国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フィリピンの羊肉生産量は1961年から一貫して増加を続け、1973年には117トンに達しました。それ以降、直近の2023年まで実質的に変化がなく、50年以上同水準の生産量を維持しています。このデータは、フィリピンの羊肉生産が非常に安定している一方で、成長や新たな拡大の兆しが見られないことを示しています。
フィリピンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 117 |
-0.02% ↓
|
2022年 | 117 |
-0.01% ↓
|
2021年 | 117 |
-0.01% ↓
|
2020年 | 117 |
-0.01% ↓
|
2019年 | 117 |
-0.01% ↓
|
2018年 | 117 |
-0.02% ↓
|
2017年 | 117 |
-0.01% ↓
|
2016年 | 117 |
-0.1% ↓
|
2015年 | 117 |
-0.08% ↓
|
2014年 | 117 |
-0.09% ↓
|
2013年 | 117 | - |
2012年 | 117 | - |
2011年 | 117 | - |
2010年 | 117 | - |
2009年 | 117 | - |
2008年 | 117 | - |
2007年 | 117 | - |
2006年 | 117 | - |
2005年 | 117 | - |
2004年 | 117 | - |
2003年 | 117 | - |
2002年 | 117 | - |
2001年 | 117 | - |
2000年 | 117 | - |
1999年 | 117 | - |
1998年 | 117 | - |
1997年 | 117 | - |
1996年 | 117 | - |
1995年 | 117 | - |
1994年 | 117 | - |
1993年 | 117 | - |
1992年 | 117 | - |
1991年 | 117 | - |
1990年 | 117 | - |
1989年 | 117 | - |
1988年 | 117 | - |
1987年 | 117 | - |
1986年 | 117 | - |
1985年 | 117 | - |
1984年 | 117 | - |
1983年 | 117 | - |
1982年 | 117 | - |
1981年 | 117 | - |
1980年 | 117 | - |
1979年 | 117 | - |
1978年 | 117 | - |
1977年 | 117 | - |
1976年 | 117 | - |
1975年 | 117 | - |
1974年 | 117 | - |
1973年 | 117 |
3.45% ↑
|
1972年 | 113 |
1.16% ↑
|
1971年 | 112 |
2.38% ↑
|
1970年 | 109 |
3.7% ↑
|
1969年 | 105 |
6.58% ↑
|
1968年 | 99 |
7.04% ↑
|
1967年 | 92 |
1.43% ↑
|
1966年 | 91 |
1.45% ↑
|
1965年 | 90 |
1.47% ↑
|
1964年 | 88 | - |
1963年 | 88 |
1.49% ↑
|
1962年 | 87 |
11.67% ↑
|
1961年 | 78 | - |
フィリピンの1961年から2023年までの羊肉生産量のデータを見ると、初期の段階では生産量にゆるやかな増加傾向がありました。具体的には、1961年の78トンから1973年の117トンまで、12年間で約50%の成長を遂げています。しかし1973年以降、羊肉生産量は横ばい状態となり、2023年まで50年にわたり117トンの水準を維持しています。この長期間にわたる変化の乏しさは、フィリピンにおける羊肉の需要と供給が非常に限られた市場環境にあることを反映している可能性があります。
フィリピンでは歴史的に豚肉や鶏肉が主要な動物性タンパク源とされており、羊肉の消費文化は広く普及していません。また、羊の飼育が農業環境や地理的条件の影響を受けること、さらに市場規模が限定的である点も、生産量がほとんど増加しなかった要因と考えられます。他国と比較すると、中国やインドは羊肉の生産と消費が高く、宗教観や食文化が重要な役割を果たしています。この点で、羊肉の生産が拡大するためには、その国独自の文化や食習慣が重要な要素となることが示唆されます。
これに加え、安定した生産量を維持しているという事実は、フィリピンが国内需要には十分対応している可能性を示していますが、逆に国際市場への輸出拡大の取り組みが見られないことも明らかにしています。たとえば、オセアニア地域(オーストラリアやニュージーランド)は羊肉の大規模な輸出産業を持ち、国際市場での競争力を高めていますが、フィリピンはそれらと比較して生産規模で大きく劣ります。
一方で、地政学的背景としては、フィリピン特有の島嶼(とうしょ)地形が大規模な羊の飼育や輸送を困難にしている可能性があります。さらに、自然災害の多発地域である点も、畜産業全体のリスクとして考慮しなければなりません。たとえば台風や洪水は、地域の農業・畜産への多大な影響を及ぼす可能性があり、これが生産の増加を妨げる要因となっている可能性があります。
未来の課題としては、まず国内での羊肉需要をどのように高めるか、また、そのために羊肉が持つ栄養価や新たな料理の提供方法についての啓発が重要です。同時に、生産量を増加させるための具体的な施策として、小規模農家への支援策や牧養技術の向上が考えられます。さらに、農業分野の持続可能性への対応も求められるでしょう。消費が今後増加する場合に備え、畜産の効率化や環境負荷の低減策を同時に進める必要があります。
また、輸出市場への参入可能性を模索することも一案です。羊肉を求める海外市場(例えば中東や東南アジア近隣諸国)が存在する可能性があります。そのため、輸出向けの標準化された羊肉生産体系の導入が検討されるべきです。
結論として、フィリピンの羊肉生産は長年安定しているものの、成長機会を見出していない状態にあることがわかります。現状を打破するためには、国内市場と世界市場の需要、そして地理的特性を考慮した戦略的なアプローチが不可欠です。農業政策や地域協力の枠組みを活用し、多様な可能性を検討することが求められるでしょう。