イタリアのアーモンド生産量推移（1961年～2023年）

FAO（国際連合食糧農業機関）の最新データによると、イタリアのアーモンド生産量は1961年から2023年にかけて大きな変動を見せています。1961年に記録的な328,500トンを生産した後、以降の数値は大幅に減少し、近年では70,000トン台で推移しています。特に2010年代以降は比較的安定しつつも、時折減少傾向が見られる状況です。この変動の背景には、地政学的要因、気候変動、および農業構造の変化が関連していると考えられます。

イタリアは伝統的に地中海農業の中心地として、さまざまな作物を栽培してきましたが、アーモンドの生産量は過去60年以上にわたり著しい変化を見せています。1961年の328,500トンという非常に高い生産量は、その後の減少傾向を際立たせています。この減少は、生産技術の進化だけでなく、農地の他作物への転作など、多くの要因の影響を受けています。

1970年代から1980年代初頭にかけては、年間生産量が100,000トンを超える年も見られましたが、それ以降は次第に70,000～120,000トンの範囲で推移しています。2013年以降、特に天候の不安定さやそれによる収穫量の減少がみられ、2015年には70,399トンと低調な結果に終わっています。一方で、2020年に80,520トンという一時的な回復があり、その後の数年間も比較的安定しています。

このような長期的な低下傾向の原因には、地政学的要因や農業市場の変動が挙げられます。例えば、グローバル化が進展する中で、アメリカ（特にカリフォルニア）やスペインなどの他国市場の競争力が高まり、イタリア産アーモンドの国際市場でのシェアが縮小した可能性があります。また気候変動も大きな影響を与えており、イタリア南部では干ばつや異常気象が作物の生産効率を著しく低下させています。さらに、農地の高齢化や労働力不足といった構造的課題も影響を及ぼしています。

アーモンド生産量の低下と不安定さは、イタリア農業にとって課題であるとともに、地域経済にも影響を与える可能性があります。これに対処するためには、灌漑技術の向上や省力化を図ることで、農業効率を高める取り組みが急務です。また、気候変動への対応として、耐干ばつ性の高いアーモンド品種の導入や持続可能な農業技術の普及が求められるでしょう。

さらに地政学的には、他の主要生産国との協議を通じて、市場の需給バランスを調整し、イタリア産アーモンドのブランドバリューを強化することが重要です。他国での大量生産に対抗するため、品質や地域性などを差別化要素として訴求する戦略が考えられます。具体的には、有機農法や地産地消へのシフトを促進し、「Made in Italy」ブランドの価値を強化することが有効です。

また、新型コロナウイルス感染症が生産者コミュニティや物流に与えた影響も無視できません。2020年以降、パンデミックの影響で輸出入が一時停滞したことが供給チェーン全体に波及しました。この経験を踏まえ、物流の多様化や生産・配送システムの堅牢化を進めるべきです。

これらの課題に対応するため、政府や地域、さらには国際的な協力が不可欠です。具体的な提案としては、EUの農業支援プログラムを活用した補助金や技術移転を通じて、イタリアのアーモンド農業を持続可能で競争力のある産業へと再建する仕組みが挙げられます。また、農業教育の充実や若年層の農業参加を促進する施策によって、次世代の農業基盤を整えることも重要です。

結論として、イタリアのアーモンド生産量は、過去の豊かな生産規模からは縮小したものの、持続可能な開発の取り組みによって再びその可能性を取り戻す余地があります。地政学的リスク、気候変動、競争力減退といった多角的な課題に対応しながら、未来志向のアプローチが取り入れられることが期待されます。