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イタリアのオリーブ油生産量推移(1961年~2021年)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、イタリアのオリーブ油生産量は過去60年間にわたって大きな変動を見せてきました。そのピークは1983年の824,000トンに達し、最小値は1990年の163,250トンでした。近年では、2021年に338,631トンと、生産量は長期的に減少傾向にあることが確認されています。この生産量の変動は、気候条件の影響、農業技術の導入の遅れ、競争相手であるスペインやギリシャなど他国の生産増加など、複数の要因に起因していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2021年 338,631
2.34% ↑
2020年 330,879
-1.69% ↓
2019年 336,581
15.97% ↑
2018年 290,232
-29.41% ↓
2017年 411,159
37.61% ↑
2016年 298,790
-38.8% ↓
2015年 488,214
65.54% ↑
2014年 294,914
-36.4% ↓
2013年 463,700
-8.34% ↓
2012年 505,915
-6.62% ↓
2011年 541,760
2.84% ↑
2010年 526,778
1.8% ↑
2009年 517,460
-14.75% ↓
2008年 607,000
5.7% ↑
2007年 574,261
-4.81% ↓
2006年 603,253
-10.14% ↓
2005年 671,315
-15.51% ↓
2004年 794,559
32.32% ↑
2003年 600,482
4.44% ↑
2002年 574,950
0.25% ↑
2001年 573,500
13.03% ↑
2000年 507,400
-28.89% ↓
1999年 713,500
51.37% ↑
1998年 471,349
-27.71% ↓
1997年 652,039
67.13% ↑
1996年 390,141
-38.11% ↓
1995年 630,403
29.59% ↑
1994年 486,450
-13.98% ↓
1993年 565,510
30.17% ↑
1992年 434,440
-44.74% ↓
1991年 786,200
381.59% ↑
1990年 163,250
-71.76% ↓
1989年 578,130
34.24% ↑
1988年 430,680
-34.73% ↓
1987年 659,800
95.2% ↑
1986年 338,010
-47.31% ↓
1985年 641,500
86.92% ↑
1984年 343,200
-58.35% ↓
1983年 824,000
91.63% ↑
1982年 430,000
-29.1% ↓
1981年 606,500
-12.17% ↓
1980年 690,500
45.28% ↑
1979年 475,300
13.46% ↑
1978年 418,900
-39.21% ↓
1977年 689,100
133.04% ↑
1976年 295,700
-53.28% ↓
1975年 632,900
46.81% ↑
1974年 431,100
-20.58% ↓
1973年 542,800
59.84% ↑
1972年 339,600
-45.06% ↓
1971年 618,100
47.2% ↑
1970年 419,900
-11.3% ↓
1969年 473,400
23.09% ↑
1968年 384,600
-28.42% ↓
1967年 537,300
67.75% ↑
1966年 320,300
-23.72% ↓
1965年 419,900
37.99% ↑
1964年 304,300
-43.46% ↓
1963年 538,200
73.56% ↑
1962年 310,100
-21.31% ↓
1961年 394,100 -

イタリアは世界でも有数のオリーブ油生産国であり、地中海地域での農業の中心地でもあります。しかし、1961年以降のデータをみると、長期的に生産量が増減を繰り返しながらも、近年は特に低下傾向が目立っています。例えば、1983年の824,000トンという史上最高値から、2021年には338,631トンまで大きく生産量が落ち込んでいます。この長期的な動向を理解するためには、複数の要因を考慮する必要があります。

まず、気候変動が大きな影響を与えています。地中海地域は特に気候変動の影響を強く受ける地域であり、近年の異常気象や高温乾燥化はオリーブ農家にとって重大な課題となっています。例えば、2014年や2018年といったある年では異常な夏の旱魃や春の低温によって植物の生育が妨げられ、極端に低い生産量となりました。さらに、病害虫の発生も深刻な問題です。特にバクテリア性疾患であるXylella fastidiosa (キシレラ・ファスティディオサ)の影響は、一部地域では壊滅的な被害をもたらしています。

また、農業労働力の減少と高齢化が直接的な影響を及ぼしています。豊かで多様な農業文化が伝統的に根付いていたイタリアですが、若年世代は農業部門を敬遠する傾向があります。これにより、多くの小規模農家が廃業し、伝統的生産法を維持することが困難になっています。加えて、スペインのような他の生産国との競争が激化していることも、生産量減少の一因です。スペインは大規模な灌漑設備と近代化された生産技術を積極的に採用しており、過去10年間で市場を急速に拡大させています。一方、イタリアは広範囲での農地整備が十分に行われておらず、効率面で競争に遅れをとっています。

このような背景を踏まえ、今後イタリアがオリーブ油生産を維持・向上するためには、具体的な対策が必要です。まず、気候変動への適応が不可欠です。例えば、耐旱性(乾燥に強い)や病害虫抵抗性を持つ新種のオリーブの開発と導入を進めることが重要です。これにより、変動する気象条件や病害への対応力を高めることが期待されます。

次に、農業分野への投資を促す政策が求められます。具体的には、若手農業従事者への補助金制度や技術トレーニングプログラムを拡充し、農業を魅力的な職業として位置付けることが考えられます。また、小規模農家が協同組合を形成し、効率よく生産設備を共有する仕組み作りも有用です。この取り組みにより、農家間での資源の効果的な利用と技術共有が促進されるでしょう。

さらに、欧州連合(EU)とも連携すべきです。イタリアはEUの農業補助金を活用することで、研究開発への資金を増やし、持続可能な農業システムを確立することが可能となります。他国との比較では、スペインやギリシャなども同様の課題に直面していますが、これらの国々は大規模な政策支援と技術更新を進めています。イタリアとしても、これら近隣国からの成功例を学び取り、自国の特性に合わせた政策を実施すると良いでしょう。

このように、イタリアのオリーブ油生産は多くの課題に直面しているものの、伝統と技術の融合によって将来的には更なる成長が期待されます。また、オリーブ油は地政学的にも重要な製品であり、地中海地域の資源を巡る国際競争においても重要な意味を持っています。イタリアのような主要生産国が生産を維持することは、地域の安定と競争力を保つ上で不可欠といえるでしょう。このため、共同体としての取り組みがより一層求められるのです。