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フィリピンの鶏飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによれば、フィリピンの鶏飼養数は1961年から2022年にわたり顕著な増加傾向を示しています。1961年の約5千万羽から、2022年には約1億8510万羽となり、特に1996年以降は急激な上昇が見られます。一方で、特定の年度には減少も確認され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が見られる2020年から2021年にも一時的な落ち込みが発生しています。

年度 飼養数(羽) 増減率
2023年 191,203,000
3.3% ↑
2022年 185,102,000
4.68% ↑
2021年 176,820,000
-0.81% ↓
2020年 178,265,000
-4.35% ↓
2019年 186,370,000
6.03% ↑
2018年 175,772,000
0.26% ↑
2017年 175,317,000
-1.94% ↓
2016年 178,793,000
1.32% ↑
2015年 176,469,000
5.25% ↑
2014年 167,671,000
2.62% ↑
2013年 163,386,000
-0.49% ↓
2012年 164,192,000
0.85% ↑
2011年 162,813,000
2.41% ↑
2010年 158,984,000
0.2% ↑
2009年 158,663,000
2.85% ↑
2008年 154,272,000
13.74% ↑
2007年 135,640,000
0.97% ↑
2006年 134,332,000
-1.23% ↓
2005年 136,001,000
11.47% ↑
2004年 122,010,000
-4.84% ↓
2003年 128,216,000
1.09% ↑
2002年 126,831,000
9.71% ↑
2001年 115,606,000
0.36% ↑
2000年 115,187,000
1.04% ↑
1999年 114,000,000
-17.2% ↓
1998年 137,675,000
2.01% ↑
1997年 134,963,000
16.57% ↑
1996年 115,782,000
20.34% ↑
1995年 96,216,000
3.34% ↑
1994年 93,110,000
6.83% ↑
1993年 87,158,000
6.91% ↑
1992年 81,525,000
4.2% ↑
1991年 78,240,000
-4.93% ↓
1990年 82,300,000
17.54% ↑
1989年 70,020,000
16.08% ↑
1988年 60,321,000
13.28% ↑
1987年 53,248,000
0.45% ↑
1986年 53,007,000
1.16% ↑
1985年 52,399,000
-11.43% ↓
1984年 59,161,000
-4.97% ↓
1983年 62,255,000
4.25% ↑
1982年 59,718,000
3.45% ↑
1981年 57,724,000
9.41% ↑
1980年 52,761,000
6.98% ↑
1979年 49,320,000
-16.25% ↓
1978年 58,892,000
30.04% ↑
1977年 45,289,000
-0.84% ↓
1976年 45,671,000
-1.78% ↓
1975年 46,500,000
-3.13% ↓
1974年 48,000,000
-3.93% ↓
1973年 49,965,000
-0.28% ↓
1972年 50,103,000
-11.34% ↓
1971年 56,512,000
-0.85% ↓
1970年 56,999,000
-8.84% ↓
1969年 62,528,000
-8.59% ↓
1968年 68,403,000
2.88% ↑
1967年 66,489,000
-2.4% ↓
1966年 68,122,000
19.66% ↑
1965年 56,929,000
10.22% ↑
1964年 51,648,000
6.22% ↑
1963年 48,624,000
-5.32% ↓
1962年 51,354,000
2.74% ↑
1961年 49,984,000 -

フィリピンの鶏飼養数の推移を見ると、1961年の約5千万羽から直近の2022年に至るまで、概ね増加の流れが特徴的です。この動向にはいくつかの要因が関係しています。まず、フィリピンにおける人口増加が鶏肉や鶏卵への需要を押し上げていると考えられます。鶏肉は、同国で主要なたんぱく源として利用される食材であり、特に経済発展が進むにつれ都市部での消費増加が顕著です。

データを詳しく分析すると、1990年代中盤から2000年代にかけて鶏飼養数が急増していることがわかります。この時期、フィリピンは経済成長を経験し、中産階級の増加により食文化が多様化しました。また、技術革新や農業インフラの整備による鶏の育成効率の向上も寄与したと考えられます。1996年以降の加速度的な増加は、飼育の大規模化や近代的畜産技術の導入によるものとされています。

一方で、いくつかの年度では鶏飼養数が減少しているのも事実です。特に1999年、2004年、そして近年では2020年から2021年にかけてその傾向が見られます。この背景には、天候不順、経済的要因、あるいは疫病の発生が影響した可能性が考えられます。具体的に2020年の減少は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による供給網の混乱や需要減少が一因とみられています。パンデミックによるロックダウンや経済活動の停滞が供給チェーンに与えた影響は深刻であり、家畜業界が特に打撃を受けたことがわかります。

また、鶏飼育の増加はメリットだけでなく課題も示唆しています。一つには、鶏の飼育が水資源の利用増加や環境負荷の増大につながる可能性です。集約型畜産業では、土地や水資源の枯渇、農薬使用の増加、廃棄物処理の不備といった問題が見られることがあり、フィリピンにおいても持続可能な発展への取り組みが必要になります。

地政学的観点で見ると、フィリピンは東南アジア諸国の一員として、その鶏肉生産が地域経済で重要な位置を占めています。ASEAN諸国間の貿易協定を活かした輸出拡大が期待される一方で、地域的な疫病リスクや国際市場価格の不安定さが潜在的なリスクとなり得ます。例えば、近隣諸国で発生する高病原性鳥インフルエンザの流行は、鶏肉の輸出入や価格変動に大きな影響を与える可能性があります。

未来への備えとして、まず鶏産業を強化するための政策や技術支援が挙げられます。具体的には、病気の予防と管理を徹底するための検疫技術の向上、持続可能な飼育技術の普及、輸出先多様化のための外交政策強化が効果的です。また、農村部における雇用創出と都市部の需要増加のバランスを保つため、小規模養鶏業者を支援する仕組みも重要でしょう。

結論として、フィリピンの鶏飼養数は長期的な増加傾向にあるものの、疫病リスクや環境負荷といった課題への適切な対応が求められます。持続可能な畜産システムの構築と地域協力の拡大が、この分野におけるさらなる発展の鍵となるでしょう。これにより、国内食料供給の安定化のみならず、地域全体の経済成長への寄与が期待されます。