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フィリピンのオレンジ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータに基づくと、フィリピンのオレンジ生産量は1961年から2022年にかけて長期的には減少傾向にあります。1961年の5,100トンから1982年にはピークとなる23,505トンにまで増加しましたが、その後減少を始め、2022年には1,522トンと過去最低の水準に達しています。この変動は、経済、気候変動、農業技術、そして地域的な社会・地政学的要因の影響が複雑に絡み合った結果と考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,486
-2.36% ↓
2022年 1,522
-5.31% ↓
2021年 1,607
-9.86% ↓
2020年 1,783
-15.67% ↓
2019年 2,114
-10.6% ↓
2018年 2,365
-10.22% ↓
2017年 2,634
-7.92% ↓
2016年 2,861
-11.13% ↓
2015年 3,219
-3.19% ↓
2014年 3,325
-5.35% ↓
2013年 3,513
-8.2% ↓
2012年 3,827
-3.94% ↓
2011年 3,984
-8.14% ↓
2010年 4,337
-6.99% ↓
2009年 4,663
-4.25% ↓
2008年 4,870
-5.4% ↓
2007年 5,148
-1.64% ↓
2006年 5,234
-9.67% ↓
2005年 5,794
-7.93% ↓
2004年 6,293
-15.33% ↓
2003年 7,432
-4.77% ↓
2002年 7,804
-5.33% ↓
2001年 8,243
2.77% ↑
2000年 8,021
-2.04% ↓
1999年 8,188
-4.02% ↓
1998年 8,531
-7.93% ↓
1997年 9,266
6.44% ↑
1996年 8,705
5.26% ↑
1995年 8,270
0.15% ↑
1994年 8,258
-1.29% ↓
1993年 8,366
-5.83% ↓
1992年 8,884
-4.86% ↓
1991年 9,338
1.25% ↑
1990年 9,223
-48.76% ↓
1989年 18,000
0.59% ↑
1988年 17,895
10.25% ↑
1987年 16,231
-18.73% ↓
1986年 19,971
7.5% ↑
1985年 18,577
-5.22% ↓
1984年 19,600
-1.17% ↓
1983年 19,832
-15.63% ↓
1982年 23,505
8.45% ↑
1981年 21,673
12.53% ↑
1980年 19,260
4.59% ↑
1979年 18,415
-6.15% ↓
1978年 19,621
3.87% ↑
1977年 18,890
6.81% ↑
1976年 17,686
61.55% ↑
1975年 10,948
-1.09% ↓
1974年 11,069
-17.96% ↓
1973年 13,492
11.27% ↑
1972年 12,126
25.02% ↑
1971年 9,699
-12.91% ↓
1970年 11,137
11.33% ↑
1969年 10,004
5.08% ↑
1968年 9,520
-0.29% ↓
1967年 9,548
8.92% ↑
1966年 8,766
-5.5% ↓
1965年 9,276
38.2% ↑
1964年 6,712
-3.65% ↓
1963年 6,966
2.44% ↑
1962年 6,800
33.33% ↑
1961年 5,100 -

フィリピンのオレンジ生産量の推移を詳しく見ると、複数の転換期があることが分かります。1960年代から1980年代にかけては生産量の概ね増加が見られましたが、1983年を境に減少が始まり、1990年代後半以降は生産量の停滞と急激な落ち込みが続いています。

1960年代から1980年代前半に生産量が拡大していた背景には、農業開発政策、果樹園での投資の拡大、そして国内外の需要増加が要因として考えられます。特に1976年から1982年にかけての一貫した生産量の増加は、フィリピン国内での生産技術の向上によるものと見られます。しかしながら1983年以降、国の経済不安や気候変動の進行による作物の生産条件の変化が大きく影響を及ぼしました。

1990年代から2000年代初頭にかけては、生産量が再び減少し始めました。この期間における世界的な地政学的緊張や経済政策の不透明性が、農業インフラや農民への支援に影響した可能性があります。また、気温上昇や異常気象(特に台風や洪水)は、オレンジの栽培に直接的な悪影響を及ぼしたと考えられます。同じ東アジアの国々、例えば中国や韓国では、農業技術の進歩により一部の作物で生産性が劇的に改善されたのに対し、フィリピンではこの分野での開発が不十分だったと評価されます。

さらに近年は、気候変動に伴う降水パターンの変化や台風被害が頻発し、さらに農地の減少や土壌の劣化も進んでいます。また、若年層の農業離れや都市化の加速により、熟練した農業従事者の不足が深刻となっています。これらの理由によって、2022年には生産量がわずか1,522トンにまで減少し、ほぼ持続可能性の危機に直面しています。

この現状を打破するには、いくつかの方向性が考えられます。第一に、気候変動に対応する農業技術の開発が急務です。たとえば、台風や高温に強い品種の導入は、生産効率を向上させる鍵となります。第二に、農業への投資を増やし、インフラ整備や農民への技術指導を充実させることで、安定した生産基盤を築くことが求められます。さらに、国際機関との連携を深めることで、灌漑設備の向上や持続可能な農業体系の構築を進めるべきです。これには地域間協力の枠組みとして、ASEAN諸国との共同プロジェクトの活用が効果的でしょう。

最後に、地政学的リスクに対する備えも重要です。特に国際市場との貿易や政策安定の確保は、農業分野の復興と密接に関連しています。紛争や資源配分をめぐる問題が農業生産に及ぼす影響を最小限に抑えるためにも、持続可能な農業政策の策定が急務です。

結論として、フィリピンのオレンジ生産量の減少は、単なる統計上の数字以上の意味を持ちます。この推移は、気候変動、経済政策、地域社会の変化が相互に連関し、農業に及ぼす影響の一例を示しています。オレンジ生産の再生には、政府、企業、そして国際社会が連携して総合的なアプローチを採用する必要があります。この対策には時間がかかる可能性がありますが、持続可能な将来のための重要な課題であると言えます。