FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、エルサルバドルのキャベツ生産量は1961年の200トンから2022年の688トンまで推移しており、長期的には緩やかな増加傾向が見られます。ただし、期間中には極端な増減が確認されました。特に1978年から1984年にかけての急増や、2009年から2011年にかけての著しい減少が特徴的です。近年の生産量は比較的安定していますが、気候変動や社会経済的要因の影響が課題として浮上しています。
エルサルバドルのキャベツ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 688 |
2021年 | 684 |
2020年 | 677 |
2019年 | 701 |
2018年 | 674 |
2017年 | 657 |
2016年 | 772 |
2015年 | 512 |
2014年 | 688 |
2013年 | 1,116 |
2012年 | 776 |
2011年 | 144 |
2010年 | 431 |
2009年 | 431 |
2008年 | 973 |
2007年 | 877 |
2006年 | 674 |
2005年 | 695 |
2004年 | 826 |
2003年 | 806 |
2002年 | 693 |
2001年 | 674 |
2000年 | 676 |
1999年 | 678 |
1998年 | 680 |
1997年 | 682 |
1996年 | 685 |
1995年 | 687 |
1994年 | 689 |
1993年 | 691 |
1992年 | 693 |
1991年 | 695 |
1990年 | 792 |
1989年 | 800 |
1988年 | 800 |
1987年 | 800 |
1986年 | 800 |
1985年 | 800 |
1984年 | 800 |
1983年 | 750 |
1982年 | 700 |
1981年 | 650 |
1980年 | 650 |
1979年 | 650 |
1978年 | 629 |
1977年 | 360 |
1976年 | 331 |
1975年 | 325 |
1974年 | 320 |
1973年 | 320 |
1972年 | 310 |
1971年 | 310 |
1970年 | 300 |
1969年 | 300 |
1968年 | 290 |
1967年 | 290 |
1966年 | 280 |
1965年 | 240 |
1964年 | 240 |
1963年 | 240 |
1962年 | 200 |
1961年 | 200 |
1961年以降のデータは、エルサルバドルのキャベツ生産における変動の歴史を明確に示しています。この国におけるキャベツ栽培は農業政策、気候、紛争といった地政学的要因に大きく影響されてきました。1961年から1976年まで、キャベツの生産量は漸増し、特に1977年の360トンから1978年の629トン、さらに1979年の650トンに至るまで大きく拡大しました。この急増は、おそらく農業技術の導入や国内市場の需要拡大に由来するものと考えられます。
1980年代前半から中盤にかけては、エルサルバドル内戦(1980年から1992年)と重なりながらも生産量は安定的で、800トン前後を維持しました。しかし、内戦終結後の1990年代には生産量が急激に減少し、1990年には792トンだったものが2000年までに676トンまで下がりました。この背景として、内戦の余波による農業インフラの破壊や農村地域の人口流出が指摘されています。
2000年代前半には再び上昇傾向が見られましたが、2009年には431トンと劇的に低下しています。この時期は、世界的な経済危機、食料価格の変動、あるいはエルニーニョ現象等の気候変動が影響を与えた可能性があります。特に2011年には144トンという非常に低い数値で、これは国際的にも異常とみなすべきレベルです。しかしその後、急速に回復し2013年には1,116トンで過去最大の生産量を記録しました。
2015年以降、生産は前年比で増減を繰り返していますが、2020年以降は600トン台を維持しています。この安定は、気候回復や比較的穏やかな経済状況、ならびに農業政策の改善によるものと考えられます。しかし、2022年時点の688トンは、まだ過去の最高水準には届いていません。
エルサルバドルのキャベツ生産にはいくつかの課題も見られます。第一に気候変動が生産量に与える影響は深刻です。この国は熱帯地域に位置しているため、干ばつや洪水といった極端な気象現象にさらされやすく、農業にとってリスクとなっています。第二に、地域衝突や社会的不安定がインフラ整備や輸送効率の低下を招く恐れがあります。第三に、国内市場の需要が限られているため、輸出のための物流や貿易体制の整備が課題となっています。
こうした課題に対して、いくつかの具体的な対策が提案されます。一つ目は、灌漑設備や耐乾性作物の導入による気候変動への適応です。これにより、干ばつや洪水が収穫に与える影響を軽減できます。二つ目は、農業技術研修の強化や農薬使用の適切な指導など、生産性向上に向けた技術支援の拡大です。三つ目として、地元市場を超えた国際市場へのアクセスを促進するために、自由貿易協定の活用や輸出インフラの整備も重要です。また、地政学的リスクを軽減するために、公共の安全対策の強化や農業保険制度の充実も検討すべきです。
重要なのは、これらの問題に対して持続可能な方法で取り組むことです。エルサルバドルのキャベツ生産の歴史は、多くの困難を乗り越えてきた農業セクターの持久力を示しています。今後も、国際的な支援や地域協力を活用しながら、より強固で持続可能な食料生産体制を確立することが期待されます。このようにして、エルサルバドルは、国民の食料安全保障だけでなく、周辺地域への貢献も果たすことができるでしょう。