Skip to main content

イタリアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データを基にイタリアの羊肉生産量の推移を分析すると、1961年の36,100トンを基点として、1980年代から1990年代にかけて生産量は増加しており、1992年にはピークの81,886トンを記録しました。しかし、それ以降は全体的に減少傾向を示し、2023年には26,960トンと最低値を記録しています。この53年間で生産量は大きく減少しており、特に2010年代以降の落ち込みが顕著です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 26,960
-8.73% ↓
2022年 29,540
0.41% ↑
2021年 29,420
0.72% ↑
2020年 29,210
-8.32% ↓
2019年 31,860
-8.53% ↓
2018年 34,830
4.75% ↑
2017年 33,251
6.21% ↑
2016年 31,308
-6.91% ↓
2015年 33,632
32.85% ↑
2014年 25,316
-25.88% ↓
2013年 34,154
-25.03% ↓
2012年 45,558
-3.9% ↓
2011年 47,407
-9.25% ↓
2010年 52,240
-7.86% ↓
2009年 56,696
-1.1% ↓
2008年 57,327
-2.99% ↓
2007年 59,093
0.33% ↑
2006年 58,899
0.53% ↑
2005年 58,588
-1.31% ↓
2004年 59,364
2.21% ↑
2003年 58,080
-0.54% ↓
2002年 58,394
-5.94% ↓
2001年 62,079
-5.03% ↓
2000年 65,364
-6.08% ↓
1999年 69,594
-0.26% ↓
1998年 69,776
-2.51% ↓
1997年 71,571
-2.79% ↓
1996年 73,627
1.55% ↑
1995年 72,505
-3.02% ↓
1994年 74,761
-2.5% ↓
1993年 76,680
-6.36% ↓
1992年 81,886
1.67% ↑
1991年 80,539
-0.28% ↓
1990年 80,762
7.2% ↑
1989年 75,336
8.97% ↑
1988年 69,134
3.01% ↑
1987年 67,111
4.93% ↑
1986年 63,955
-3.72% ↓
1985年 66,423
-0.76% ↓
1984年 66,935
-12.71% ↓
1983年 76,680
20.47% ↑
1982年 63,650
-0.61% ↓
1981年 64,040
-3.89% ↓
1980年 66,630
5.89% ↑
1979年 62,926
8.02% ↑
1978年 58,256
-2.66% ↓
1977年 59,849
28.52% ↑
1976年 46,567
-0.28% ↓
1975年 46,700
7.85% ↑
1974年 43,300
-5.87% ↓
1973年 46,000
-7.89% ↓
1972年 49,940
-1.85% ↓
1971年 50,881
-0.43% ↓
1970年 51,100
10.46% ↑
1969年 46,263
10.41% ↑
1968年 41,900
2.7% ↑
1967年 40,800
5.15% ↑
1966年 38,800
10.86% ↑
1965年 35,000
-6.67% ↓
1964年 37,500
0.27% ↑
1963年 37,400
-2.86% ↓
1962年 38,500
6.65% ↑
1961年 36,100 -

イタリアの羊肉生産量は、1961年から2023年にかけて大きな変化を遂げています。初期の1960年代と比較すると、1970年代後半から1980年代にかけて生産量が増加し、1990年代初頭にはピークとなる81,886トンに達しています。この時期はイタリア国内での肉類需要の高まりや、農業技術の近代化、輸送インフラの進化など、多くの要因が影響を及ぼしたと考えられます。しかし、その後は急激に減少し、2023年には過去最低の26,960トンとなりました。

この減少には複数の背景が考えられます。まず、市場の需要変化が挙げられます。イタリアを含む欧州諸国では低脂肪・低カロリー食品の消費が増加しており、他の肉類や代替食品へのシフトが見られます。また、グローバル化の進展により、羊肉を含む多くの食材が輸入に頼る傾向が強まっています。これにより、国内生産者が市場競争で苦戦し、生産量の減少につながっていると考えられます。

さらに、農業従事者の高齢化や地方農村部の人口減少も深刻な課題です。イタリアの羊肉生産は中小規模の牧畜農家に依存している場合が多く、若い世代の後継者不足が生産基盤を弱体化させています。気候変動も影響の一つであり、干ばつや高温化により牧草地の質が低下し、生産コストが上昇していることも見逃せません。

このような国内事情に加え、地政学的な要因も無視できません。ヨーロッパ全般における新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で物流が一時的に停滞したことで、供給チェーンが混乱し、農業部門の運営に支障をきたした例が挙げられます。また、ウクライナ危機などがもたらす食料価格の変動も、羊肉生産に間接的な影響を与えています。

こうした状況を踏まえると、イタリアの羊肉生産の未来を持続可能にするためには、いくつかの具体的な対策が求められます。まず、農業技術の革新を通じて生産効率の向上を図ることが重要です。たとえば、スマート農業の導入による管理効率の改善や、高品質な牧草地の開発に投資を行うべきです。また、地方農村地域の活性化を目指し、若い世代の農業参入を促進するための支援が必要です。これには税制優遇や奨励金制度の構築が含まれます。

さらに、地域間協力も鍵となります。イタリア国内だけでなく、EU全体でのスケールメリットを活かし、羊肉市場の需要と供給のバランスを調整する枠組みを強化するべきです。この他、消費者教育キャンペーンを通じて羊肉の魅力を再発見させたり、新たな食文化を作り上げることで、国内需要を再び高める可能性も考えられます。

結論として、イタリアの羊肉生産量の減少は多面的な要因が絡み合う結果であり、単一の解決策では十分ではありません。しかしながら、より包括的な政策措置を取ることで、長期的には回復への道筋を築くことが可能です。国際連合や欧州連合と連携しながら地元の持続可能性を高め、食料供給の安定化と地元経済の振興を実現することが、今後の重要な課題といえるでしょう。