Skip to main content

エルサルバドルの米生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、エルサルバドルの米の生産量は1960年代から2022年にかけて大きな変動を見せています。1960年代には増加傾向を示したものの、1970年代以降は減少と回復を繰り返して推移しており、近年では2021年の19,146トン、2022年の23,000トンと比較的低い水準にとどまっています。特に近代の生産量は全体的に減少傾向にあることが特徴です。

年度 生産量(トン)
2022年 23,000
2021年 19,146
2020年 23,497
2019年 27,603
2018年 22,764
2017年 29,616
2016年 27,617
2015年 38,782
2014年 41,838
2013年 36,254
2012年 28,325
2011年 25,589
2010年 34,479
2009年 40,188
2008年 35,218
2007年 31,540
2006年 31,011
2005年 25,984
2004年 26,519
2003年 22,515
2002年 29,098
2001年 37,720
2000年 47,204
1999年 57,364
1998年 51,377
1997年 66,055
1996年 55,292
1995年 51,106
1994年 64,639
1993年 74,474
1992年 71,962
1991年 61,438
1990年 61,691
1989年 63,719
1988年 57,270
1987年 42,069
1986年 46,938
1985年 68,890
1984年 63,337
1983年 43,240
1982年 35,420
1981年 50,130
1980年 60,720
1979年 58,245
1978年 50,807
1977年 32,800
1976年 35,701
1975年 60,720
1974年 32,094
1973年 37,237
1972年 35,632
1971年 54,846
1970年 44,231
1969年 35,682
1968年 79,616
1967年 77,847
1966年 50,427
1965年 34,875
1964年 33,077
1963年 20,637
1962年 25,634
1961年 17,882

エルサルバドルの米の生産量データは、同国における農業生産の変遷を理解する上で重要な指標です。この国は熱帯性気候の影響を受けつつも、地理的条件と資源の制約から米の大規模生産に適した環境を持っていないため、地域特異的な経済や農業の挑戦がその基盤に存在します。

1960年代、エルサルバドルの米の生産量は一定の成長を遂げました。特に1966年から1968年の期間では急激な増加を記録し、79,616トンというピークに達しました。しかしながらその後、生産量は劇的に変動を繰り返します。たとえば、1970年代には年間生産量が30,000トンから60,000トンの間で大きく上下しており、安定した生産体制を構築できていない状況が見受けられます。この変動の背景には、政治的不安定さ、地政学的リスク、内戦、およびインフラ設備の不十分さが挙げられます。

1990年代には再び生産量が持ち直し、特に1992年の71,962トンは注目すべきポイントと言えます。この回復の要因には、戦後復興の進展やそれに伴う農業政策の導入が寄与したと考えられます。しかし、その後2000年代に入り、米の生産量は再び低迷し、2003年には22,515トンと最低水準を記録しました。その後の回復は一時的なもので、2021年以降は毎年20,000トン前後の低い数値にとどまっています。

米の生産量の停滞または減少の背後にはいくつかの要因が存在すると考えられます。地政学的課題として、同国は隣国との領土問題や国内治安の悪化が地域農業に悪影響を与えています。また、近年の気候変動は異常気象を頻発し、洪水や干ばつといった自然災害が米の安定生産を妨げている可能性が高いです。この点においては、中米の他の国々(ホンジュラスやニカラグアなど)にも共通する課題ですが、エルサルバドルは特に脆弱性が高い状況です。

さらに、エルサルバドルは肥沃な農地よりもコーヒーなどの輸出向け作物が優先される傾向が強く、国内消費向けの食料農産物である米の生産量が相対的に低下していることも見逃せません。また、農業に従事する労働力が都市部へ流出する傾向も、長期的な生産量の減少に寄与していると考えられます。

こうした問題を克服するためには、まず気候変動への適応策を講じることが重要です。たとえば、耐乾性や耐洪水性を持つ米の品種を導入し、気象の影響を軽減する取り組みが挙げられます。また、農業インフラへの投資拡大、灌漑設備の整備、ならびに水資源管理の強化が必要不可欠です。加えて、国際協力の枠組みを利用し、隣国との農業技術の共有や共同支援プログラムを検討することもエルサルバドルにとって有益です。

さらに、国内市場の需要を安定的に満たすための食料自給政策を見直す必要があります。例えば、関税や補助金を通じて米生産者を支援し、国内での生産意欲を高めるとともに、労働者の農村回帰を促すような策が必要です。アメリカやアジア諸国では、農業技術の革新と保護政策が米の生産量向上に寄与しているため、これらの事例を参考にすることも検討価値があります。

結論として、エルサルバドルの米生産量の推移は、歴史的背景や地政学的課題、気候リスク、経済優先順位の変化が複雑に絡み合った現象です。今後、同国は持続可能な農業基盤の構築に向けた長期的な戦略を練る必要があります。そのためには、国際社会や近隣諸国との連携を強化し、技術の普及や気候対策を推進することが急務です。この努力が実を結べば、エルサルバドルの食料安全保障と持続可能な発展に大きく貢献するでしょう。