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エルサルバドルのカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エルサルバドルのカシューナッツ生産量は1961年から1960年代後半にかけて1,500~1,700トンと安定していましたが、1970年代後半以降は徐々に増加基調を示しました。ピークは1996年で、3,846トンを記録しましたが、その後、特に2000年代後半から急激な減少に転じ、2017年には586トンまで落ち込みました。近年は回復の兆しを見せ、2023年時点で1,282トンの生産量を記録しています。この変動には、気候、経済、地政学的要因など複数の要因が影響しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,282
26.47% ↑
2022年 1,013
-4.04% ↓
2021年 1,056 -
2020年 1,056
13.3% ↑
2019年 932
19.03% ↑
2018年 783
33.63% ↑
2017年 586
-38.06% ↓
2016年 946
17.66% ↑
2015年 804
-27.76% ↓
2014年 1,113
-22.45% ↓
2013年 1,435
-13.08% ↓
2012年 1,651
-11.77% ↓
2011年 1,871
-9.22% ↓
2010年 2,061
-8.17% ↓
2009年 2,245
-7.31% ↓
2008年 2,422
-10.3% ↓
2007年 2,700
5.9% ↑
2006年 2,550
-0.29% ↓
2005年 2,557
-0.12% ↓
2004年 2,560
-0.77% ↓
2003年 2,580
0.68% ↑
2002年 2,563
-1.43% ↓
2001年 2,600
2.77% ↑
2000年 2,530 -
1999年 2,530
-3.51% ↓
1998年 2,622 -
1997年 2,622
-31.83% ↓
1996年 3,846
28.2% ↑
1995年 3,000
7.14% ↑
1994年 2,800 -
1993年 2,800
16.67% ↑
1992年 2,400
20% ↑
1991年 2,000
-4.67% ↓
1990年 2,098
3.66% ↑
1989年 2,024
8.93% ↑
1988年 1,858
-1.95% ↓
1987年 1,895
-14.18% ↓
1986年 2,208
2.13% ↑
1985年 2,162
-1.5% ↓
1984年 2,195
-1.39% ↓
1983年 2,226
0.82% ↑
1982年 2,208 -
1981年 2,208 -
1980年 2,208 -
1979年 2,208
8.13% ↑
1978年 2,042
19.98% ↑
1977年 1,702 -
1976年 1,702 -
1975年 1,702
-8% ↓
1974年 1,850
2.78% ↑
1973年 1,800
2.86% ↑
1972年 1,750 -
1971年 1,750
2.94% ↑
1970年 1,700 -
1969年 1,700
3.03% ↑
1968年 1,650 -
1967年 1,650
3.13% ↑
1966年 1,600 -
1965年 1,600
3.23% ↑
1964年 1,550 -
1963年 1,550
3.33% ↑
1962年 1,500 -
1961年 1,500 -

エルサルバドルはカシューナッツの生産において、長期的変動を特徴とするトレンドを描いています。1960年代から1970年代前半にかけて安定的な生産量を維持していましたが、1978年以降は政府の農業政策の変化や技術的な進歩なども相まって、徐々に生産量が増加しました。この動きは、地域の農業におけるカシューナッツの重要性が示されており、1990年代には2,000~3,000トン台の生産が続きました。しかし、1997年以降、生産量の大幅な変動が生じ、2000年代には低迷が顕著になりました。

この生産量の波動にはいくつかの要因が関係しています。まず、気候変動の影響が挙げられます。エルサルバドルは熱帯気候に位置しており、カシューナッツ栽培には適切な環境を有していますが、近年の気温上昇や降雨パターンの変化が生産に深刻な影響を及ぼしています。特に、洪水や干ばつなどの自然災害が頻発しており、農業全般における不安定要因となっています。例えば、2010年以降に顕著な生産量の減少が見られる背景には、エルニーニョ現象に関連した干ばつや局地的な水不足が挙げられます。これにより、農地の収穫効率が著しく低下しました。

次に地政学的背景も重要な要素です。エルサルバドルは長年、内戦や政治的不安定が続いており、これが農業政策の実施や土壌改良、輸出促進体制の整備を阻害してきました。また、主要輸出先市場の競争激化や価格低下も生産減少の一因と考えられます。特に、安価な生産コストで知られるアジアの国々(例:中国やインドなど)と比べると、エルサルバドルの農業競争力には課題を抱えています。

一方で、近年の回復基調は注目に値します。2019年以降、政府や民間セクターによる持続可能な農業プログラムが開始され、灌漑設備や気候対応型の農法が導入されました。2023年に記録された1,282トンという生産量はまだピーク時とは程遠いものの、適切な施策が奏功している兆しと言えるでしょう。

今後の課題として、まず気候変動への適応策が挙げられます。政府は農家への技術支援をさらに拡充し、気候変動に強いカシューナッツ品種の開発を進めるべきです。また、先進的な灌漑技術の導入や土壌保全対策も重要です。他国、特にアメリカ、ドイツ、フランスなどの先進国では、既にこれらの技術が広く普及しており、エルサルバドルもこれらの知見を積極的に取り入れることが求められます。

さらに、地政学的リスクへの対応として、国内の治安改善や農業政策の安定性向上が必要です。内戦後の社会的課題として依然として残る治安の問題を解決し、小規模農家が安心して生産に従事できる環境を整えることが先決です。また、国際市場にアクセスするための物流インフラの整備や輸出促進の仕組みづくりも重要です。特に、日本や欧米諸国への高品質カシューナッツの輸出は、収益性向上の鍵を握る分野です。

結論として、エルサルバドルのカシューナッツ生産量の推移は、気候変動、地政学的リスク、農業政策の変化など、複数の要因が複雑に絡み合う結果として現在の状態に至っています。この課題を克服し、安定的な生産と輸出を実現するためには、持続可能な農業の取り組みを強化し、国際協力を通じて技術導入や市場拡大の推進を図る必要があります。エルサルバドルにおけるカシューナッツ産業の未来は、これらの具体的な施策の実行にかかっています。

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