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イタリアのオート麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、イタリアのオート麦生産量は1960年代から2023年にかけて大きな変動を見せています。1961年の生産量は約584,800トンであったのに対し、2023年には231,430トンと著しく減少しています。特に1980年代以降、全体的な減少傾向が顕著であり、ここ30年間では約20万トン台後半から30万トン程度の水準に落ち着いています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 231,430
-6.9% ↓
2022年 248,590
3.78% ↑
2021年 239,530
-3.81% ↓
2020年 249,030
1.93% ↑
2019年 244,310
-2.16% ↓
2018年 249,700
9.02% ↑
2017年 229,041
-12.18% ↓
2016年 260,798
-0.22% ↓
2015年 261,366
8.47% ↑
2014年 240,960
-2.41% ↓
2013年 246,916
-15.54% ↓
2012年 292,357
-1.59% ↓
2011年 297,078
2.84% ↑
2010年 288,880
-8.32% ↓
2009年 315,100
-11.59% ↓
2008年 356,404
-1.31% ↓
2007年 361,147
-8.55% ↓
2006年 394,923
-7.98% ↓
2005年 429,153
27.08% ↑
2004年 337,694
10.2% ↑
2003年 306,424
-6.79% ↓
2002年 328,759
6.02% ↑
2001年 310,100
-2.56% ↓
2000年 318,241
-3.88% ↓
1999年 331,100
-12.32% ↓
1998年 377,613
21.53% ↑
1997年 310,706
-11.17% ↓
1996年 349,765
16.08% ↑
1995年 301,322
-15.04% ↓
1994年 354,660
-4.72% ↓
1993年 372,215
11.74% ↑
1992年 333,112
-7.32% ↓
1991年 359,440
20.46% ↑
1990年 298,400
0.98% ↑
1989年 295,500
-22.66% ↓
1988年 382,100
5.73% ↑
1987年 361,400
-9.04% ↓
1986年 397,300
9.51% ↑
1985年 362,800
-15.53% ↓
1984年 429,500
37.4% ↑
1983年 312,600
-12.26% ↓
1982年 356,300
-14.66% ↓
1981年 417,500
-7.14% ↓
1980年 449,600
4.12% ↑
1979年 431,800
-6.33% ↓
1978年 461,000
32.97% ↑
1977年 346,700
-14.65% ↓
1976年 406,200
-18.74% ↓
1975年 499,900
9.58% ↑
1974年 456,200
10.76% ↑
1973年 411,900
-6.28% ↓
1972年 439,500
-9.96% ↓
1971年 488,100
0.47% ↑
1970年 485,800
-1.08% ↓
1969年 491,100
25.99% ↑
1968年 389,800
-29.88% ↓
1967年 555,900
16.61% ↑
1966年 476,700
-9.6% ↓
1965年 527,300
13.25% ↑
1964年 465,600
-15.02% ↓
1963年 547,900
-8.26% ↓
1962年 597,200
2.12% ↑
1961年 584,800 -

イタリアにおけるオート麦の生産量推移を見ると、最初のデータが記録された1961年からおおむね1970年代後半までは年間40万~50万トン近い生産量を維持していました。この時期はまだオート麦の需要が比較的高かった背景があります。しかし、1980年代以降、生産量は徐々に減少し、21世紀に入るころには30万トンを下回る年が増加しました。この減少傾向は、農業政策の変化、他の穀物市場へのシフト、そしてオート麦の国内需要低下が影響していると分析されます。

特筆すべきは、2010年代以降、特に2013年以降の生産量が減少のピークを迎えている点です。例えば、2013年には246,916トンを記録し、以降2023年の231,430トンに至るまで低迷が続いています。この背景には、イタリア国内におけるオート麦の消費習慣が減少したこと、またオート麦の輸入が増加したことが挙げられます。他の主要生産国であるロシアやカナダがリーズナブルな価格で輸出を行っていることも、国際市場での競争力低下に影響しています。

一方で、気候変動による農作物全般への影響も無視できません。イタリアは近年、干ばつや高温など、穀物栽培にとって厳しい条件を経験する頻度が増加しています。特にオート麦は耐干ばつ性に強くないため、このような環境変化は生産量の減少に直結しています。地政学的リスクとしては、エネルギー価格や肥料価格の上昇が農産物生産コストに影響を与えており、これはイタリアの生産者にとってさらなる負担となっています。

また、イタリアの農業政策が欧州連合(EU)の共通農業政策(CAP)に依存していることも一因です。CAPの支援配分比率がシフトし、より競争力のある作物や有機農業分野への投資が優先される傾向があります。これにより、オート麦のような比較的収益性の低い作物が後回しとなる状況が続いています。

未来への提言として、第一に、イタリアは持続可能な農業技術の振興や、オート麦の栽培効率を高める研究を推進することが重要です。例えば、耐乾性の高い品種の開発や、灌漑システムの改善が考えられます。第二に、オート麦の消費拡大を目指し、国内市場での需要喚起が必要です。消費者教育やマーケティング活動を通じて、健康食品としてのオート麦の認知度を高める戦略も有効です。第三に、輸出市場の拡大を視野に入れるべきです。特にアジア諸国では、オート麦を利用した加工食品や健康食品が需要を拡大しており、この潜在的市場に向けた貿易戦略を練るべきです。

結論として、イタリアのオート麦生産量の減少を放置すると、国内農業全体の収益性低下だけでなく、地域経済への悪影響も免れません。温暖化や地政学的状況に柔軟に対応しつつ、新たな技術導入や市場戦略を立てることで、オート麦生産の再活性化を図るべきです。また、EUおよび国際農業機関と連携を深め、イタリアの農業が持続可能で競争力のある形態を維持できるよう取り組む必要があります。