国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エルサルバドルのサツマイモの生産量は、1961年のわずか220トンから2022年には750トンまで増加しました。特に2000年代以降生産量は右肩上がり傾向を示し、2018年には760トンと過去最高を記録しました。ただし、2020年以降は微減または横ばいの傾向が見られます。このデータは、エルサルバドルにおけるサツマイモ生産が経年的に発展していることを示す一方で、最近の停滞や環境・経済的課題の可能性を示唆しています。
エルサルバドルのサツマイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 764 |
1.8% ↑
|
2022年 | 750 |
-0.33% ↓
|
2021年 | 753 |
0.18% ↑
|
2020年 | 751 |
0.63% ↑
|
2019年 | 747 |
-1.79% ↓
|
2018年 | 760 |
1.74% ↑
|
2017年 | 747 |
2.01% ↑
|
2016年 | 732 |
1.66% ↑
|
2015年 | 720 |
-1.49% ↓
|
2014年 | 731 |
4.47% ↑
|
2013年 | 700 | - |
2012年 | 700 |
5.31% ↑
|
2011年 | 665 |
2.22% ↑
|
2010年 | 650 |
2.24% ↑
|
2009年 | 636 |
2.28% ↑
|
2008年 | 622 |
8.15% ↑
|
2007年 | 575 |
-3.88% ↓
|
2006年 | 598 |
0.81% ↑
|
2005年 | 593 |
2.67% ↑
|
2004年 | 578 |
1.66% ↑
|
2003年 | 569 |
1.73% ↑
|
2002年 | 559 |
2.02% ↑
|
2001年 | 548 |
-0.03% ↓
|
2000年 | 548 |
4.3% ↑
|
1999年 | 525 |
-4.47% ↓
|
1998年 | 550 |
57.14% ↑
|
1997年 | 350 |
-26.81% ↓
|
1996年 | 478 |
-4.36% ↓
|
1995年 | 500 |
2.04% ↑
|
1994年 | 490 |
2.08% ↑
|
1993年 | 480 |
4.35% ↑
|
1992年 | 460 |
3.32% ↑
|
1991年 | 445 |
-1.06% ↓
|
1990年 | 450 |
-2.17% ↓
|
1989年 | 460 |
27.78% ↑
|
1988年 | 360 |
2.86% ↑
|
1987年 | 350 |
2.94% ↑
|
1986年 | 340 |
3.03% ↑
|
1985年 | 330 |
3.13% ↑
|
1984年 | 320 |
3.23% ↑
|
1983年 | 310 |
3.33% ↑
|
1982年 | 300 | - |
1981年 | 300 | - |
1980年 | 300 | - |
1979年 | 300 | - |
1978年 | 300 |
-9.37% ↓
|
1977年 | 331 |
10.33% ↑
|
1976年 | 300 | - |
1975年 | 300 |
3.45% ↑
|
1974年 | 290 |
3.57% ↑
|
1973年 | 280 |
3.7% ↑
|
1972年 | 270 | - |
1971年 | 270 |
3.85% ↑
|
1970年 | 260 | - |
1969年 | 260 |
4% ↑
|
1968年 | 250 | - |
1967年 | 250 |
4.17% ↑
|
1966年 | 240 | - |
1965年 | 240 |
4.35% ↑
|
1964年 | 230 | - |
1963年 | 230 |
4.55% ↑
|
1962年 | 220 | - |
1961年 | 220 | - |
エルサルバドルにおけるサツマイモの生産量データは、同国の農業における歴史的な変遷や近年の推移を示しています。1960年代には年間220~260トンと小規模な生産に留まっていました。この時期、農業そのものが小規模家族経営が中心であり、インフラや技術の不足が収量を制約していたと考えられます。1970年代後半から1980年代にかけては、国内情勢が不安定であったものの、年300トン前後と横ばい状態が続きました。
1990年代以降、農業技術の改善や市場アクセスの拡大に伴い、生産量は急速に拡大し、1998年には初めて550トンに到達しました。この期間には、病害対策や収穫効率の向上が重要な役割を果たしました。しかし、1999年から2007年の間には年単位でばらつきのある生産量となり、その背景にはエルニーニョ現象や地域的な干ばつが影響していたと考えられます。同様に、2000年代後半にかけては気候変動による影響も拡大し、伝統的な農作物生産に困難が生じました。
一方、2008年以降、再び一貫した増加傾向が見られ、2018年には760トンという史上最高値を記録しました。この増加は、国外向けの需要の高まりや、政府による農業支援政策が背景にあると指摘されています。この時期、エルサルバドルは市場多角化を進め、中国やアメリカなどの輸出市場でのニーズを捉えました。サツマイモは甘味と栄養価の高さから健康志向の消費者に好まれており、特に輸出向け作物としての重要性が増しています。
しかし2020年以降、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる経済停滞や物流の混乱が生産と流通を一時的に不安定にしました。それでも2021年以降は年750トン前後で安定的な生産量が確保されていますが、明確な成長傾向が再び見られるには至っていません。この停滞の背景には、気候変動の影響や農業インフラの限界も考えられます。
エルサルバドルのサツマイモ生産における今後の課題としては、まず気候変動への適応策が挙げられます。例えば、耐暑性や干ばつ耐性のある品種の開発や導入が不可欠です。また、農業従事者への教育普及プログラムを強化することで、収穫技術の向上と効率化を目指すことが期待されます。さらに、国際市場での競争力を強化するためには、輸送ネットワークの整備や製品の付加価値化も重要です。加工品としての輸出を視野に入れ、例えばサツマイモのフレークやチップスの製造を産業化することで、新たな需要を創出できる可能性があります。
地政学的リスクに触れると、エルサルバドルは中南米地域の中でも安定した生産を維持しているものの、隣国との貿易関係や地元の社会構造の変化に影響されやすい状況です。特に環境負荷の増大や地域的な市場の競争激化は将来的にリスクとなる可能性があります。
結論として、エルサルバドルのサツマイモ生産量は過去60年間でおおむね上昇を続け、同国にとっての重要な作物となっています。一方で、気候変動や地域的リスクといった課題に直面しており、これを克服するためには持続可能な農業政策や技術革新を推進することが急務です。今後、国内外の需要を踏まえた戦略的な農業開発が期待されます。