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イタリアのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、イタリアのクルミ生産量は1961年の71,300トンを最高値として記録していますが、その後、特に1980年代以降に大幅な減少傾向を示しました。近年では2019年以降、比較的安定した生産水準を維持しつつも、2022年には21,870トンへの一時的な増加がありました。しかし2023年には再び14,960トンへ減少しています。この生産動向には、気候条件、農業技術、国際市場の影響など、多数の要因が関連しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 14,960
-31.6% ↓
2022年 21,870
49.18% ↑
2021年 14,660
-5.36% ↓
2020年 15,490
43.43% ↑
2019年 10,800
-13.25% ↓
2018年 12,450
2.14% ↑
2017年 12,189
-0.13% ↓
2016年 12,205
1.24% ↑
2015年 12,055
-0.32% ↓
2014年 12,094
-0.82% ↓
2013年 12,194
3.61% ↑
2012年 11,769
12.08% ↑
2011年 10,500
-25% ↓
2010年 14,000
16.67% ↑
2009年 12,000
-0.38% ↓
2008年 12,046
-1.12% ↓
2007年 12,182
12.37% ↑
2006年 10,841
-1.45% ↓
2005年 11,000
-12.77% ↓
2004年 12,610
-2.1% ↓
2003年 12,880
-14.13% ↓
2002年 15,000
87.5% ↑
2001年 8,000
-50% ↓
2000年 16,000
-11.11% ↓
1999年 18,000
50% ↑
1998年 12,000
-6.25% ↓
1997年 12,800
10.34% ↑
1996年 11,600
9.58% ↑
1995年 10,586
3.34% ↑
1994年 10,244
-21.27% ↓
1993年 13,012
-17.57% ↓
1992年 15,785
8.79% ↑
1991年 14,510
-4.54% ↓
1990年 15,200
-10.54% ↓
1989年 16,990
-9.14% ↓
1988年 18,700
-46.54% ↓
1987年 34,980
-2.83% ↓
1986年 36,000
2.27% ↑
1985年 35,200
5.07% ↑
1984年 33,500
1.36% ↑
1983年 33,050
-28.46% ↓
1982年 46,200
-1.7% ↓
1981年 47,000
9.81% ↑
1980年 42,800
-2.84% ↓
1979年 44,050
-4.03% ↓
1978年 45,900
-7.46% ↓
1977年 49,600
1.22% ↑
1976年 49,000
-18.74% ↓
1975年 60,300
-7.66% ↓
1974年 65,300
-14.75% ↓
1973年 76,600
-0.78% ↓
1972年 77,200
-8.85% ↓
1971年 84,700
3.04% ↑
1970年 82,200
2.62% ↑
1969年 80,100
-1.23% ↓
1968年 81,100
2.27% ↑
1967年 79,300
12.64% ↑
1966年 70,400
1.15% ↑
1965年 69,600
15.42% ↑
1964年 60,300
-10.27% ↓
1963年 67,200
2.6% ↑
1962年 65,500
-8.13% ↓
1961年 71,300 -

イタリアは地中海性気候を持つ農業国として、歴史的にクルミの生産が盛んでした。1960年代には年間70,000トンを超える生産量を記録し、ピークとなった1961年には71,300トンを達成しました。しかし1970年代以降のデータを見ると、生産量は次第に減少に転じています。この減少は、気候変化、農業の経済性、都市化による耕地の減少に加え、競争力の高い輸入品が国内市場に浸透した影響と考えられます。

特に1980年代には、生産量が年間30,000トンを下回り、一時は20,000トン台へと急減しました。この頃は、高齢化した農家人口の増加や農業収益の低下により、果樹栽培からの撤退が目立ちました。1990年代にはさらに深刻な低水準が続き、1994年には生産量が10,244トンにまで縮小しました。しかし、その後10,000トン前後で推移し、2000年代には大規模な回復は見られなかったものの、ある程度の安定を保っています。

近年で注目すべきは、2022年に21,870トンまで生産量が急増したことです。この増加は、世界的な需要の高まりを受けた価格上昇が、再びクルミ栽培への関心を高めたことが背景にあると考えられます。また、農業技術の進歩や灌漑システムの整備も回復の要因の一つです。しかし2023年には14,960トンに減少しており、この動きは一過性の変動か、また長期傾向に戻るのかは慎重な見極めが必要です。

イタリアは国内市場での需要を補うため、多くのクルミを輸入しています。これにはアメリカ、トルコ、中国産のクルミが多く含まれます。これらの国々の大規模農業や低価格競争は、イタリア国内の農家にとって大きな脅威となっています。とりわけアメリカはカリフォルニア州を中心に、世界最大のクルミ輸出国として他国を圧倒しています。そのため、地元農家が経済的に持続可能な形で生産を続けるには、差別化した商品作りや高品質クルミの栽培が求められています。

また、気候変動の影響も看過できません。地中海地域では、異常気象や気温上昇が農業生産に大きな影響を及ぼしています。特に猛暑や降雨不足は、クルミの収穫量に直結する問題です。さらには、害虫や病気の発生率が増加しており、農薬使用量の増加やそれに伴うコスト上昇も課題となっています。

この現状を改善するためには、具体的に以下のような対策が考えられます。第一に、地域の農家がテクノロジーを導入し、効率的な農作業体制を確立することが重要です。ドローンやAIを活用した病害虫監視や水管理技術の導入は、持続可能な農業を実現する可能性を秘めています。第二に、イタリア産のクルミが地元や海外市場で評価されるよう、高い付加価値を持つ商品としてブランディングを強化することが必要です。オーガニック認証や地理的表示保護(PGI)の取得は、そのための有効な手段となり得ます。第三に、政府やEUの支援プログラムを通じて、若い農業従事者を育成し、耕作放棄地の再活用を推進すべきです。

より長期的な改善を模索する中で、地政学的リスクや国際市場の価格変動にも注意を払う必要があります。特にウクライナ情勢の不安定さや中国の輸出政策の変化は、世界的な農業市場に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを減らすためには、地域間協力の枠組みを強化し、安定した供給網を構築することが重要です。

結論として、イタリアのクルミ生産量の推移は、多面的な課題と直面している一方で、的確な政策や技術の導入によって回復の兆しを見せる可能性を秘めています。特に世界的な需要がある現状を活かし、品質やブランド訴求力を高めることが、イタリア産クルミの再飛躍に繋がるでしょう。