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フィリピンのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フィリピンのカカオ豆生産量は、1961年の3,200トンから2022年には10,446トンと大幅に増加しました。特に1980年代後半から1990年代初頭にかけて急増した後、長期にわたり停滞していましたが、2014年以降、再び大幅な上昇が見られます。2020年以降は、9,000トンを超える高水準が続いており、世界のカカオ生産において一定の貢献を果たしています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 10,759
3% ↑
2022年 10,446
4.46% ↑
2021年 10,000
7.06% ↑
2020年 9,341
10.04% ↑
2019年 8,489
6.33% ↑
2018年 7,983
13.9% ↑
2017年 7,009
11.92% ↑
2016年 6,263
3.98% ↑
2015年 6,023
10.97% ↑
2014年 5,428
11.31% ↑
2013年 4,876
0.93% ↑
2012年 4,831
-0.51% ↓
2011年 4,856
-3.25% ↓
2010年 5,019
-2.24% ↓
2009年 5,134
-0.29% ↓
2008年 5,149
-1.68% ↓
2007年 5,237
-3.29% ↓
2006年 5,415
-4.65% ↓
2005年 5,679
0.55% ↑
2004年 5,648
-0.79% ↓
2003年 5,693
-1.9% ↓
2002年 5,803
-11.15% ↓
2001年 6,531
-1.46% ↓
2000年 6,628
-13.55% ↓
1999年 7,667
3.79% ↑
1998年 7,387
-5.83% ↓
1997年 7,844
-0.65% ↓
1996年 7,895
-0.4% ↓
1995年 7,927
-0.23% ↓
1994年 7,945
3.09% ↑
1993年 7,707
2.26% ↑
1992年 7,537
-21.36% ↓
1991年 9,584
-2.68% ↓
1990年 9,848
5.17% ↑
1989年 9,364
2.99% ↑
1988年 9,092
2.76% ↑
1987年 8,848
33.21% ↑
1986年 6,642
9.5% ↑
1985年 6,066
25.49% ↑
1984年 4,834
-11.68% ↓
1983年 5,473
2.34% ↑
1982年 5,348
29.65% ↑
1981年 4,125
-0.39% ↓
1980年 4,141
8.2% ↑
1979年 3,827
24.17% ↑
1978年 3,082
4.69% ↑
1977年 2,944
-8% ↓
1976年 3,200
-3.41% ↓
1975年 3,313
-19.2% ↓
1974年 4,100
13.89% ↑
1973年 3,600
2.86% ↑
1972年 3,500
-2.78% ↓
1971年 3,600
-16.28% ↓
1970年 4,300
-2.27% ↓
1969年 4,400
7.32% ↑
1968年 4,100
17.14% ↑
1967年 3,500
-12.5% ↓
1966年 4,000
-0.27% ↓
1965年 4,011
-4.04% ↓
1964年 4,180
19.43% ↑
1963年 3,500
2.94% ↑
1962年 3,400
6.25% ↑
1961年 3,200 -

フィリピンのカカオ豆生産量は過去60年余りで劇的な変化を遂げています。1961年にはわずか3,200トンと控えめな生産量でしたが、1980年代後半には生産量が急上昇しました。この時期の急成長は、地域政策や農業技術の普及、そして国内外のカカオ需要の増加が要因と考えられます。しかし、その後1990年代半ばから2000年代初頭にかけて、7,000~5,000トン台の停滞期を迎えました。この低迷の背景には、インフラの未整備や天候の不安定さ、さらに競争力のある輸入品の増加があったとされています。

2014年以降は上向きの傾向が顕著となり、2022年には10,446トンに到達しました。この復活の背景には、政府によるカカオ産業支援政策や、高品質品種への転換が挙げられます。特に、フィリピン政府は「ゴールデンアグリカルチャープログラム」や地域的な合作業による生産性の向上を進めることで、生産インフラの整備や各農家の収益向上を図りました。

カカオ生産には地域固有の課題も存在します。フィリピンは熱帯気候に位置しており、土壌や降水量の面でカカオ栽培に適している一方、台風や異常気象による深刻な影響を受けやすいというリスクがあります。例えば、台風による農地被害や病害虫の拡大は、収穫量に直接的な悪影響をもたらしました。また、カカオ豆の輸出量より国内消費が優先されることが多く、国際的な市場での競争力は依然として課題とされています。

さらに、近年の気候変動は生産地に新たな問題をもたらしています。カカオ豆は特定の気象条件を必要とするため、気温上昇や降雨分布の変化が供給チェーン全体に影響を与える可能性があります。一方で、コロナ禍以降、グローバルなサプライチェーンの停滞が、フィリピン国内の生産者に輸送や輸出の遅れという形で影響を及ぼしました。

未来への提案としては、地域的な灌漑施設や農業インフラの強化、そして耐病性のある新しいカカオ品種の研究開発などが挙げられます。また、カカオ豆加工品(チョコレートなど)の付加価値産業をフィリピン内で育成し、国内外でのブランド力を高めることで、生産者の利益を拡大することが可能になります。さらに、農家や地域レベルでの教育や協力体制を整え、市場アクセスを向上させることも鍵となるでしょう。

地政学的要因では、東南アジア全体でのカカオ需要の高まりとフィリピンの地理的利点が優位性をもたらしています。しかし、近隣諸国(特にインドネシアやマレーシア)との競争が激化することが予測されています。このため、フィリピンは独自の特色あるオーガニックカカオやフェアトレード製品としての展開を目指すことで競争力を高めるべきです。

全体として、フィリピンのカカオ生産は近年成長を遂げていますが、気候変動や競争激化への対応が必要です。国際機関や地域協力を活用しながら、持続可能な方法での生産拡大を実現することが今後の課題といえるでしょう。これにより、フィリピンが次世代のカカオ生産大国として確固たる地位を確立することが期待されます。