国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、フィリピンの馬飼養数は1970年代まで急激な減少を経験した後、1980年代から持続的に安定し、2000年代以降は徐々に増加傾向を示しています。2022年には251,298頭に達し、記録データでは過去のピーク水準に匹敵する回復を遂げています。この変化は、畜産業や農業のニーズ、社会的・経済的背景と関連しており、政策的対応が重要となっています。
フィリピンの馬飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(頭) | 増減率 |
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2023年 | 251,035 |
-0.1% ↓
|
2022年 | 251,298 |
0.47% ↑
|
2021年 | 250,134 |
0.47% ↑
|
2020年 | 248,970 |
0.4% ↑
|
2019年 | 247,973 |
1.07% ↑
|
2018年 | 245,350 |
0.52% ↑
|
2017年 | 244,074 |
0.23% ↑
|
2016年 | 243,525 |
0.54% ↑
|
2015年 | 242,222 |
0.93% ↑
|
2014年 | 240,000 | - |
2013年 | 240,000 |
-0.83% ↓
|
2012年 | 242,000 |
0.83% ↑
|
2011年 | 240,000 | - |
2010年 | 240,000 | - |
2009年 | 240,000 |
2.13% ↑
|
2008年 | 235,000 |
1.29% ↑
|
2007年 | 232,000 |
0.87% ↑
|
2006年 | 230,000 | - |
2005年 | 230,000 | - |
2004年 | 230,000 | - |
2003年 | 230,000 | - |
2002年 | 230,000 | - |
2001年 | 230,000 | - |
2000年 | 230,000 | - |
1999年 | 230,000 | - |
1998年 | 230,000 | - |
1997年 | 230,000 |
4.55% ↑
|
1996年 | 220,000 | - |
1995年 | 220,000 | - |
1994年 | 220,000 |
4.76% ↑
|
1993年 | 210,000 | - |
1992年 | 210,000 | - |
1991年 | 210,000 |
5% ↑
|
1990年 | 200,000 | - |
1989年 | 200,000 | - |
1988年 | 200,000 |
2.56% ↑
|
1987年 | 195,000 | - |
1986年 | 195,000 |
4.84% ↑
|
1985年 | 186,000 |
-1.59% ↓
|
1984年 | 189,000 |
1.07% ↑
|
1983年 | 187,000 |
-3.61% ↓
|
1982年 | 194,000 |
-8.49% ↓
|
1981年 | 212,000 |
-15.2% ↓
|
1980年 | 250,000 |
13.12% ↑
|
1979年 | 221,000 |
-3.49% ↓
|
1978年 | 229,000 |
10.63% ↑
|
1977年 | 207,000 |
11.29% ↑
|
1976年 | 186,000 |
-2.11% ↓
|
1975年 | 190,000 |
-5% ↓
|
1974年 | 200,000 |
-9.09% ↓
|
1973年 | 220,000 |
-12% ↓
|
1972年 | 250,000 |
-7.41% ↓
|
1971年 | 270,000 |
-8.32% ↓
|
1970年 | 294,500 |
-0.27% ↓
|
1969年 | 295,300 |
4.83% ↑
|
1968年 | 281,700 |
15.55% ↑
|
1967年 | 243,800 |
-5.1% ↓
|
1966年 | 256,900 |
-2.8% ↓
|
1965年 | 264,300 |
9.17% ↑
|
1964年 | 242,100 |
9.95% ↑
|
1963年 | 220,200 |
4.86% ↑
|
1962年 | 210,000 |
6.44% ↑
|
1961年 | 197,300 | - |
フィリピンの馬飼養数のデータを見ると、1960年代は全体的に増加傾向が続き、最高の飼養数を記録したのが1969年の295,300頭でした。この時期は、馬が農作業や運搬手段として重要な役割を担っており、農村地域での需要が高かったことが背景にあります。しかし1970年代に入ると、機械化の進展とともに、馬の役割は大規模に減少し、1975年には最低値の186,000頭まで急減しました。この動向は他の国とも共通しており、工業化や農業の機械化が家畜の働く役割に影響を与えたことが考えられます。
1980年代から1990年代にかけて、フィリピンの馬飼養数は概ね安定し、200,000頭台を維持していました。この期間は、全体的に馬が農業や輸送の中心的役割から外れる一方で、伝統的な農村生活や観光業の一部として、馬の需要が一定水準を保った時期と考えられます。また、特定の地域ではスポーツや娯楽(特に乗馬活動)として馬の利用が新たな価値を持ち始めたことも影響している可能性があります。
2000年代以降、フィリピンの馬飼養数は再び増加傾向に転じました。この時期の貴重なポイントとして、観光産業の発展と地域の文化的行事に馬が活用されるようになったことが挙げられます。また、都市化が進む一方で、農村部ではいまだに馬を利用する伝統的なライフスタイルが継続しており、農村キャリアとしての馬の価値が持続しています。2022年の251,298頭というデータは、持続可能な形で馬の需要が維持されていることを示しており、特に細やかな飼養管理や政策が関与していることが示唆されます。
フィリピンと他国を比較すると、例えばアメリカやヨーロッパ諸国では馬は主に娯楽やスポーツに使われており、経済的な役割は小さくなっています。一方、中国やインドなどの一部地域では、フィリピン同様、農作業や輸送手段としての利用が局地的に続いています。したがって、フィリピンは馬の多様な活用が期待される国として独自の重要性を持ちます。
一方で課題は依然として存在します。まず、都市化がさらに進むことで、農村部での馬の役割が長期的には減るリスクがあります。また、疫病対策や飼養環境の改善が不十分な場合、馬の健康維持や繁殖に影響が出る可能性があります。さらに、地政学的リスクや異常気象による自然災害も馬飼養業に影響を与える可能性があり、これは家畜用の資源や管理体制に直接的な圧力をかけるでしょう。
今後の具体的な対策として、まず獣医技術の発展や飼養環境の改善が重要です。特に地域ごとに適切な飼育指導を行うことで、持続可能性を高めることが期待されます。また、観光業における競技や馬車運営など、馬の新たな経済的利用価値を開拓することは、飼育を続ける動機を農村部にもたらすでしょう。さらに、自然災害や疫病のリスクに備えた早期警戒システムを導入することで、地理的リスクへの全体的な耐性を向上させることが急務となっています。
結論として、フィリピンの馬飼養数の推移は、農業文化や地域経済、また地元の魅力を示す重要なデータです。この現状を踏まえ、政策的な支援が適切に行われるならば、馬は農村振興や地域活性化に大きく寄与する可能性を持っています。そのため、馬を取り巻くさまざまな側面に焦点を当てながら、全国的な施策を展開していくことが必要です。