国際連合食糧農業機関の2024年7月に更新された最新データによると、ブラジルにおけるそばの生産量はここ数十年にわたり大きな変動を示しています。1960年代には比較的少ない規模から徐々に拡大。その後、変動の多い時期を経て、2000年代以降は安定して右肩上がりの成長を続け、2021年にピークの65,078トンを記録しました。直近では2022年の生産量が64,376トンと、引き続き高い水準を保っています。
ブラジルのそば生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 64,611 |
0.36% ↑
|
2022年 | 64,376 |
-1.08% ↓
|
2021年 | 65,078 |
1.01% ↑
|
2020年 | 64,429 |
1.27% ↑
|
2019年 | 63,623 |
0.79% ↑
|
2018年 | 63,124 |
0.71% ↑
|
2017年 | 62,680 |
1.01% ↑
|
2016年 | 62,055 |
1.08% ↑
|
2015年 | 61,392 |
-4.08% ↓
|
2014年 | 64,000 |
3.23% ↑
|
2013年 | 62,000 |
3.33% ↑
|
2012年 | 60,000 |
5.26% ↑
|
2011年 | 57,000 |
2.66% ↑
|
2010年 | 55,525 |
1.92% ↑
|
2009年 | 54,481 |
2.02% ↑
|
2008年 | 53,401 |
2.7% ↑
|
2007年 | 52,000 |
1.96% ↑
|
2006年 | 51,000 |
2% ↑
|
2005年 | 50,000 |
-0.16% ↓
|
2004年 | 50,079 |
0.65% ↑
|
2003年 | 49,757 |
3.66% ↑
|
2002年 | 48,000 |
-2.19% ↓
|
2001年 | 49,074 |
0.13% ↑
|
2000年 | 49,013 |
0.16% ↑
|
1999年 | 48,932 |
0.14% ↑
|
1998年 | 48,863 |
0.28% ↑
|
1997年 | 48,727 |
-0.18% ↓
|
1996年 | 48,816 |
-2.37% ↓
|
1995年 | 50,000 |
2.1% ↑
|
1994年 | 48,973 |
-7.6% ↓
|
1993年 | 53,000 |
39.47% ↑
|
1992年 | 38,000 |
-19.15% ↓
|
1991年 | 47,000 |
-9.62% ↓
|
1990年 | 52,000 |
18.18% ↑
|
1989年 | 44,000 |
-21.43% ↓
|
1988年 | 56,000 |
40% ↑
|
1987年 | 40,000 |
14.29% ↑
|
1986年 | 35,000 |
16.67% ↑
|
1985年 | 30,000 | - |
1984年 | 30,000 |
-14.29% ↓
|
1983年 | 35,000 |
-20.45% ↓
|
1982年 | 44,000 |
-12% ↓
|
1981年 | 50,000 |
85.19% ↑
|
1980年 | 27,000 |
-14.29% ↓
|
1979年 | 31,500 |
-29.21% ↓
|
1978年 | 44,500 |
102.27% ↑
|
1977年 | 22,000 |
-22.81% ↓
|
1976年 | 28,500 |
-38.04% ↓
|
1975年 | 46,000 |
29.58% ↑
|
1974年 | 35,500 |
26.79% ↑
|
1973年 | 28,000 |
194.74% ↑
|
1972年 | 9,500 | - |
1971年 | 9,500 |
-9.52% ↓
|
1970年 | 10,500 |
-4.55% ↓
|
1969年 | 11,000 |
-48.84% ↓
|
1968年 | 21,500 |
290.91% ↑
|
1967年 | 5,500 |
57.14% ↑
|
1966年 | 3,500 |
-46.15% ↓
|
1965年 | 6,500 |
-23.53% ↓
|
1964年 | 8,500 |
-22.73% ↓
|
1963年 | 11,000 |
816.67% ↑
|
1962年 | 1,200 |
140% ↑
|
1961年 | 500 | - |
1961年に始まるブラジルのそば生産の統計データでは、最初期は非常に小規模で、500トンからのスタートでした。1960年代から1970年代中頃にかけては、生産量が一時的に急上昇した年もありましたが、基本的には不安定な変動が見られました。特に1975年には46,000トン、1978年には44,500トンという大規模な生産が達成されていますが、その後再び減少する局面もありました。これは、当時の農業技術の限界、気候条件、および国内需要の変動が影響を与えていた可能性があります。
その後の1980年代を通じて、そば生産量は大幅に安定し、高水準を維持しました。1988年には56,000トン、1990年には52,000トンを記録しており、この頃から生産体制が整い始めたと考えられます。加えて、そばの価値が見直されつつあり、特に多様な用途での活用が期待されていました。
2000年代以降、ブラジルのそば生産量は平均して年間50,000トン以上を継続的に維持し、2010年代に入ると実質的な成長トレンドが見え始めます。2012年以降は毎年右肩上がりの成長を示し続け、2021年に過去最高の65,078トンを記録しました。2022年には若干の減少が見られたものの、この減少はほぼ1%程度であり、総じて非常に安定した生産を続けています。この高度な安定の背景には、農業技術の改善、政府支援政策、および国内外市場での需要の高まりが挙げられます。
しかし、ブラジルのそば生産にはいくつかの課題も存在しています。まず、地球規模で進行している気候変動の影響です。極端気象により、主要農業地域における生産条件が変化しつつあり、そばの生育に適した気候を確保することが難しくなる可能性があります。また、輸出市場を念頭に置いた産業として育成するためには、さらなる品質向上と国際競争力の確保が求められるでしょう。
地政学的背景にも着目する必要があります。ブラジルはそばの主要輸出国とは言えませんが、アジア諸国を中心にそば需要が拡大しており、日本、中国、韓国といった国々との貿易の増加が期待されています。しかし、世界的な供給体制の分断や物流の問題がそば市場に影響を与える可能性があります。特に、コロナ禍やウクライナ情勢の影響を受けて、農産物のサプライチェーンが一時的に混乱した経験は、今後の課題解決に向けた貴重な教訓です。
未来に向けては、ブラジルのそば生産がさらに成長し国際的な競争力を高めるために、農業技術の革新、インフラ整備の強化、そしてアジア諸国との経済協力の強化を進めるべきです。また、そばという作物の栄養価値や健康効果(低カロリーで栄養価が高い点から健康志向が強い層へアピール可能)を広く周知することで、国内消費の拡大も課題克服の助けになるでしょう。
今後ブラジルがこの分野での地位をさらに高め、安定的かつ持続可能なそば生産国として成長を続けるには、国際的な協力体制の枠組みづくりと、気候変動に適応する農業政策の導入がカギとなります。こうした取り組みを通じて、ブラジルはそば生産における新たなリーダーシップを発揮する可能性を持っています。