Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した2024年7月更新のデータによると、ブラジルのトマト生産量は1961年の約39万トンから2022年の約381万トンに増加しました。この増加は全体的な技術向上や農業政策の変化によると考えられます。しかし、近年では2016年をピークに減少傾向が見られ、特に2020年以降の生産量の減少が顕著となっています。この変化には、気候変動や経済的不況、新型コロナウイルスの影響が関連している可能性が議論されます。
ブラジルのトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 3,809,986 |
2021年 | 3,679,256 |
2020年 | 3,757,078 |
2019年 | 3,920,997 |
2018年 | 4,126,988 |
2017年 | 4,225,414 |
2016年 | 4,166,789 |
2015年 | 4,187,729 |
2014年 | 4,302,777 |
2013年 | 4,187,646 |
2012年 | 3,873,985 |
2011年 | 4,416,652 |
2010年 | 4,106,846 |
2009年 | 4,310,477 |
2008年 | 3,867,655 |
2007年 | 3,431,232 |
2006年 | 3,362,655 |
2005年 | 3,452,973 |
2004年 | 3,515,567 |
2003年 | 3,708,602 |
2002年 | 3,652,923 |
2001年 | 3,103,363 |
2000年 | 3,004,797 |
1999年 | 3,305,053 |
1998年 | 2,784,111 |
1997年 | 2,717,965 |
1996年 | 2,648,627 |
1995年 | 2,715,016 |
1994年 | 2,688,570 |
1993年 | 2,348,498 |
1992年 | 2,141,345 |
1991年 | 2,343,811 |
1990年 | 2,260,871 |
1989年 | 2,173,278 |
1988年 | 2,401,698 |
1987年 | 2,040,930 |
1986年 | 1,836,128 |
1985年 | 1,934,610 |
1984年 | 1,817,574 |
1983年 | 1,550,778 |
1982年 | 1,742,408 |
1981年 | 1,451,713 |
1980年 | 1,535,331 |
1979年 | 1,501,097 |
1978年 | 1,464,558 |
1977年 | 1,297,508 |
1976年 | 1,166,888 |
1975年 | 1,049,724 |
1974年 | 1,144,037 |
1973年 | 809,541 |
1972年 | 892,380 |
1971年 | 820,240 |
1970年 | 764,119 |
1969年 | 700,438 |
1968年 | 775,262 |
1967年 | 744,726 |
1966年 | 678,840 |
1965年 | 579,839 |
1964年 | 553,270 |
1963年 | 496,098 |
1962年 | 488,364 |
1961年 | 390,992 |
FAOによるデータから、ブラジルのトマト生産量は1960年代から長期にわたって着実に増加してきたことが分かります。この期間の増加はいわゆる「緑の革命」の影響と、集中的な農業管理や品種改良技術の導入といった農業技術の進歩が指摘されています。1974年以降の生産量増加は特に顕著で、1980年代後半から1990年代にかけては200万トン台に安定的に達しました。このような生産量の拡大は、ブラジルが国内需要を満たすことに加え、国際市場へも輸出する能力を持つ農業大国という位置づけを強化しました。
2000年以降、トマト生産量は300万トン台に達し、2009年には過去最高となる431万トンに到達しました。しかし、2010年代以降はやや不安定な推移を示し、特に2020年以降は生産量が再び減少しています。2022年の推定生産量は約381万トンであり、直近のピークである2016年の約417万トンに比べると約8%減少しました。
この減少の背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、近年の気候変動は、降水量や気温の変動を引き起こし、農業生産に大きな影響を与えています。ブラジルのような熱帯・亜熱帯地域では、干ばつが頻発し、安定的な農作物の生産が困難になる状況が生じています。また、経済的不安定さによる農家の投資減少や、農地管理のコスト増加も一因とされています。さらに、2020年以降の新型コロナウイルスのパンデミックは、労働力の不足や供給チェーンの混乱を招き、農業全体に多大な影響を及ぼしました。
課題への対策としては、まず気候変動に対応するための持続可能な農業技術の普及が挙げられます。例えば、干ばつ耐性品種の導入や、水資源の効率的利用を促進する技術の開発が重要です。また、政府と農家の協力を強化し、農業資金へのアクセス改善や保険制度の導入を進めることも効果的です。さらに、災害時の影響を緩和するための地域間の連携強化や、デジタル技術を活用した農業管理の高度化も望まれる取り組みです。
地政学的な視点から見ると、ブラジルの農業生産量は国の食糧安保と輸出産業に直結しており、国際市場において重要な役割を果たしています。そのため、紛争や貿易摩擦が生産や輸出に与える影響を慎重に監視する必要があります。持続可能な農業を実現するためには、国内のみならず国際的な協力も不可欠であり、ブラジルが食品輸出大国という地位を維持するための方策が求められます。
結論として、ブラジルのトマト生産量は長期間で見るとかなり改善されてきましたが、近年の減少傾向は解決が必要な課題を浮き彫りにしています。国内外の政策立案者は、気候変動への対応や経済的な支援、技術革新の促進を通じて、ブラジルのトマト産業の持続的な発展をサポートするべきです。これにより、トマト生産は単なる国内市場での需要を満たすだけでなく、国際貿易の観点からも重要な役割を果たし続けることでしょう。