Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、エルサルバドルのトマト生産量は、1961年から2022年にかけて起伏のある推移を見せています。特に1985年や1995年、2008年には大きなピークが観察されましたが、それ以外の年には生産量が急激に減少または安定しない状況が続いています。近年、2020年以降は一定程度の生産回復が見られる一方で、2022年にはやや低下しました。
エルサルバドルのトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 21,854 |
2021年 | 23,017 |
2020年 | 23,359 |
2019年 | 21,861 |
2018年 | 19,915 |
2017年 | 22,018 |
2016年 | 18,114 |
2015年 | 14,652 |
2014年 | 13,964 |
2013年 | 14,527 |
2012年 | 18,627 |
2011年 | 21,592 |
2010年 | 17,663 |
2009年 | 17,663 |
2008年 | 44,436 |
2007年 | 40,032 |
2006年 | 35,886 |
2005年 | 29,415 |
2004年 | 25,417 |
2003年 | 22,824 |
2002年 | 21,500 |
2001年 | 20,248 |
2000年 | 21,352 |
1999年 | 29,808 |
1998年 | 36,050 |
1997年 | 29,663 |
1996年 | 25,682 |
1995年 | 43,777 |
1994年 | 18,909 |
1993年 | 17,500 |
1992年 | 16,000 |
1991年 | 15,500 |
1990年 | 24,610 |
1989年 | 24,279 |
1988年 | 26,220 |
1987年 | 28,566 |
1986年 | 28,336 |
1985年 | 29,808 |
1984年 | 26,910 |
1983年 | 26,146 |
1982年 | 22,080 |
1981年 | 21,896 |
1980年 | 21,068 |
1979年 | 17,690 |
1978年 | 19,886 |
1977年 | 11,454 |
1976年 | 11,680 |
1975年 | 19,085 |
1974年 | 19,000 |
1973年 | 18,500 |
1972年 | 18,000 |
1971年 | 17,500 |
1970年 | 17,200 |
1969年 | 18,500 |
1968年 | 15,900 |
1967年 | 15,800 |
1966年 | 14,200 |
1965年 | 12,700 |
1964年 | 13,000 |
1963年 | 12,400 |
1962年 | 12,000 |
1961年 | 11,300 |
1961年から2022年までのエルサルバドルのトマト生産量データを分析すると、いくつかの重要な特徴と課題が見えてきます。このデータは、国際連合食糧農業機関(FAO)が収集した国内生産の統計であり、国の農業経済の動向を示す重要な指標となっています。
まず、1960年代はトマト生産が比較的低水準で推移しており、生産量は1万トンから1.5万トン程度に留まっていました。その後、1970年代後半から1980年代にかけては大きな伸びを示し、特に1983年から1985年にかけて生産が顕著に増加しました。この時期の伸びは、農地の拡大や技術導入、政策の後押しが背景にあったと考えられます。しかし、1991年の大幅な生産減少(約1万5500トンまで低下)は、想定される外的要因、例えば天候不順や経済、政治的不安定の影響が疑われます。
特筆すべきは1990年代半ばの1995年に記録された4万3777トンという高い生産量です。この年の増加要因としては、農業政策の改善や輸出市場の開拓が考えられます。しかしながら、その後再び減少に転じ、安定的な生産が難しい状況が続きました。2006年から2008年にかけての生産量の伸びも注目すべきですが、2009年には再び生産量がほぼ半減しました。
近年、年間2万2000トン前後での推移が続いているものの、持続可能な成長には至っていません。2020年以降の相対的な回復傾向はポジティブな兆しではありますが、2022年には再びわずかに減少しており、この不安定さが引き続き課題として浮上しています。
エルサルバドルのトマト生産量の不安定さは、気候変動や農業技術の未熟さ、十分な社会基盤設備の欠如、または市場価格の低迷といった要因と関連していると考えられます。特に気候変動による天候不順や災害の増加が、農作物の生産に影響を及ぼしている可能性は高く、持続可能な農業の実現にはこれらへの対策が必要です。
さらに、エルサルバドルの農業全般における投資や研究開発の不足も顕著です。他国と比較すると、日本やアメリカ、韓国などでは、トマト栽培の効率化を目指した高精度の灌漑技術や温室栽培が広く普及しています。これに対し、エルサルバドルでは依然として従来型の農法に頼る部分が大きい現状です。この差を埋めるためには、技術移転や国際協力を通じた農業インフラの強化が求められます。
また、政治的・社会的な背景も重要です。エルサルバドルは過去に地域紛争や社会不安を経験しており、これが長期的な生産基盤の脆弱化に繋がった可能性があります。地域の安定化や政策の継続性、そして農業従事者への支援強化が不可欠です。
結論として、エルサルバドルがトマト生産を持続的に拡大するためには、技術革新の推進、気候変動への適応策の強化、市場価格の安定化を目指した輸出戦略の見直しが挙げられます。また、地域間の協力を深め、共同でインフラ整備や災害対策を進めることも重要です。このような具体的な取り組みによって、エルサルバドルの農業セクター全体が持続可能な発展に向けた基盤を築くことができるでしょう。