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フィリピンの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、フィリピンの牛乳生産量は1961年の8,000トンから2023年の29,973トンに増加しました。この間、生産量は大きな変動を経験しつつも、長期的には徐々に上昇しています。特に近年では、2020年以降急激な増加が見られ、30,000トンを超える水準に達しています。一方で、2023年には前年比減少が見られ、課題も浮き彫りになっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 29,973
-3.9% ↓
2022年 31,188
15.13% ↑
2021年 27,089
-1.53% ↓
2020年 27,511
9.56% ↑
2019年 25,111
2.91% ↑
2018年 24,401
4.09% ↑
2017年 23,443
7.56% ↑
2016年 21,795
3.78% ↑
2015年 21,002
3.35% ↑
2014年 20,322
1.02% ↑
2013年 20,116
5.87% ↑
2012年 19,000
12.1% ↑
2011年 16,949
3.72% ↑
2010年 16,341
9.85% ↑
2009年 14,876
4.58% ↑
2008年 14,224
3.06% ↑
2007年 13,802
4.77% ↑
2006年 13,174
3.65% ↑
2005年 12,710
6.83% ↑
2004年 11,897
2.67% ↑
2003年 11,588
2.28% ↑
2002年 11,330
1.85% ↑
2001年 11,124
5.78% ↑
2000年 10,516
6.76% ↑
1999年 9,850
6.6% ↑
1998年 9,240
-9.59% ↓
1997年 10,220
-11.13% ↓
1996年 11,500
-5.04% ↓
1995年 12,110
0.08% ↑
1994年 12,100
-3.2% ↓
1993年 12,500
-18.94% ↓
1992年 15,420
-18.37% ↓
1991年 18,890
-1.56% ↓
1990年 19,190
27.93% ↑
1989年 15,000 -
1988年 15,000 -
1987年 15,000 -
1986年 15,000 -
1985年 15,000 -
1984年 15,000 -
1983年 15,000
3.45% ↑
1982年 14,500
3.57% ↑
1981年 14,000
7.69% ↑
1980年 13,000
-13.33% ↓
1979年 15,000
-1.65% ↓
1978年 15,251
12.09% ↑
1977年 13,606
2.56% ↑
1976年 13,267
0.67% ↑
1975年 13,179
-13.15% ↓
1974年 15,174
18.84% ↑
1973年 12,768
-4.55% ↓
1972年 13,377
7.02% ↑
1971年 12,500
4.17% ↑
1970年 12,000
4.35% ↑
1969年 11,500
-11.54% ↓
1968年 13,000
4% ↑
1967年 12,500
-3.85% ↓
1966年 13,000
3.64% ↑
1965年 12,544
12.8% ↑
1964年 11,121
11.21% ↑
1963年 10,000
11.11% ↑
1962年 9,000
12.5% ↑
1961年 8,000 -

フィリピンの牛乳生産量データを見ると、1960年代から1970年代にかけては緩やかな増加と不安定な変動が特徴的でした。この時期、農業技術やインフラが制限されていたこと、また一部の農業地域での災害や地域情勢の影響が要因となっていると考えられます。その後、1980年代以降は概ね15,000トンを維持する水準に留まりましたが、1990年代に入ると急激な減少が見られ、一時は10,000トンを下回る水準にまで落ち込みました。この背景には、フィリピンの急速な都市化や農業政策の変化、輸入乳製品の競争激化が大きく影響していると思われます。

2000年代以降は再び成長軌道に乗り、特に2010年代末から2020年代の初頭にかけて顕著な伸びを示しています。この成長は、フィリピン政府による農業振興政策や、乳牛の品種改良、酪農業の効率化が進んだことが挙げられます。また、急成長する国内人口に伴う牛乳需要の増加も一因と考えられます。特に2020年以降の急上昇は、新型コロナウイルスのパンデミックにより健康志向が高まった結果、乳製品の需要が増えたことが影響した可能性があります。しかしながら、2023年には前年より約1,200トンの減少が見られました。この減少は一時的なものである可能性が高いですが、持続可能な成長を維持するためには特定の課題の解決が必要です。

フィリピンは熱帯地域に属し、気候や地形の制約により大規模な酪農業に適した地域が限られています。また、輸入乳製品の価格競争力が高く、これが国内酪農業の発展を抑える要因となることがあります。そのため、生乳など国内生産品の加工・販売の効率化や付加価値の向上が求められています。他の国と比較すると、日本の牛乳生産は2023年でも700万トンを超え、中国は3,000万トン以上、アメリカに至っては1億トンを超えています。この差は、主に生産規模、技術、農家への投資の違いによるものです。

フィリピンが今後、牛乳生産でさらなる成長を目指す際には、いくつかの具体的な方策が考えられます。まず、酪農農家への技術研修や支援プログラムを拡充し、乳牛の飼育効率を向上させることが必要です。さらに、乳牛の健康管理を徹底し、飼料の質を改善することで、生産量の安定と品質向上を図ることができます。また、地方の酪農地域を結ぶ輸送インフラの整備が製品の流通を促進し、競争力を高めます。さらには、ローカルブランドの育成やマーケティング戦略の強化による国内市場での需要喚起も重要です。

地政学的にも、フィリピンは東南アジアの中心に位置しており、地域協力の枠組みを活用して近隣諸国との技術交流や市場参入を進めることができます。一方で、台風や洪水など自然災害のリスクが高い地域であるため、災害時の生産及び供給網の維持に向けた回復力の強化も不可欠といえます。特に、近年の気候変動の影響を軽減するための適応策として、耐性の高い乳牛品種の導入や酪農施設の気候対応型設計も進めることが課題となっています。

結論として、フィリピンの牛乳生産は歴史的に多くの課題を経験してきたものの、近年の成長速度は非常に期待できるものです。持続可能な方法で生産を増やすためには、政府、農家、そして消費者の協力が重要です。国際機関との連携を深め、技術支援や融資プログラムを活用することで、フィリピンの酪農業が地域と世界で成功を収める可能性が広がるでしょう。