国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによれば、イタリアのイチゴ生産量は1961年の46,321トンから1980年には225,000トンまで大きく増加しました。しかし、その後は減少傾向が続き、2022年には100,680トンまで落ち込みました。特に近年、2010年以降には顕著な下落が見られ、これは気候変動や農業資源の利用状況の変化、さらには市場環境の動向が影響していると考えられます。
イタリアのイチゴ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 100,680 |
2021年 | 117,630 |
2020年 | 121,790 |
2019年 | 125,130 |
2018年 | 119,220 |
2017年 | 125,335 |
2016年 | 131,436 |
2015年 | 143,177 |
2014年 | 135,320 |
2013年 | 147,185 |
2012年 | 132,292 |
2011年 | 46,000 |
2010年 | 153,875 |
2009年 | 163,044 |
2008年 | 155,583 |
2007年 | 160,558 |
2006年 | 143,315 |
2005年 | 146,769 |
2004年 | 167,727 |
2003年 | 154,861 |
2002年 | 150,901 |
2001年 | 181,000 |
2000年 | 195,661 |
1999年 | 185,852 |
1998年 | 178,000 |
1997年 | 161,557 |
1996年 | 168,500 |
1995年 | 190,100 |
1994年 | 190,024 |
1993年 | 194,325 |
1992年 | 183,700 |
1991年 | 191,190 |
1990年 | 188,266 |
1989年 | 204,897 |
1988年 | 188,936 |
1987年 | 191,467 |
1986年 | 168,680 |
1985年 | 164,782 |
1984年 | 148,087 |
1983年 | 158,853 |
1982年 | 165,899 |
1981年 | 172,700 |
1980年 | 225,000 |
1979年 | 204,990 |
1978年 | 194,010 |
1977年 | 149,790 |
1976年 | 156,000 |
1975年 | 134,000 |
1974年 | 143,000 |
1973年 | 135,100 |
1972年 | 106,400 |
1971年 | 91,781 |
1970年 | 93,601 |
1969年 | 81,441 |
1968年 | 69,726 |
1967年 | 72,258 |
1966年 | 69,022 |
1965年 | 57,168 |
1964年 | 63,022 |
1963年 | 44,500 |
1962年 | 51,815 |
1961年 | 46,321 |
1961年から2022年までのイタリアのイチゴ生産量の推移を振り返ると、特に1970年代から1980年代初頭にかけて生産量が急激に増加していることがわかります。この時期、農業技術の改善や作付面積の拡大が進み、イタリアはヨーロッパを代表するイチゴ生産国の1つとしての地位を築きました。1980年には225,000トンの生産量を記録し、これはデータ期間中の最高値です。
一方で、1980年代後半以降、生産量は全体的に緩やかに減少し始め、2000年代以降ではさらに顕著な下落傾向が現れます。特に、2010年以降は安定した高い生産量を維持できなくなり、2022年にはついに100,680トンと、記録開始以来2番目に低い数値を記録しました。この変化にはいくつかの要因が考えられます。
まず、地中海地域全体が気候変動による影響を受けており、特に最近の猛暑や干ばつがイチゴの栽培に困難をもたらしています。イチゴは温暖な気候を好む一方、高温に弱く、水資源の不足から収穫量に悪影響を及ぼしています。また、環境問題への対応として、農薬や化学肥料の利用制限が強化されたことも、短期的には生産効率に影響を与えている可能性があります。
加えて、輸入品の競争激化も重要なポイントです。イタリア市場においては、スペインやトルコ、中国をはじめとする他国産のイチゴが広く流通しており、価格競争力において優位に立つこれらの国々に押される形となっています。特にスペインは、効率的な生産システムと輸送ネットワークを背景に、ヨーロッパ市場で強い影響力を持っています。
さらに、国内の課題として高齢化する農業人口の問題も無視できません。若い世代の農業離れが進む一方、農業におけるデジタル技術や先進機器の導入が遅れていることが課題解決を難しくしています。これにより、生産の効率化や持続可能な農業技術の導入が他国と比べて遅れ、競争力が低下している可能性があります。
この現状を打開するためには、革新的なアプローチが必要です。例えば、スマート農業技術を活用し、気候条件に適応した作物栽培を行うことが考えられます。IoTセンサーやドローンなどの導入により、水資源の効率的な利用や害虫管理の自動化を進めることで、生産性の向上が期待できます。また、輸入品との競争に対しては、有機農法や地域ブランドの確立による差別化戦略が効果的です。「メイド・イン・イタリー」というラベルを付けた高品質な製品を市場に訴求することで、国際的な競争力を強化することが求められます。
地政学的背景として、ヨーロッパにおける農業政策や各国間の貿易関係も、この問題に影響を及ぼします。今後、EUにおける農業補助金や気候変動対策の資金配分がどのように変化するかが、イタリアの農業全般、ひいてはイチゴ生産量にも影響を及ぼすことでしょう。特に、共通農業政策(CAP)の下での支援をどれだけ効率的に活用できるかが鍵となります。
また、世界的な新型コロナウイルスのパンデミックも、市場流通や労働力不足という形で影響を与え、生産量の低下要因に拍車をかけました。このような課題を背景に、国や地域ごとに持続可能な資源管理や農業政策への取り組みを強化する必要があります。
結論として、長期的な視点で見たイタリアのイチゴ生産量の減少は、多くの要因が複合的に絡み合った結果と言えます。この傾向を逆転させるためには、環境問題と経済競争力の両面からのアプローチが重要です。国としては、農業インフラの再構築とともに、新しい技術や教育の普及に投資する必要があります。また、国際的な協力や輸出戦略を強化することで、新しい市場需要を開拓し、持続可能な発展を目指すことが求められます。