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フィリピンの大豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization, FAO)が発表した最新データによると、フィリピンの大豆生産量は1960年代から現在にかけて長期的な減少傾向が確認されています。特に、2021年にはわずか407トンにまで低下し、1961年(約2,070トン)と比較すると約80%の減少を記録しています。1970年代後半から1980年代前半にかけては一時的に生産量が増加しましたが、その後再び減少傾向へ転じています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 616
-1.72% ↓
2022年 626
53.74% ↑
2021年 407
-26.51% ↓
2020年 554
-15.81% ↓
2019年 659
0.12% ↑
2018年 658
-1.27% ↓
2017年 666
22.43% ↑
2016年 544
-0.22% ↓
2015年 545
-21.5% ↓
2014年 695
-13.89% ↓
2013年 807
42.28% ↑
2012年 567
-17.11% ↓
2011年 684
-15.76% ↓
2010年 812
-3.56% ↓
2009年 842
-17.04% ↓
2008年 1,015
50.15% ↑
2007年 676
-35.62% ↓
2006年 1,050
6.28% ↑
2005年 988
1.02% ↑
2004年 978
0.44% ↑
2003年 974
-1.7% ↓
2002年 991
10.42% ↑
2001年 897
-5.88% ↓
2000年 953
-8.45% ↓
1999年 1,041
-0.67% ↓
1998年 1,048
-35.1% ↓
1997年 1,615
-11.19% ↓
1996年 1,818
-39.05% ↓
1995年 2,983
26.38% ↑
1994年 2,361
10.68% ↑
1993年 2,133
17.94% ↑
1992年 1,809
-20.82% ↓
1991年 2,284
-53.74% ↓
1990年 4,937
21.93% ↑
1989年 4,049
-31.78% ↓
1988年 5,935
-11.89% ↓
1987年 6,736
0.99% ↑
1986年 6,670
-19.44% ↓
1985年 8,280
8.69% ↑
1984年 7,618
-6% ↓
1983年 8,104
-29.33% ↓
1982年 11,467
14.02% ↑
1981年 10,057
7.05% ↑
1980年 9,395
16.96% ↑
1979年 8,033
13.16% ↑
1978年 7,099
-12.71% ↓
1977年 8,133
-3.13% ↓
1976年 8,396
48.42% ↑
1975年 5,657
155.51% ↑
1974年 2,214
69.53% ↑
1973年 1,306
15.78% ↑
1972年 1,128
-18.02% ↓
1971年 1,376
15.15% ↑
1970年 1,195 -
1969年 1,195
0.59% ↑
1968年 1,188
-1% ↓
1967年 1,200
8.79% ↑
1966年 1,103
-2.56% ↓
1965年 1,132
-19.43% ↓
1964年 1,405
-5.7% ↓
1963年 1,490
-9.15% ↓
1962年 1,640
-20.77% ↓
1961年 2,070 -

フィリピンの大豆生産は、1960年代の初期には年間2,000トンを超える規模からスタートしました。しかし、同じ10年の終わり頃には1,000トン台に低下し、1970年代には低レベルの安定期に入りました。1975年から1982年にかけては、一時的な増加傾向が見られ、特に1982年には11,467トンと過去最高の生産量を記録しました。この増加は、農業の近代化や政策支援の強化によるものと考えられます。ただし、その後は再び生産が低下し、1990年代以降は1,000トンを下回る年が目立つようになりました。そして2021年には407トンという最低水準に達し、2022年の626トンとなった年も、回復の兆しは限定的と見られます。

この長期的な低下傾向の背後には、いくつかの要因が指摘されています。1つ目は、地政学的背景や国内政策の影響です。フィリピンでは、輸入穀物に依存する傾向が強まり、大豆も例外ではありません。特に、アメリカやブラジルといった大豆の主要輸出国からの輸入品が市場を占有することで、国内生産者は競争力を失い生産縮小を余儀なくされました。2つ目は、気候変動の影響が挙げられます。フィリピンは台風や洪水といった自然災害の被害を受けやすい立地にあり、大豆生産にも大きな影響を与えていると推測されます。3つ目は、農業用地の都市化と他作物への転換です。利益性の低い大豆に比べて、ココナッツや米といった他作物を選択するケースが増えていることが、この減少を加速させています。

将来的には、国内需要の高まりや食料自給率の向上が課題として浮上する可能性があります。フィリピンにおける大豆の主な用途は、豆腐や醤油の生産、および畜産向け飼料です。この需要が依然として高い一方で、自給生産が追いついていない状況は、輸入依存をさらに強めるリスクを伴います。また、新型コロナウイルスの影響で物流の混乱や輸入コストの上昇が懸念され、食糧安全保障の観点からも国内生産の回復が必要とされています。

解決策としては、いくつかの政策提案が考えられます。まず、大豆栽培の効率を高めるための技術支援や資金援助の強化が必要です。具体的には、高収量品種の導入や灌漑設備の充実といった取り組みが挙げられます。また、気候変動対策として、災害に強い農業インフラの整備やリスク管理策が重要です。さらに、国内の大豆生産者を保護し育成するために、価格補助や市場参入支援の実施が望まれます。地域間協力の枠組みを活用して、近隣諸国から先進技術を学ぶことも有効でしょう。

長期的には、フィリピン政府や国際機関が連携し、大豆生産の重要性を再評価し、持続可能な農業政策を策定する必要があります。もし国内生産量の回復が実現されれば、輸入への依存度を減らし、さらに地域経済を強化する道筋が見えてくるでしょう。有効な支援策の具体化と実施が急がれると言えます。