国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、2023年におけるフィリピンのキュウリ類の生産量は14,742トンに達し、過去最低記録の4,872トン(1990年)から見れば約3倍の増加を示しています。このデータは、キュウリ類の生産が長期間にわたり漸進的に伸び続けていることを示しており、特に2000年代における持続的な向上が目立ちます。ただし、1977年から1980年代にかけては一時的な低迷があり、1990年には大きな落ち込みが見られました。1980年代以降の数十年間には、フィリピン国内の農業構造や経済状況の影響を受けながらも、生産量の回復と増加が進行してきたことがうかがえます。
フィリピンのキュウリ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 14,742 |
4.78% ↑
|
2022年 | 14,070 |
0.33% ↑
|
2021年 | 14,023 |
3.58% ↑
|
2020年 | 13,538 |
-0.66% ↓
|
2019年 | 13,628 |
1.37% ↑
|
2018年 | 13,444 |
1.16% ↑
|
2017年 | 13,290 |
1.12% ↑
|
2016年 | 13,143 |
1.84% ↑
|
2015年 | 12,905 |
0.81% ↑
|
2014年 | 12,802 |
2.09% ↑
|
2013年 | 12,540 |
6.34% ↑
|
2012年 | 11,792 |
1.31% ↑
|
2011年 | 11,640 |
1.82% ↑
|
2010年 | 11,432 |
-3.49% ↓
|
2009年 | 11,845 |
3.61% ↑
|
2008年 | 11,432 |
5.14% ↑
|
2007年 | 10,873 |
11.87% ↑
|
2006年 | 9,719 |
5.34% ↑
|
2005年 | 9,226 |
-3.29% ↓
|
2004年 | 9,540 |
4.53% ↑
|
2003年 | 9,127 |
1.47% ↑
|
2002年 | 8,995 |
4.37% ↑
|
2001年 | 8,618 |
-2.57% ↓
|
2000年 | 8,845 |
-4.81% ↓
|
1999年 | 9,292 |
1.83% ↑
|
1998年 | 9,125 |
7.5% ↑
|
1997年 | 8,488 |
-3.15% ↓
|
1996年 | 8,764 |
28.77% ↑
|
1995年 | 6,806 |
-1.94% ↓
|
1994年 | 6,941 |
11.07% ↑
|
1993年 | 6,249 |
-7.65% ↓
|
1992年 | 6,767 |
10.78% ↑
|
1991年 | 6,108 |
25.37% ↑
|
1990年 | 4,872 |
-18.8% ↓
|
1989年 | 6,000 |
3.45% ↑
|
1988年 | 5,800 |
3.57% ↑
|
1987年 | 5,600 | - |
1986年 | 5,600 |
0.36% ↑
|
1985年 | 5,580 |
-3.79% ↓
|
1984年 | 5,800 |
-3.33% ↓
|
1983年 | 6,000 | - |
1982年 | 6,000 |
-1.32% ↓
|
1981年 | 6,080 |
4.86% ↑
|
1980年 | 5,798 |
-1.7% ↓
|
1979年 | 5,898 |
15.11% ↑
|
1978年 | 5,124 |
-11.33% ↓
|
1977年 | 5,779 |
-10.87% ↓
|
1976年 | 6,484 |
1.31% ↑
|
1975年 | 6,400 |
3.23% ↑
|
1974年 | 6,200 |
3.33% ↑
|
1973年 | 6,000 | - |
1972年 | 6,000 | - |
1971年 | 6,000 |
3.45% ↑
|
1970年 | 5,800 | - |
1969年 | 5,800 |
5.45% ↑
|
1968年 | 5,500 | - |
1967年 | 5,500 | - |
1966年 | 5,500 |
3.77% ↑
|
1965年 | 5,300 | - |
1964年 | 5,300 |
6% ↑
|
1963年 | 5,000 | - |
1962年 | 5,000 | - |
1961年 | 5,000 | - |
フィリピンにおけるキュウリ類の生産量の推移を見ると、1960年代からごく穏やかな増加傾向が続いた一方で、1977年以降に急激な低下が見られ、この時期の最低値である5,124トン(1978年)を記録しました。この低下については、台風や洪水といった自然災害の影響、農業に必要なインフラの整備不足、また国外市場からの競争圧力などが複合的に影響したと考えられます。その後、1990年においても再び大きな落ち込みがあり、4,872トンと1961年以降の最小値を記録しました。この時期はフィリピン国内の経済的な混乱や農村地域での社会的不安定が影響した可能性が高いと推察されます。
しかし、1990年代以降には徐々に生産量が持ち直し、1996年には8,764トン、2000年には8,845トンと過去の水準を大きく上回りました。この回復は、政府による農業支援政策の強化や、新しい栽培技術の導入が奏功した結果であると考えられます。また、2000年代後半から2010年代にかけては生産量の成長が加速し、2007年には10,873トン、2023年には14,742トンに到達しました。この成長の背後には、フィリピン国内での食料需要の拡大や、輸出市場の拡充、そして灌漑や作物保護のための技術進化があると分析できます。
一方で、フィリピンのキュウリ類生産が安定して成長しているとはいえ、一部の課題も存在します。特に気候変動の影響により、台風などの自然災害がますます頻発しているため、農業分野における生産リスクが高まっています。さらに、生産者と市場の間に存在する物流網の不備や、中小規模農家の経営基盤の弱さが課題として挙げられます。
これらの背景を踏まえ、将来的にフィリピンのキュウリ類生産量をさらに向上・安定化させるための具体的な対策としては、以下のような取り組みが求められます。第一に、気候変動に対抗するための気候適応型農業技術の普及を進めることが必要です。これには、耐寒性や耐熱性の高い品種の開発や導入が含まれます。第二に、農村部におけるインフラ整備、特に灌漑施設や保存施設の拡充が重要です。これにより、生産性を高め、作物廃棄量を削減できます。第三に、農業従事者に対する教育と訓練プログラムを強化し、効率的かつ持続可能な経営手法を提供することが有益です。
また、フィリピン国内のキュウリ類生産を取り巻く競争環境の変化を考慮する必要もあります。特に日本や韓国、中国など近隣諸国では、先進技術を用いた施設野菜栽培が進んでいるため、これらの国々と連携して技術面や市場の面でのコラボレーションを進めることが成長につながるでしょう。
結論として、フィリピンのキュウリ類生産は直近の数十年間において着実に増加し、現在もその傾向が続いている一方で、自然災害やインフラ不足といった課題も存在します。政府や国際機関、そして民間セクターが協力して先進的な農業政策とインフラ投資を進めることで、地域農業の競争力を強化し、より持続可能な生産体制を構築することが可能です。この取り組みを通じて、フィリピンのキュウリ類生産はさらなる安定化と成長を遂げることが期待されます。