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イタリアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

最新のFAO(国際連合食糧農業機関)のデータによると、イタリアの牛乳生産量は2023年に13,058,970トンに達しました。この数字は過去数十年の長期的な増加傾向を反映しています。特に近年、生産量は持続的な増加を見せており、2020年以降13百万トンを超える水準を維持しています。一方で、1970年代から1980年代にかけては10百万トン前後で推移しており、局所的な変動も見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 13,058,970
-0.93% ↓
2022年 13,181,870
-0.16% ↓
2021年 13,202,450
3.85% ↑
2020年 12,712,480
1.75% ↑
2019年 12,494,400
1.25% ↑
2018年 12,339,750
8.43% ↑
2017年 11,380,094
5.63% ↑
2016年 10,773,150
-3.46% ↓
2015年 11,159,203
1.04% ↑
2014年 11,044,109
6.22% ↑
2013年 10,397,465
-1.89% ↓
2012年 10,597,572
1.13% ↑
2011年 10,479,053
-0.2% ↓
2010年 10,500,000
-0.57% ↓
2009年 10,560,292
-6.43% ↓
2008年 11,285,910
6.29% ↑
2007年 10,617,750
-3.38% ↓
2006年 10,989,108
-0.22% ↓
2005年 11,012,957
2.66% ↑
2004年 10,727,578
-5.12% ↓
2003年 11,307,049
0.06% ↑
2002年 11,300,092
0.22% ↑
2001年 11,275,100
-8.4% ↓
2000年 12,309,400
3.48% ↑
1999年 11,895,300
0.53% ↑
1998年 11,832,700
0.68% ↑
1997年 11,752,300
1.53% ↑
1996年 11,575,100
2.81% ↑
1995年 11,258,500
5.48% ↑
1994年 10,673,800
0.2% ↑
1993年 10,652,900
-2.25% ↓
1992年 10,897,900
-1.66% ↓
1991年 11,081,700
-0.35% ↓
1990年 11,120,700
5.15% ↑
1989年 10,576,000
-1.4% ↓
1988年 10,726,300
-1.58% ↓
1987年 10,898,500
0.37% ↑
1986年 10,857,800
-0.81% ↓
1985年 10,946,200
0.41% ↑
1984年 10,901,400
0.4% ↑
1983年 10,858,300
1.46% ↑
1982年 10,701,600
1.62% ↑
1981年 10,530,500
-1.07% ↓
1980年 10,644,600
1.72% ↑
1979年 10,464,100
3.71% ↑
1978年 10,089,800
2.59% ↑
1977年 9,835,000
2.75% ↑
1976年 9,571,990
2% ↑
1975年 9,384,670
-0.9% ↓
1974年 9,469,680
-2.28% ↓
1973年 9,690,448
-1.71% ↓
1972年 9,858,710
5.87% ↑
1971年 9,311,800
-0.45% ↓
1970年 9,353,707
-2.73% ↓
1969年 9,616,600
-3.92% ↓
1968年 10,009,200
2.43% ↑
1967年 9,772,000
-3.52% ↓
1966年 10,128,910
7.1% ↑
1965年 9,457,300
5.84% ↑
1964年 8,935,830
4.48% ↑
1963年 8,552,750
-10.63% ↓
1962年 9,569,640
-3.47% ↓
1961年 9,914,100 -

イタリアの牛乳生産量推移を長期的に分析すると、大きく4つの時期に分けることができます。1960年代には9百万トン前後で比較的安定していましたが、その後一時的に減少し、1970年代から1980年代にかけて再び10百万トンを超える安定した水準を実現しています。この時期は、畜産技術の改善と国内需要の拡大が生産量の押し上げ要因と考えられます。

1990年代に入ると、安定しつつも徐々に増加傾向が見られます。特に1990年代後半から2000年代初頭にかけて、11百万トンを超える生産が定着しました。この増加は、EU共通農業政策(CAP)のもとでの支援や、乳製品輸出拡大による経済的後押しが主因とされています。また、高品質なチーズ製品、特にパルミジャーノ・レッジャーノやモッツァレッラの需要拡大が、生乳供給量の増加を支える形となりました。

さらに2010年代後半から現在にかけて急激な伸びを見せています。特に2018年以降は、12百万トンを超える水準にまで到達し、2021年には13,202,450トンと過去最高値を記録しました。ただし、2023年のデータではわずかに減少していることから、生産効率や需要変動、環境負荷に加え、新型コロナウイルス感染症の影響などが複合的に作用した可能性があります。コロナ禍において物流網の断絶や労働力不足が一部で生産活動を鈍化させたとも考えられます。

地域課題としては、農地の利用競争や温暖化による気象変動の影響が挙げられます。特に北部の生産拠点であるロンバルディアやエミリア=ロマーニャ地方では、豪雨や干ばつといった極端な気象現象が飼料の生産環境に影響を与えています。これにより、生産コストの上昇や持続可能な農業への移行が求められています。

政策的に見ると、イタリアは持続可能性を重視した農業技術導入の加速が必要です。再生可能エネルギーを活用した農場運営や、メタンガス削減を目的とした畜産業の改革が着目されています。また、EUレベルでの補助金制度を活用し、小規模農場の競争力を支援することも効果的です。さらに、輸出市場の多様化によるリスク分散も今後の戦略として重要なポイントです。

他国の状況と比較すると、イタリアの生産量はフランスやドイツと同規模で、EU内の主要乳製品輸出国の一翼を担っています。一方、アメリカやインド、中国などの巨大市場では、更に高い生産量が記録されています。イタリアがこれら国々と差別化を図るためには、「品質重視」の戦略を継続する必要があります。特にイタリア製乳製品のブランド力強化が生産基盤を支える重要な要因となるでしょう。

最後に、今後の課題には地政学的背景も無視できません。食料価格の変動やエネルギー危機に起因する飼料価格の高騰が、特に中東欧の国際市場での競争力に影響を与える可能性があります。これに対する対策として、地域間協力による飼料供給ネットワークの強化や、より効率的な流通網の整備が重要です。

結論として、イタリアの牛乳生産は長期的に成長してきましたが、環境変動や経済的リスクを考慮した生産体制の強化が求められています。具体的には、持続可能な農業技術の導入、高付加価値製品の開発、国際的な連携と輸出市場の多様化が、今後の安定的な成長を支える鍵となるでしょう。