国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エルサルバドルの羊肉生産量は1961年の12トンから2023年の38トンに増加しました。この62年間における生産量の増加率は3倍以上と比較的緩やかな伸びを示しています。近年では、2016年以降安定的な傾向が見られ、2020年以降は38トンで横ばいの状態が続いています。
エルサルバドルの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 38 |
-1.46% ↓
|
2022年 | 38 |
1.05% ↑
|
2021年 | 38 |
1.04% ↑
|
2020年 | 38 |
1.24% ↑
|
2019年 | 37 |
0.95% ↑
|
2018年 | 37 |
0.88% ↑
|
2017年 | 36 |
0.8% ↑
|
2016年 | 36 |
0.7% ↑
|
2015年 | 36 |
-0.25% ↓
|
2014年 | 36 | - |
2013年 | 36 |
2.13% ↑
|
2012年 | 35 |
2.17% ↑
|
2011年 | 35 |
2.22% ↑
|
2010年 | 34 | - |
2009年 | 34 |
2.27% ↑
|
2008年 | 33 | - |
2007年 | 33 |
2.33% ↑
|
2006年 | 32 |
2.38% ↑
|
2005年 | 32 | - |
2004年 | 32 | - |
2003年 | 32 | - |
2002年 | 32 | - |
2001年 | 32 | - |
2000年 | 32 |
-4.55% ↓
|
1999年 | 33 | - |
1998年 | 33 |
4.76% ↑
|
1997年 | 32 |
-4.55% ↓
|
1996年 | 33 | - |
1995年 | 33 |
4.76% ↑
|
1994年 | 32 |
-1.87% ↓
|
1993年 | 32 |
4.39% ↑
|
1992年 | 31 |
2.5% ↑
|
1991年 | 30 |
2.04% ↑
|
1990年 | 29 |
1.03% ↑
|
1989年 | 29 |
2.11% ↑
|
1988年 | 29 |
2.7% ↑
|
1987年 | 28 |
2.78% ↑
|
1986年 | 27 | - |
1985年 | 27 | - |
1984年 | 27 |
5.88% ↑
|
1983年 | 26 |
6.25% ↑
|
1982年 | 24 | - |
1981年 | 24 |
3.23% ↑
|
1980年 | 23 | - |
1979年 | 23 |
3.33% ↑
|
1978年 | 23 | - |
1977年 | 23 |
7.14% ↑
|
1976年 | 21 |
7.69% ↑
|
1975年 | 20 |
4% ↑
|
1974年 | 19 | - |
1973年 | 19 |
4.17% ↑
|
1972年 | 18 | - |
1971年 | 18 |
4.35% ↑
|
1970年 | 17 | - |
1969年 | 17 |
4.55% ↑
|
1968年 | 17 | - |
1967年 | 17 |
10% ↑
|
1966年 | 15 | - |
1965年 | 15 |
11.11% ↑
|
1964年 | 14 | - |
1963年 | 14 |
12.5% ↑
|
1962年 | 12 | - |
1961年 | 12 | - |
エルサルバドルの羊肉生産量の推移を見ると、1961年から初期段階では低水準から徐々に増加し、特に1970年代から1980年代の間で生産成長が一定の傾向を見せました。しかし、1990年代以降の増加ペースは緩やかになり、ここ数十年は安定期に入りつつある様子が明確です。
1961年に12トンから始まった生産量は、1980年代には倍以上に伸び、29トンへ達しています。この時期は、農村部の畜産業が国内需要を満たすために成長を求められたことが背景にあります。一方、1990年代以降はその他の地域の大規模生産国(例えば、オーストラリアや中国など)との競争が影響し、エルサルバドル内の生産がより安定した範囲に留まっています。この安定傾向は、国内における羊肉の消費量が限られていることや、輸出を念頭に置いた生産体制が大々的に進められなかったことが理由の一部と考えられます。
地政学的な背景も、この分野に影響を与えている要素の一つです。エルサルバドルは小規模な国であり、農業資源が限られています。そのため、羊肉生産も小規模かつ地域密着型の産業として維持されてきました。このような状況は、近隣諸国や中央アメリカエリアの畜産事情に大きな影響を受け、自然災害や経済動向の影響を直に受けやすいという特性を持っています。
新型コロナウイルスのパンデミックや気候変動による干ばつなども、間接的に羊肉生産に影響を及ぼす要因と言えます。特にパンデミック時期には物流網の制約が発生し、一時的に労働力や輸送が不足したケースも考えられます。ただし、この間に大幅な減産がみられなかったことは、エルサルバドルの羊肉生産が非常に小規模かつ国内志向であることに起因していると言えるでしょう。
こうした現状に対し、エルサルバドルが羊肉生産の将来的な発展を目指すには、いくつかの課題が挙げられます。まず、持続可能な農業技術の導入を進めることが鍵となります。土地や水資源の利用効率を向上させることで、現状の生産能力を超える可能性があります。また、地域間協力の強化を通じて、羊肉や関連製品の輸出市場を開拓することも経済成長に貢献する手段となるでしょう。他方で、地元市場での消費促進策、例えば羊肉の栄養価や調理法に関する情報普及も、生産量増加を下支えする重要な要素と考えられます。
さらに、気候変動の影響に対応した政策の実施が必要です。干ばつや異常気象に対応するための灌漑システムや牧草地管理プログラムの導入は、生産の安定性に直接的な利益をもたらします。同時に、地域紛争や経済不安が畜産産業に及ぼすリスクを軽減するため、国際的な支援と協力関係の枠組みを強化する必要があります。
以上を踏まえ結論として、エルサルバドルの羊肉生産量は今後も安定しつつ緩やかな増加傾向を維持する可能性があります。しかし、地政学的リスクや自然災害からの影響を軽減し、競争力を高めるためには、持続可能な技術の採用や地域市場の活性化に注力するべきです。具体的には、効率的な資源利用技術の導入、消費喚起策の展開、そして国際取引の拡大が重要と考えられます。これらの対策が進むことで、エルサルバドルの羊肉生産が国内外で十分な役割を果たす産業へと発展する可能性があると見られます。