FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、エルサルバドルのヤギ肉生産量は1960年代から長期的な変動を示しており、2023年には76トンの生産量が記録されました。1961年の69トンという数字に対して安定的な増加傾向を見せた時期もあったものの、近年は減少傾向に転じています。特に2002年以降、変動幅が大きく、その背景には天候不順や農業政策の課題があると考えられています。
エルサルバドルのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 76 |
-4.66% ↓
|
2022年 | 80 |
-0.16% ↓
|
2021年 | 80 |
-0.56% ↓
|
2020年 | 81 |
-1.85% ↓
|
2019年 | 82 |
-2.8% ↓
|
2018年 | 85 |
-1.15% ↓
|
2017年 | 86 |
-1.21% ↓
|
2016年 | 87 |
-1.04% ↓
|
2015年 | 87 |
-2.1% ↓
|
2014年 | 89 |
-2.34% ↓
|
2013年 | 92 |
1.67% ↑
|
2012年 | 90 |
1.69% ↑
|
2011年 | 89 |
0.85% ↑
|
2010年 | 88 | - |
2009年 | 88 |
-0.85% ↓
|
2008年 | 89 | - |
2007年 | 89 |
1.72% ↑
|
2006年 | 87 | - |
2005年 | 87 | - |
2004年 | 87 |
41.46% ↑
|
2003年 | 62 | - |
2002年 | 62 |
-18% ↓
|
2001年 | 75 |
-7.41% ↓
|
2000年 | 81 |
-5.26% ↓
|
1999年 | 86 |
-5% ↓
|
1998年 | 90 | - |
1997年 | 90 | - |
1996年 | 90 | - |
1995年 | 90 | - |
1994年 | 90 |
0.84% ↑
|
1993年 | 89 |
0.85% ↑
|
1992年 | 89 |
0.85% ↑
|
1991年 | 88 |
0.17% ↑
|
1990年 | 88 |
0.69% ↑
|
1989年 | 87 |
0.69% ↑
|
1988年 | 86 | - |
1987年 | 86 |
0.7% ↑
|
1986年 | 86 |
0.7% ↑
|
1985年 | 85 |
0.71% ↑
|
1984年 | 85 |
0.71% ↑
|
1983年 | 84 |
1.82% ↑
|
1982年 | 83 | - |
1981年 | 83 | - |
1980年 | 83 |
10% ↑
|
1979年 | 75 | - |
1978年 | 75 | - |
1977年 | 75 |
25% ↑
|
1976年 | 60 | - |
1975年 | 60 |
2.56% ↑
|
1974年 | 59 | - |
1973年 | 59 |
2.63% ↑
|
1972年 | 57 | - |
1971年 | 57 |
1.33% ↑
|
1970年 | 56 | - |
1969年 | 56 |
-3.85% ↓
|
1968年 | 59 |
-7.14% ↓
|
1967年 | 63 | - |
1966年 | 63 |
-6.67% ↓
|
1965年 | 68 | - |
1964年 | 68 | - |
1963年 | 68 |
-2.17% ↓
|
1962年 | 69 | - |
1961年 | 69 | - |
エルサルバドルのヤギ肉生産量は、FAOの統計によると1960年代から徐々に増加し、1980年代後半には90トン台に到達しました。この期間は、エルサルバドルにおいて家畜生産の需要が高まり、ヤギ肉が食生活の一部として重要視されるようになったことが背景にあります。その後、1999年から2002年にかけては急激に減少し、62トンから再び増加する傾向を見せました。しかしながら、2015年以降、再び生産量が少しずつ減少し、2023年には76トンに落ち込んでいます。
この生産量の推移には、複数の要因が関与しています。一つの大きな課題として気候変動の影響が挙げられます。エルサルバドルは熱帯地域特有の干ばつや豪雨に頻繁に見舞われる国であり、このような条件は飼料生産量や牧草地の質にストレスを与えています。また、国内の農村部では、農機具や設備の不足が家畜業全体の効率を下げています。このような背景がヤギ肉生産の持続可能性に悪影響を与えていると推測されます。
さらに、経済や地政学的リスクの面でも影響を受けています。エルサルバドルは国内に比較的大きな所得格差を抱えており、農村部の小規模農家が市場での競争や資源確保において不利な立場にあります。また、この地域は頻発する自然災害によりインフラが整いにくい傾向にあり、適切な農業技術や支援が行き渡り難い状況が続いています。一方で、他国、特にアメリカやメキシコといった近隣地域との家畜市場における競争も強まっており、これが地元生産量を制約する要因とも考えられます。
近年の減少傾向を改善するためには、複数の取り組みが必要です。第一に、小規模農家の技能向上を支援するための教育プログラムや技術トレーニングの実施が求められます。例えば、干ばつ耐性の高い飼料作物の導入や、安定して家畜を育成できるような飼育技術の普及が効果的です。第二に、気候変動による影響を軽減するための対策として、農業インフラの整備と災害対策計画の強化が必要です。特に灌漑システムの改善や家畜用資源の確保を支援する取り組みは、ヤギ肉生産の持続性の確保に重要な役割を果たします。
加えて、国内外の市場連携を強化し、小規模生産者が収益を得られる流通網の整備も検討すべきです。地域での協同組合の形成や輸送インフラの整備が進めば、農家がより安定した価格でヤギ肉を販売できるようになります。また、エルサルバドル政府や国際機関は、持続可能な畜産業の構築を支援するために金融支援や公共政策の改善を行うべきです。
結論として、エルサルバドルのヤギ肉生産量には長期的に見て増減を繰り返す傾向がありますが、その背後には気候条件や地政学的リスク、小規模農業の構造的課題が影響を与えています。持続可能な生産体制を構築するためには、国内の農業政策の推進だけでなく、国際協力や地域間のパートナーシップ強化が不可欠です。これにより、エルサルバドルのヤギ肉生産は成長の新たな道を見出すことができるでしょう。