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エルサルバドルのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年の最新データによると、エルサルバドルのコーヒー豆の生産量は1960年代から1970年代後半にかけて増加していたものの、1980年代以降には減少傾向が見られるようになりました。特に2000年代初頭から2010年代にかけて、大幅な減少が顕著です。2022年の生産量は30,653トンで、ピークだった1979年の生産量に比べると約6分の1に減少しています。このデータは、気候変動や疫病、経済的な要因がこの減少に関与していることを示唆しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 32,326
5.46% ↑
2022年 30,653
-26.86% ↓
2021年 41,911
19.75% ↑
2020年 35,000
4.04% ↑
2019年 33,641
-26.32% ↓
2018年 45,660
10.98% ↑
2017年 41,141
6.48% ↑
2016年 38,636
8.28% ↑
2015年 35,682
-14.97% ↓
2014年 41,965
27.69% ↑
2013年 32,864
-63.28% ↓
2012年 89,489
9.01% ↑
2011年 82,095
-27.11% ↓
2010年 112,636
47.06% ↑
2009年 76,591
-21.63% ↓
2008年 97,727
1.42% ↑
2007年 96,355
12.89% ↑
2006年 85,350
-2.97% ↓
2005年 87,963
5.87% ↑
2004年 83,088
2.38% ↑
2003年 81,157
-11.32% ↓
2002年 91,513
-18.44% ↓
2001年 112,201
-1.65% ↓
2000年 114,087
-29.04% ↓
1999年 160,782
37.17% ↑
1998年 117,214
-5.65% ↓
1997年 124,239
-16.54% ↓
1996年 148,859
6.7% ↑
1995年 139,513
-0.73% ↓
1994年 140,534
-0.03% ↓
1993年 140,576
-20% ↓
1992年 175,720
17.58% ↑
1991年 149,450
1.53% ↑
1990年 147,200
20.75% ↑
1989年 121,900
1.34% ↑
1988年 120,290
-18.66% ↓
1987年 147,890
7.02% ↑
1986年 138,184
-7.14% ↓
1985年 148,810
-9.18% ↓
1984年 163,852
6.01% ↑
1983年 154,560
-11.49% ↓
1982年 174,616
-2.99% ↓
1981年 180,000
-2.3% ↓
1980年 184,230
-0.75% ↓
1979年 185,625
17.12% ↑
1978年 158,490
7.48% ↑
1977年 147,465
6.33% ↑
1976年 138,690
-14.08% ↓
1975年 161,415
1.24% ↑
1974年 159,436
26.04% ↑
1973年 126,500
-14.22% ↓
1972年 147,476
1.97% ↑
1971年 144,624
11.69% ↑
1970年 129,490
-10.06% ↓
1969年 143,980
16.3% ↑
1968年 123,800
-14.5% ↓
1967年 144,800
17.63% ↑
1966年 123,100
12.73% ↑
1965年 109,200
-11.29% ↓
1964年 123,100
0.33% ↑
1963年 122,700
24.82% ↑
1962年 98,300
-19.76% ↓
1961年 122,500 -

エルサルバドルのコーヒー生産量は、長期的な推移を見ると重要な変遷を遂げてきました。1960年代から1970年代にかけて、生産量はおおむね安定して増加しており、1979年に185,625トンというピークを迎えました。しかし、その後、1980年代にはやや減少傾向に転じ、1990年代以降はさらに大きな変動を見せるようになりました。この大幅な減少の背景には、複数の要因が影響しています。

まず、気候変動の影響が挙げられます。コーヒー豆の栽培には特定の気象条件が求められますが、気温の上昇や降水量の変動などの気候変動が、エルサルバドルのコーヒー農業に深刻な影響を及ぼしました。特に2000年代以降、気候変動が引き金となって発生した病害虫問題が、生産量の急激な減少に直結しています。例えば、2013年の生産量はわずか32,864トンまで落ち込みましたが、これは「さび病」と呼ばれる葉の病害が猛威を振るったことが一因です。

さらに、経済的および社会的要因も無視できません。エルサルバドルでは内戦などの地政学的なリスクが1980年代から1990年代半ばにかけて続き、長期的な農業投資が難しくなりました。この混乱期にコーヒー農家は適切な管理作業を行えず、多くの農園が放棄されたり、収穫量を維持するための資源が不足する事態に直面しました。また、国際市場の価格の変動も問題です。特に2000年代には、コーヒー価格の低迷が続き、エルサルバドルのコーヒー生産者の収益が圧迫されました。その結果、農業から別の収入源へ移行する農民も多く見られるようになりました。

競合他国との比較を行うと、エルサルバドルは他のコーヒー生産国と大きな格差がついています。例えば、ブラジルやコロンビアなどの大規模な生産国は、持続可能な栽培方法や農業技術の導入を進め、生産量を安定化させています。一方でエルサルバドルは、そのような技術革新の機会が限られていたこともあり、相対的に競争力を低下させました。

今後の課題としては、エルサルバドル政府や国際組織による農業支援策が重要になります。気候変動に対応するためには、気温上昇に強いコーヒー品種の研究と普及が必要です。また、病害虫への耐性を持つ栽培方法や農薬の適切な使用も肝要です。さらに、若年層の農業離れを防ぐため、小規模農家が利益を上げられる仕組みの提示、例えばフェアトレードの促進や輸出市場の多様化が効果的です。

また、国際市場においてエルサルバドル産コーヒーは高品質で知られています。この強みを生かして、生産量の不足を少量高価値路線に転換することも一つの方法です。例えば、ブルーマウンテンなどと並ぶプレミアム市場向けブランドを確立し、その販売網を拡充させることで、収益性を改善することが可能です。

最後に、複数の地域や国際協力機関が連携して支援を行う枠組みを築くことも重要です。特に近年は気候変動の影響が顕著であるため、災害リスクを監視し、早期警戒システムの構築に取り組む必要性が高まっています。

結論として、エルサルバドルのコーヒー生産にとって、生産構造の転換と技術革新は避けられない課題です。しかし、適切な対策を講じれば、ナショナルプレミアムブランドの創出や輸出市場の多様化を通じて、依然として農業収入を安定化させる可能性があります。この取り組みを支える国際的な協力が今後さらに期待されます。