イタリアの桃（モモ）・ネクタリン生産量推移（1961年～2023年）

国際連合食糧農業機関（FAO）の最新データによれば、イタリアにおける桃（モモ）・ネクタリンの生産量は、1961年の1,015,000トンから2023年では1,033,840トンと、60年以上にわたり大きな変動を経験しています。生産量は1980年代から1990年代にかけてピークを迎え、1992年には最高値の1,892,143トンを記録しました。その後変動を重ねながら、近年は減少傾向が顕著で、2020年代に入ってから特に100万トン前後に落ち込む傾向が見られます。

イタリアは地中海性気候の特性を活かし、古くから桃（モモ）やネクタリンの主要生産地として位置づけられてきました。特に1980年代から1990年代にかけては、1,500,000トンを超える高い生産量を記録し、1992年にはその頂点である1,892,143トンを記録しました。この時期の高水準は、農業技術の向上と輸出市場の拡大、また国内消費需要の成長が要因と考えられます。

しかしながら、2000年代以降、特に2010年代後半から生産量は減少に転じており、ここ10年間は1,000,000～1,400,000トン程度の変動を繰り返しています。この傾向には、いくつかの要因が挙げられます。まず、気候変動による天候異常が作物の生産量に影響を与えた点が重要です。イタリアでは、近年の猛暑や干ばつ、あるいは局地的な大雨が農業に深刻な影響を与えています。さらに、農業労働力の減少や収益性の低下によって、桃やネクタリン栽培を他の農作物サービスに切り替える動きが生産量の減少に拍車をかけていると言えます。

また、国際市場における競争も重要な要因となっています。中国やトルコなどの低コスト生産地が国際市場でイタリアの桃に対して競争優位を持ちながら存在感を拡大しています。このことが、イタリアの輸出成長の妨げとなり、製品単価の低下を招いています。一方、桃やネクタリンの新たな価値を創出する動きがやや不足していることも、国内外での競争力の低下につながっています。

地域ごとの課題に目を向けると、イタリア北部は気温上昇や降水量減少に見舞われており、これは生産量減少の大きな要因となっています。また、イタリア南部やシチリア島では、近年の水資源不足が農産物全般に影響を及ぼしており、灌漑インフラの不足が顕著です。この課題を克服できなければ、生産量の維持は今後さらに困難になる可能性があります。

未来を見据えると、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、気候変動への適応力を高めるための持続可能な農業技術の導入が急務です。これは、乾燥地域向けの品種改良や、効率的な灌漑システムの導入を含みます。また、桃やネクタリンの付加価値を高めるため、加工食品や有機農産物としての展開を進めるべきです。新興市場への輸出拡大も、競争力を維持する鍵と言えるでしょう。さらには、EUの共通農業政策（CAP）による補助金活用を通じて、桃やネクタリン生産に関連する農家の競争力を高める仕組みを見直すことも重要です。

結論として、イタリアの桃・ネクタリン生産量は、長期的な視点に立脚した政策変更や農業技術の進展、国際市場でのブランディング戦略によって、現在の減少傾向を食い止めるポテンシャルを秘めています。特に気候変動の影響がさらに深刻化する中、持続可能な農業の実現と国際競争力の強化が、この果樹産業の未来を守る鍵となるでしょう。政策策定者、農家、そして消費者が連携してこの課題に取り組む必要があります。