国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イタリアのトマト生産量は、1961年から2022年の間で変動を続けながらも、全体的には増加傾向にあります。特に1980年代から2000年代初頭には大幅な伸びを記録しましたが、2022年の生産量は6,136,380トンで、ピーク時の2004年に記録した7,683,071トンを下回っています。この長期データは、イタリアが主要なトマト生産国であることを示す一方で、近年の生産量の増減には複雑な要因が絡んでいることを示唆しています。
イタリアのトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 6,136,380 |
2021年 | 6,644,790 |
2020年 | 6,247,910 |
2019年 | 5,777,610 |
2018年 | 5,798,100 |
2017年 | 6,015,868 |
2016年 | 6,437,572 |
2015年 | 6,410,249 |
2014年 | 5,624,245 |
2013年 | 5,321,249 |
2012年 | 5,592,302 |
2011年 | 5,950,215 |
2010年 | 6,024,800 |
2009年 | 6,878,161 |
2008年 | 5,976,912 |
2007年 | 6,530,162 |
2006年 | 6,351,202 |
2005年 | 7,187,014 |
2004年 | 7,683,071 |
2003年 | 6,651,505 |
2002年 | 5,750,041 |
2001年 | 6,387,889 |
2000年 | 7,538,100 |
1999年 | 7,253,000 |
1998年 | 5,977,200 |
1997年 | 5,574,497 |
1996年 | 6,527,682 |
1995年 | 5,182,600 |
1994年 | 5,574,800 |
1993年 | 5,150,397 |
1992年 | 5,483,132 |
1991年 | 5,797,552 |
1990年 | 5,469,068 |
1989年 | 5,729,610 |
1988年 | 4,568,170 |
1987年 | 4,860,040 |
1986年 | 5,369,630 |
1985年 | 6,563,200 |
1984年 | 6,564,170 |
1983年 | 5,789,780 |
1982年 | 4,278,230 |
1981年 | 4,289,000 |
1980年 | 4,560,390 |
1979年 | 4,866,500 |
1978年 | 3,686,240 |
1977年 | 3,179,410 |
1976年 | 2,968,650 |
1975年 | 3,511,960 |
1974年 | 3,637,370 |
1973年 | 3,310,400 |
1972年 | 3,050,400 |
1971年 | 3,423,600 |
1970年 | 3,617,900 |
1969年 | 3,670,000 |
1968年 | 3,257,700 |
1967年 | 3,459,300 |
1966年 | 3,469,100 |
1965年 | 3,177,200 |
1964年 | 2,991,200 |
1963年 | 2,838,500 |
1962年 | 2,692,100 |
1961年 | 2,676,000 |
イタリアは地中海性気候と農業に適した土壌を持つ恵まれた環境の下、トマト生産において世界有数の生産量を誇っています。FAOが収集した1961年から2022年にかけてのデータによれば、イタリアのトマト生産量は大きな波を描きながら増加と減少を繰り返してきました。1960年代から1970年代まではおおむね300万トン台で推移し、1980年代に入ると500万トン以上へ急上昇し、1984年の6,564,170トンや2004年の7,683,071トンといった高い生産量を記録しています。
こうした増加傾向の背景には、農業技術の向上、灌漑施設の整備、特にEUの農業政策による助成金や技術面でのサポートなどが挙げられます。また、トマトがイタリア料理における基礎的な食材であることも国内市場の需要を支える大きな要因です。
一方で、近年の生産量は2000年代のピークから減少する局面も見られます。2022年の生産量は6,136,380トンで、2004年の最高値から約20%低い数字となっています。この減少傾向の要因としては、気候変動による異常気象や水資源の不足、また、農地の減少が関連していると考えられています。特に熱波や長期的な乾燥化による水不足はイタリアの農業に大きな負担をかけ、実際の生産能力を制約しています。
さらに、トマト市場における国際競争の激化も無視できません。中国やインドといった新興生産国は、コスト面での優位性を活かし市場シェアを拡大しています。これに対抗するため、イタリアでは高品質かつ伝統的な生産方式を維持しながら、加工食品や有機トマト分野での付加価値の高い製品作りに注力する動きが見られます。
未来に向けた課題として、気候変動への適応が最優先事項となります。具体的には、耐乾性品種の開発、スマート農業技術の導入、水資源の効率活用が重要となるでしょう。イタリア国内ではすでに一部の地域で持続可能な農業の実践が始まっていますが、これを全国規模に広げる必要があります。また、EUや国際機関との連携を深め、農業支援政策や研究開発への投資を拡大することも有効です。
結論として、イタリアのトマト生産は長期的には順調に推移してきましたが、近年の課題には複数の構造的な問題が含まれており、特に気候変動や国際競争への対応が急務と言えます。イタリア政府や農業団体は、環境負荷を軽減しながら持続性を重視した農業を推進し、高品質なトマト産業を守り続けていく必要があります。この取り組みは、今後のイタリアの農業全体にも広く影響を及ぼすことでしょう。