イタリアのエンドウ豆(生)の生産量は、1960年代から1970年代にかけては比較的高い水準を維持していましたが、1980年代以降徐々に低下しました。2000年にはピーク時の半分以下となり、その後の20年間も国内の生産量はさらに変動しつつ低水準で推移しています。この動向は農業政策、国内需要、輸出状況、気候変動など多角的な要因によるものと考えられます。
イタリアのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 72,530 |
-3.27% ↓
|
2022年 | 74,980 |
-8.08% ↓
|
2021年 | 81,570 |
1.44% ↑
|
2020年 | 80,410 |
0.95% ↑
|
2019年 | 79,650 |
-7.67% ↓
|
2018年 | 86,270 |
0.43% ↑
|
2017年 | 85,897 |
-13.3% ↓
|
2016年 | 99,078 |
32.63% ↑
|
2015年 | 74,702 |
-6.6% ↓
|
2014年 | 79,977 |
11.31% ↑
|
2013年 | 71,848 |
-11.12% ↓
|
2012年 | 80,834 |
-18.38% ↓
|
2011年 | 99,039 |
6.08% ↑
|
2010年 | 93,361 |
3.99% ↑
|
2009年 | 89,780 |
9.99% ↑
|
2008年 | 81,626 |
3.29% ↑
|
2007年 | 79,024 |
-10.3% ↓
|
2006年 | 88,102 |
23.91% ↑
|
2005年 | 71,103 |
0.97% ↑
|
2004年 | 70,421 |
14.95% ↑
|
2003年 | 61,260 |
-10.22% ↓
|
2002年 | 68,235 |
-0.97% ↓
|
2001年 | 68,900 |
-4.41% ↓
|
2000年 | 72,077 |
-3.64% ↓
|
1999年 | 74,803 |
-42.9% ↓
|
1998年 | 131,000 |
0.61% ↑
|
1997年 | 130,200 |
3.83% ↑
|
1996年 | 125,400 |
-3.27% ↓
|
1995年 | 129,642 |
-4.72% ↓
|
1994年 | 136,066 |
-15.06% ↓
|
1993年 | 160,200 | - |
1992年 | 160,194 |
-12.03% ↓
|
1991年 | 182,106 |
14.14% ↑
|
1990年 | 159,544 |
-9.17% ↓
|
1989年 | 175,660 |
-2.41% ↓
|
1988年 | 180,000 |
-6.85% ↓
|
1987年 | 193,230 |
-3.42% ↓
|
1986年 | 200,080 |
-7.83% ↓
|
1985年 | 217,070 |
-5.99% ↓
|
1984年 | 230,890 |
-0.56% ↓
|
1983年 | 232,200 |
2.27% ↑
|
1982年 | 227,040 |
-5.54% ↓
|
1981年 | 240,350 |
-1.18% ↓
|
1980年 | 243,210 |
-1.25% ↓
|
1979年 | 246,300 |
-5.6% ↓
|
1978年 | 260,910 |
-1.29% ↓
|
1977年 | 264,320 |
4.45% ↑
|
1976年 | 253,070 |
-4.16% ↓
|
1975年 | 264,050 |
-1.6% ↓
|
1974年 | 268,350 |
5.03% ↑
|
1973年 | 255,500 |
-0.47% ↓
|
1972年 | 256,700 |
-2.62% ↓
|
1971年 | 263,600 |
3.78% ↑
|
1970年 | 254,000 |
1.56% ↑
|
1969年 | 250,100 |
3.56% ↑
|
1968年 | 241,500 |
-7.75% ↓
|
1967年 | 261,800 |
5.52% ↑
|
1966年 | 248,100 |
7.5% ↑
|
1965年 | 230,800 |
6.7% ↑
|
1964年 | 216,300 |
-1.55% ↓
|
1963年 | 219,700 |
0.05% ↑
|
1962年 | 219,600 |
2.52% ↑
|
1961年 | 214,200 | - |
イタリアのエンドウ豆の生産量は、過去60年間で大きな変化を経てきました。1961年から1971年にかけて200,000トン以上の高水準を維持し、最大で263,600トン(1971年)に達しました。しかし1980年代に入り、年間生産量は緩やかに減少し始め、1990年代には160,000トンを下回るまで低下しました。特に1994年以降の急激な減少が目立ち、1999年には74,803トンと過去最低値に近い水準となりました。この下降傾向は2000年代に入っても続き、特に2002年から2004年には生産量が70,000トン前後で推移しました。
2006年以降に一時的な回復が見られます。この一時的な増加は国内農業政策や市場価格の変動、もしくは気象条件の改善の影響と考えられます。2010年には93,361トン、2016年には再び99,078トンに達しました。しかし、一貫して年間100,000トンを超える水準には復帰していません。その後再び生産量に減少の兆候が表れ、2023年には72,530トンと1960年代に比べると著しく低い水準となっています。
この長期的な低下傾向には複数の要因が関係しています。まず、国内市場での需要変化があります。食生活の多様化により、他の豆類や野菜へとシフトする需要動向がイタリア国内で確認されてきました。また国際貿易の発展により、エンドウ豆を輸入する方が経済的であるケースが増えたことも影響を与えています。さらに、エンドウ豆の栽培が他の作物に比べて競争力を欠いた結果、作付け面積が縮小している傾向も見られます。
気候変動も無視できない要因です。イタリアは地中海性気候に属していますが、近年の異常気象や干ばつ、増加する自然災害が安定した農業生産を難しくしているため、生産量のばらつきや急激な減少を引き起こしている可能性があります。
またイタリアのエンドウ豆生産の現状をほかの主要国と比較してみると、例えばインドや中国といったアジア諸国ではエンドウ豆の大規模な農地運営が進んでおり、その生産量は数百万トンに達しています。こうした国とのコスト競争では、イタリアの少量生産は不利であると言えます。
将来に向けた課題として挙げられるのは、まず国内市場でのエンドウ豆消費のプロモーションです。地中海料理における伝統的な食材であるエンドウ豆の需要を増やすことは、農家の収益性を向上させる可能性があります。さらに、持続可能な栽培技術や品種改良に焦点を当てることで、生産性の向上や気候変動に対するレジリエンスを高めることが重要です。またEU農業政策の助成金を活用して、エンドウ豆栽培の競争力を高めるためのインセンティブ制度を整えることも有効でしょう。
地域間協力については、例えばフランスやスペインといった近隣諸国と共同で生産・流通ネットワークを形成することで、イタリアのエンドウ豆の輸出競争力を高める可能性があります。また地政学的に安定している地域であることを利点として、品質重視のブランド戦略を展開し、他市場との差異化を図ることも有意義です。
総じて、イタリアのエンドウ豆生産は現状では高コスト化や気候変動の影響、需要の減少といった複数の課題を抱えています。しかし地域間協力や消費促進キャンペーン、農業技術の進化を組み合わせることで回復の可能性を模索することができるでしょう。今後、国や地方政府、農業業界関係者、さらには国際社会が連携してこの問題に取り組むことが期待されます。