FAO(国際連合食糧農業機関)のデータによると、イタリアの小麦生産量は1960年代から2020年代にかけて変動を繰り返しながらも、全体的に減少傾向が見られます。1961年には830万トンを超えた生産量がピーク時に1000万トン以上(1984年)を記録する一方、近年では700万トンを下回る年が増加しています。2022年には約661万トンと低水準で推移しました。これらの変化には、気候変動、農業技術、経済政策の影響が絡んでいます。
イタリアの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 6,609,520 |
2021年 | 7,294,570 |
2020年 | 6,716,180 |
2019年 | 6,739,470 |
2018年 | 7,104,650 |
2017年 | 6,966,465 |
2016年 | 8,037,872 |
2015年 | 7,394,495 |
2014年 | 7,141,926 |
2013年 | 7,312,025 |
2012年 | 7,654,248 |
2011年 | 6,641,807 |
2010年 | 6,849,858 |
2009年 | 6,534,746 |
2008年 | 8,855,440 |
2007年 | 7,170,181 |
2006年 | 7,181,720 |
2005年 | 7,717,129 |
2004年 | 8,638,721 |
2003年 | 6,229,453 |
2002年 | 7,547,763 |
2001年 | 6,413,300 |
2000年 | 7,463,968 |
1999年 | 7,742,800 |
1998年 | 8,338,301 |
1997年 | 6,758,351 |
1996年 | 7,987,241 |
1995年 | 7,946,080 |
1994年 | 8,251,400 |
1993年 | 8,169,800 |
1992年 | 8,938,421 |
1991年 | 9,415,660 |
1990年 | 8,108,500 |
1989年 | 7,412,900 |
1988年 | 7,951,900 |
1987年 | 9,381,000 |
1986年 | 9,102,100 |
1985年 | 8,460,700 |
1984年 | 10,057,300 |
1983年 | 8,717,400 |
1982年 | 8,968,300 |
1981年 | 8,830,300 |
1980年 | 9,156,000 |
1979年 | 8,980,300 |
1978年 | 9,190,500 |
1977年 | 6,238,300 |
1976年 | 9,105,800 |
1975年 | 9,480,000 |
1974年 | 9,576,700 |
1973年 | 8,811,400 |
1972年 | 9,255,000 |
1971年 | 9,993,900 |
1970年 | 9,688,600 |
1969年 | 9,584,600 |
1968年 | 9,655,400 |
1967年 | 9,595,600 |
1966年 | 9,399,600 |
1965年 | 9,775,900 |
1964年 | 8,585,800 |
1963年 | 8,126,800 |
1962年 | 9,496,900 |
1961年 | 8,301,200 |
イタリアの小麦生産量の推移を長期的に見ると、数十年をかけて緩やかな減少傾向が見られる一方で、年ごとの気候変動や地政学的リスクに大きく左右されることが分かります。例えば、1961年から1980年代にかけての生産量は概ね900万トン前後で安定していましたが、1980年代後半からは気候条件や農業構造の変化に伴い、生産量は減少の兆しを示し始めました。1984年に記録した1000万トンというピーク以降は、多くの年で800万トン未満の水準が続いています。
2000年代以降、イタリアの小麦生産量はさらに不安定になりました。この原因の一つとして、気候変動による干ばつや集中豪雨が挙げられます。イタリアを含む地中海地域では、高温化と降雨パターンの変化が農業生産に深刻な影響を与えています。特に2017年や2019年のように600万トン台を割り込むケースは、このような気候的要因が要因の一部と推測されます。また、2020年以降は新型コロナウイルスのパンデミックの影響もあり、物流の混乱や労働力不足が農業生産に負の影響を及ぼした可能性が高いと考えられます。
さらに、地政学的背景や経済政策も重要な要因です。イタリアの農業政策が輸出志向から国内消費重視に変化したことや、EUの共通農業政策(CAP)による市場競争の激化が、小規模農家の経営を圧迫し、生産量の減少を招いているとも考えられます。特に、EU域内で販売される小麦の品質基準やエネルギーコストが高まる中で、イタリアの生産者は競争優位性を失う傾向にあります。
この現状を改善するために、いくつかの対策が検討されるべきです。第一に、持続可能な農業を促進するための支援が不可欠です。たとえば、灌漑技術の向上やスマート農業の導入に対する補助金の拡充が有効です。第二に、地域間での協力や技術共有を進めることも重要です。イタリアだけでなく、スペインやフランスなど同様の気候条件に直面している国々と共に、研究開発や気候変動への適応策を模索することが推奨されます。第三に、地中海全域での農業生産者のネットワーク構築や平和的な資源共有の枠組みづくりを進めるべきです。この地域は政治的に不安定な国も多いため、食糧の安定供給を目指して国際協調が不可欠です。
結論として、イタリアの小麦生産量は、歴史的には安定して高い水準を保っていましたが、最近では気候変動、経済情勢、さらには世界的なパンデミックの影響を強く受けるようになっています。EUや国際機関の協力を活用しつつ、気候に適応した農業政策や技術の導入を進めることで、今後の安定した生産量の確保が期待されます。この先、政策的な支援とイノベーションの活用がイタリアの農業、ひいては地中海全体の食料供給の安定に寄与するでしょう。