傾向には、いくつかの要因が考えられます。一つは、気候変動による影響です。ブラジルの主要な栽培地であるサンパウロ州では、旱魃(かんばつ)や異常気象が頻発しており、オレンジ生産に悪影響を与えることが報告されています。また、ブラジルの柑橘園では病害虫の問題も深刻であり、特に「シトラス・グリーニング」と呼ばれるカンキツ緑化病が広がっています。この病気は、葉や果実が未熟のまま成熟を止めてしまうことで、生産効率を低下させています。

さらに、近年では生産コストの上昇も課題となっており、特に人件費と化学肥料の価格高騰が農家の経済的負担を増加させています。加えて、土地利用においてもオレンジ園が耕地としての競争にさらされており、大豆やトウモロコシといった他の主要農産物に対する需要増加が原因となっています。それにより、オレンジ栽培面積が縮小する傾向も見られます。

一方で、2022年のデータを見ると、近年の生産量は16,000,000トン台で安定していることが特徴です。この安定化は、各種問題に対して農家や政府が一定の解決策を講じているためと考えられます。例えば、病害虫対策においては、耐病性を持つ品種の開発や統合的病害虫管理(IPM)の導入が進行中です。また、気候変動への適応として、灌漑施設の整備や新たな農法の導入も試みられています。

今後の課題としては、これらの取り組みを拡大しつつ、国際競争力をさらに高めることが鍵となります。特に、環境に配慮した持続可能な農業の実現と同時に、生産効率の向上が重要です。ブラジル国内外で急増している消費者ニーズに応えるためには、供給の安定性が求められます。そのためには、政府の補助金政策や農業教育、研究予算の強化が欠かせません。

地政学的な観点では、ブラジル産のオレンジやその関連製品への国際市場からの依存度は依然として高く、輸入国の関税や貿易摩擦の影響を受けやすい立場にあります。特にアメリカや欧州連合との貿易交渉が今後の輸出市場に影響を与える可能性が大いにあります。また、輸出依存度の高さゆえに、疫病や自然災害といった突発的な事象による供給ショックに対するリスク管理が急務と言えます。

結論として、ブラジルのオレンジ生産は、依然として農業部門の中核的地位を占めていますが、気候問題や生産コスト問題と向き合う必要があります。具体的対策としては、新たな品種開発、生産プロセスの近代化、国際的な貿易戦略の再構築が挙げられます。中長期的には、国際市場だけでなく国内市場の需要拡大を視野に入れることで、より多角的な成長が期待されます。