Skip to main content

イタリアのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イタリアのヤギ肉生産量は1961年に4,200トンを記録し、その後、全体的に減少傾向が続いています。2000年代以降、特に顕著に生産量が落ち込み、2013年には1,312トンとこれまでで最も低い水準に達しました。2020年以降は若干の回復が見られるものの、2023年時点で2,160トンと、過去のピーク時と比べ大幅に縮小しています。このデータは、イタリアの農業経済や食文化の変化とも関連が深いと言えます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,160
-1.82% ↓
2022年 2,200
-2.22% ↓
2021年 2,250
9.22% ↑
2020年 2,060
-10.04% ↓
2019年 2,290
1.78% ↑
2018年 2,250
26.83% ↑
2017年 1,774
9.78% ↑
2016年 1,616
-10.64% ↓
2015年 1,808
36.79% ↑
2014年 1,322
0.76% ↑
2013年 1,312
-37.13% ↓
2012年 2,087
10.83% ↑
2011年 1,883
-10.46% ↓
2010年 2,103
-10.7% ↓
2009年 2,355
-0.72% ↓
2008年 2,372
6.51% ↑
2007年 2,227
-12.29% ↓
2006年 2,539
-14.28% ↓
2005年 2,962
-14.96% ↓
2004年 3,483
-0.34% ↓
2003年 3,495
-21.71% ↓
2002年 4,464
8.88% ↑
2001年 4,100
11.2% ↑
2000年 3,687
-4.11% ↓
1999年 3,845
10.2% ↑
1998年 3,489
-17.36% ↓
1997年 4,222
7.59% ↑
1996年 3,924
-1.73% ↓
1995年 3,993
-3.46% ↓
1994年 4,136
-0.24% ↓
1993年 4,146 -
1992年 4,146
-2.22% ↓
1991年 4,240
6.75% ↑
1990年 3,972
5.89% ↑
1989年 3,751
0.43% ↑
1988年 3,735
12.47% ↑
1987年 3,321
-3.96% ↓
1986年 3,458
-2.48% ↓
1985年 3,546
-3.56% ↓
1984年 3,677
-8.05% ↓
1983年 3,999
-1.74% ↓
1982年 4,070
-11.96% ↓
1981年 4,623
-9.53% ↓
1980年 5,110
0.16% ↑
1979年 5,102
3.72% ↑
1978年 4,919
-1.3% ↓
1977年 4,984
62.61% ↑
1976年 3,065
17.88% ↑
1975年 2,600 -
1974年 2,600
-10.34% ↓
1973年 2,900
-8.23% ↓
1972年 3,160
-7.58% ↓
1971年 3,419
-7.59% ↓
1970年 3,700
-4.37% ↓
1969年 3,869
7.47% ↑
1968年 3,600
2.86% ↑
1967年 3,500 -
1966年 3,500
9.38% ↑
1965年 3,200
-8.57% ↓
1964年 3,500
-10.26% ↓
1963年 3,900
-7.14% ↓
1962年 4,200 -
1961年 4,200 -

イタリアのヤギ肉生産量は、1960年代初頭では年間4,200トン程度で安定していましたが、その後の数十年を通じて概して減少傾向が見られます。この減少は1970年代から顕著になり、1980年代後半には年間3,500トン前後に落ち着きました。1990年代には一部で増加局面が見られたものの、2000年代に入ると再び減少軌道に入り、特に2010年代では生産量が1,000トン台にまで落ち込む時期もありました。2023年には2,160トンといまだ低水準で推移しています。

イタリア国内でのヤギ肉生産量の減少要因にはいくつかの背景があります。まず、大きな要因として消費者の嗜好の変化が挙げられます。ヤギ肉はかつて地方の伝統的な食文化や貴重なタンパク源として重視されていましたが、経済発展に伴い、豚肉や鶏肉、牛肉といった他の種類の肉類が広く利用されるようになることで、需要が縮小しました。特に都市部では、ヤギ肉の料理が日常的ではなくなったことが影響を与えています。また、冷戦終結後の経済事情の変化やグローバル化の影響で、食材の生産と貿易が多様化し、ヤギ肉が特定地域に限定される食品のひとつとして見られる傾向が高まりました。

さらに、ヤギの放牧に適した土地の減少も大きな課題です。都市化と人口密度の増加、また農地利用の転換が進行したことで、ヤギの飼育に必要な環境が減少していると考えられます。また、生産者の高齢化と後継者不足も、ヤギ肉生産業が持続可能性を維持する上での重要な障壁となっています。

地政学的な観点から見ると、イタリアを含む地中海地域全体では、近年の気候変動が農業生産に大きな影響を与えています。干ばつや異常気象の増加に伴い、ヤギの飼育環境が劣化し、飼育コストが上昇したことが一因です。また、新型コロナウイルス感染症による市場や物流の混乱は、多くの農業セクターに影響を与え、ヤギ肉生産も例外ではありませんでした。

イタリアのヤギ肉生産の現状は、他国との比較においても参考になる点があります。例えばアメリカやインドは大規模なヤギ肉生産国であり、近年では生産効率化のために技術導入を進めています。一方で、フランスやイギリスなどの比較的規模の小さい生産国では、ヤギ肉市場を高付加価値な食材としてターゲティングする傾向があります。

イタリアにおいても、将来的にヤギ肉生産を持続可能にするためには、いくつかの課題解決が求められます。そのひとつは、地域特産としてのヤギ肉のブランディング強化です。特に地方特有のレシピや高品質な製品として国内外にPRすることが消費者の関心を集める鍵となるでしょう。さらには、政府や関連団体が農業従事者への支援を強化し、後継者育成を目的としたプログラムの充実を図ることも重要です。

また、技術的な改善も大きな可能性を秘めています。例えば、効率的な飼育技術の導入やヤギ飼育環境の気候変動への適応が挙げられます。さらに、農業廃棄物を活用する循環型モデルの導入など、持続可能な生産体制の構築が求められています。

結論として、イタリアのヤギ肉生産は過去数十年で著しく減少し、今なおその影響が続いていますが、現状を改善するための手段は数多く存在します。特に需要の再構築と消費の促進、加えて気候変動への適応が緊急課題といえます。政府や地元自治体、さらには国際機関が協力し、包括的な対策を講じることで、イタリアのヤギ肉生産が再び活気を取り戻す可能性を秘めています。