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イタリアのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表したデータによると、イタリアのヤギ飼養頭数は1960年代以降、大きな変動を見せています。一時は減少傾向が続きましたが、1980年代中盤以降から増加に転じ、1990年代には再び安定的な増加傾向が確認されました。しかし、2001年に急激な減少を記録した後、再び回復し、2020年代の直近数年間では飼養頭数が100万頭を超える状態が続いていることが示されています。このデータは、イタリアにおける家畜の育成状況や畜産業の変化を理解する上で重要な指標となっています。

年度 飼養頭数(頭) 増減率
2023年 980,000
-2.97% ↓
2022年 1,010,000
-4.78% ↓
2021年 1,060,750
-0.47% ↓
2020年 1,065,710
0.66% ↑
2019年 1,058,720
7.35% ↑
2018年 986,260
-0.6% ↓
2017年 992,177
-3.32% ↓
2016年 1,026,263
6.72% ↑
2015年 961,676
2.63% ↑
2014年 937,029
-3.98% ↓
2013年 975,858
9.45% ↑
2012年 891,604
-9.29% ↓
2011年 982,918
2.28% ↑
2010年 961,000
0.39% ↑
2009年 957,300
4.05% ↑
2008年 920,000
-3.66% ↓
2007年 955,000
1.06% ↑
2006年 945,000
-3.37% ↓
2005年 977,984
1.77% ↑
2004年 960,994
-2.73% ↓
2003年 988,000
-3.61% ↓
2002年 1,025,000
11.05% ↑
2001年 923,000
-33.93% ↓
2000年 1,397,000
4.96% ↑
1999年 1,331,000
-1.19% ↓
1998年 1,347,000
-3.09% ↓
1997年 1,390,000
-4.01% ↓
1996年 1,448,000
0.03% ↑
1995年 1,447,600
5.05% ↑
1994年 1,378,000
2.53% ↑
1993年 1,344,000
2.27% ↑
1992年 1,314,200
1.29% ↑
1991年 1,297,500
4.13% ↑
1990年 1,246,000
2.61% ↑
1989年 1,214,300
0.69% ↑
1988年 1,206,000
0.42% ↑
1987年 1,201,000
0.98% ↑
1986年 1,189,400
9.18% ↑
1985年 1,089,400
0.15% ↑
1984年 1,087,800
-20.01% ↓
1983年 1,360,000
32.19% ↑
1982年 1,028,800
1.93% ↑
1981年 1,009,300
3.22% ↑
1980年 977,800
-0.2% ↓
1979年 979,800
2.11% ↑
1978年 959,600
1.2% ↑
1977年 948,200
0.89% ↑
1976年 939,800
-1.9% ↓
1975年 958,000
1.07% ↑
1974年 947,900
-0.25% ↓
1973年 950,300
-2.62% ↓
1972年 975,890
-4.2% ↓
1971年 1,018,710
-1.16% ↓
1970年 1,030,700
-1.41% ↓
1969年 1,045,400
-6.99% ↓
1968年 1,124,000
-1.4% ↓
1967年 1,140,000
0.09% ↑
1966年 1,139,000
-7.23% ↓
1965年 1,227,800
-0.67% ↓
1964年 1,236,100
-3.27% ↓
1963年 1,277,930
-2.39% ↓
1962年 1,309,180
-5.2% ↓
1961年 1,381,000 -

イタリアのヤギ飼養頭数推移は、長期間にわたる大きな変動が特徴です。1961年から1980年の間で飼養頭数は減少傾向にありました。例えば、1961年には約138万頭が飼養されていましたが、1980年代初頭にはその数字が約98万頭にまで減少しています。この減少の背景には、農村部の人口減少や都市化の進行、さらにはヤギ乳製品の需要の一時的な低下が影響していたと考えられます。

一方、1983年には136万頭への大幅な回復が見られるなど、1980年代半ば以降は増加基調が続きました。この増加は、イタリア国内のみならず海外でもイタリア産のヤギ乳やヤギ乳製品(特にチーズ)の人気が高まり、それに伴い小規模農家での飼養が再び活発化したことに起因しています。また、欧州連合(EU)の農業支援政策の進展により、家畜育成への補助が増えたことも一因とされています。

1990年代にはさらに増加の勢いが強まり、1995年には初めて144万頭を超えました。しかし2001年には突然92万頭を記録するという急減に見舞われました。この急激な減少は、家畜の疫病や畜産業の構造改革、さらには全体的な農業政策の変化による影響を指摘する声があります。その後の2000年代では100万頭前後で推移しましたが、2019年から2020年にかけて再び飼養頭数の増加が確認され、2020年には約106万頭に達しました。

近年の飼養頭数の回復は、ヤギ乳製品のヘルシー志向による需要増大が一因と考えられています。特にヨーロッパ全体で健康食品や天然由来の食品志向が高まっていることで、イタリアのヤギ乳製品は国際市場でも競争力を高めています。しかし一方で、2022年には再び100万頭を下回る傾向も見られ、これは気候変動の影響や飼育コストの増加、さらには農村地域の持続可能性の課題が複雑に絡んでいる可能性があります。

これらの動向を考慮すると、イタリアのヤギ飼養業は現状維持や発展のために複数の課題をかかえていると言えます。例えば、家畜の病気予防や環境への影響を考慮した持続可能な飼養方法の普及、さらには高齢化が進む農村部での若年層の担い手確保などが緊急の対策として挙げられます。また、産業全体の競争力を向上させるため、デジタル技術の導入による効率的な管理システムの構築も重要です。さらに、ヤギ乳製品のブランド力を高めることで、国内外市場での需要をさらに拡大することも長期的な視点で必要です。

将来的には、気候変動や市場需要の変化を考慮しながら、持続可能な農畜産業の制度設計が必要になるでしょう。例えば、自然災害や気温上昇の影響から家畜を守るための地理的適応戦略や、地域内外での協力的な枠組みづくりなどが具体的な施策として挙げられます。また、ヨーロッパ全体での地域衝突や経済の不安定要素も、農業収益に影響を与えるリスク要因として無視できません。そのため、EU内の資金提供制度や国際的な研究・開発の連携による支援がイタリアのヤギ飼養業の安定に寄与する可能性が高いと考えられます。