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エルサルバドルの牛飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、エルサルバドルの牛飼養数は、1960年代から次第に増加しましたが、1980年代初頭には減少に転じ、その後は波動を伴いながら推移しています。2000年代には再び増加傾向を見せましたが、2013年以降再度大幅な減少が続き、2018年には約74万頭と過去最低値を記録しました。その後2020年以降はやや回復し、2022年には約78万6千頭に達していますが、長期的な低迷の兆候がみられます。

年度 飼養数(頭)
2022年 786,292
2021年 790,983
2020年 754,172
2019年 699,086
2018年 740,287
2017年 885,564
2016年 941,703
2015年 1,020,791
2014年 1,042,000
2013年 893,308
2012年 1,123,433
2011年 1,015,140
2010年 1,247,422
2009年 1,342,510
2008年 1,397,400
2007年 1,370,000
2006年 1,319,419
2005年 1,256,517
2004年 1,259,209
2003年 1,248,710
2002年 1,300,891
2001年 1,216,300
2000年 1,050,000
1999年 1,141,489
1998年 1,037,718
1997年 1,162,100
1996年 1,286,600
1995年 1,125,000
1994年 1,261,500
1993年 1,196,900
1992年 1,256,500
1991年 1,242,900
1990年 1,219,700
1989年 1,176,200
1988年 1,144,100
1987年 1,088,300
1986年 1,050,400
1985年 979,990
1984年 928,700
1983年 936,800
1982年 964,000
1981年 1,105,700
1980年 1,210,660
1979年 1,386,782
1978年 1,350,000
1977年 1,282,700
1976年 1,108,800
1975年 1,030,600
1974年 1,038,190
1973年 1,007,674
1972年 1,150,000
1971年 1,100,000
1970年 1,241,000
1969年 1,229,000
1968年 1,217,000
1967年 1,205,000
1966年 1,193,000
1965年 1,181,000
1964年 1,169,000
1963年 1,158,000
1962年 1,146,000
1961年 1,135,000

エルサルバドルの牛飼養数推移データは、農業生産および畜産業の動向を読み解く上で重要な指標となっています。データによれば、1961年から1970年にかけての牛飼養数は安定した年次増加を見せており、当時の農業インフラや政策の安定性が背景にあったと考えられます。しかし、1970年代以降は、地政学的要因や国内の経済的・政治的な課題が影響し、急激な増減を伴う変動がみられるようになりました。

特に1980年代には、市民戦争がエルサルバドル全土に深刻な影響を与え、農地の荒廃や畜産業の減衰が顕著でした。この時期、飼養数が約93万頭付近まで落ち込み、国家的な不安定性が畜産業に与える影響が如実に表れています。その後、和平プロセスが進展するにつれ飼養数は回復傾向を見せ、2007年には137万頭と目立った増加を記録しました。

しかしながら、2013年以降、牛飼養数は再び減少傾向に転じ、2018年にはこの期間内で最低の約74万頭となりました。この大幅な減少には気候変動や干ばつといった気象条件の悪化、地域の農業構造の変化、さらには農地利用のシフトが一因であると考えられます。この地域では気候変動の影響も顕著となっており、牛の飼料供給に大きな制約が生じている可能性があります。また、都市化が進む中で農地が縮小し、家族経営型農場が離農を余儀なくされるケースも多いと報告されています。

牛飼養数の減少は、エルサルバドルの食料安全保障や輸出産業にも影響を及ぼします。牛は肉やミルクの供給源としてだけでなく、地域経済にとっても重要な役割を果たしています。他国、特に農業大国であるアメリカやブラジルに比べると、エルサルバドルの牛生産量は劣るため、国際競争力の強化が重要な課題です。

未来への課題としては、畜産業の持続可能性を確保するための政策設計が挙げられます。短期的には、干ばつに対する耐性の高い飼料作物の普及や灌漑システムの拡充が重要です。また、中長期的には、農業従事者への教育プログラムや技術支援を行うことで、効率性を高める必要があります。さらに、気候変動に対応した適応策として、より環境に負荷の小さい畜産システムの構築が求められます。

地域内協力の強化も鍵です。周辺国との情報共有や共同研究を通じて、地域全体の農業インフラを改善する視点が必要です。また、干ばつや疫病への備えとして、国際的な援助機関と連携した早期警戒システムの導入も検討すべきです。

エルサルバドルの牛飼養業は、その長い歴史とともに幾重もの課題に直面してきましたが、こうした試練を乗り越え新たなモデルを構築することで、持続可能な農業の実現と地域経済の活性化が期待されます。