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フィリピンのイチゴ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、フィリピンのイチゴ生産量は1990年の1,669トンから2022年の3,019トンまで変化を遂げてきました。この期間中、1990年代後半から2000年代半ばには極端な減少が見られ、2003年には601トンという最低値まで落ち込みました。しかし、2018年以降からは着実な増加傾向を示し、特に2020年以降では劇的な上昇が確認されています。2022年には、過去最高の3,019トンという生産量を達成しました。

年度 生産量(トン)
2022年 3,019
2021年 1,781
2020年 1,202
2019年 1,102
2018年 842
2017年 819
2016年 762
2015年 786
2014年 781
2013年 672
2012年 613
2011年 605
2010年 611
2009年 654
2008年 657
2007年 484
2006年 561
2005年 590
2004年 595
2003年 601
2002年 1,150
2001年 1,138
2000年 1,116
1999年 1,143
1998年 1,098
1997年 1,280
1996年 1,440
1995年 2,423
1994年 2,389
1993年 2,547
1992年 2,547
1991年 2,700
1990年 1,669

フィリピンのイチゴ生産は長年にわたり多様な要因によって影響を受けてきました。1990年代初期には2,500トン前後の比較的安定した水準にありましたが、1996年以降、急速な減少が始まりました。この減少は、天候の不安定化、農地の転用、インフラ整備の遅れなどの複合的な要因が関与していると考えられます。1998年にはフィリピンがエルニーニョ現象による異常気象に見舞われ、大きな干ばつ被害を受けたことが記録されています。この影響がイチゴ農家にも大きな打撃を与え、生産量は1,098トンにまで減少しました。

その後、2000年代に入ってからも生産量は低迷を続け、2003年以降では生産量が600トンを下回る水準まで減少しました。この時期の低調な生産は、資金や技術の不足、栽培技術の停滞による農業効率の低下が背景に挙げられます。また、主要産地であるルソン地方での都市化や農地の縮小が生産性に悪影響を及ぼしていたことも見逃せません。

しかしながら、2010年以降、フィリピン政府や地域農業協会が技術支援・投資促進に注力し始めたことで、徐々に生産が回復し始めました。特に2018年以降、育種技術の導入や、より収穫効率の高い農法が普及し、イチゴの生産は着実に増加を見せます。こうした農業政策の転換によって、2020年にはついに1,200トンを超え、この上昇は翌年以降も続きました。2021年の1,781トンから2022年の3,019トンへの急成長は、短期間での革新的な成果を示しています。

この大幅な増加は、農家の技術教育プログラム、政府の財政支援、農業用水供給インフラの強化が相まって実現されたものです。また、近年の気候変動対策と灌漑設備の整備も、気象条件に左右されにくい安定した生産体制を構築するうえで大きな役割を果たしました。加えて、輸出拡大を目指した国際市場向け品種の育成も、生産意欲を高めた要因の一つとなっています。

一方で、フィリピンのイチゴ生産にはいくつかの課題が残されています。第一に、依然として気象災害や病害虫対策の脆弱性があり、生産量の安定性には課題が存在します。第二に、一部の地域では農業従事者の高齢化が進み、若い労働力の確保が難しくなっています。さらに、現地市場や輸出市場での物流インフラ整備の不足が、収穫後の品質保持や収益確保における大きなボトルネックとなっています。

今後の対策として、以下のような施策が有効です。第一に、農業技術のさらなる近代化を推進し、効率的な生産体制を整えるべきです。そのためには、ドローンやIoTセンサーの導入など、先進的な農業技術を普及させることが重要です。次に、若年層が農業分野に参入しやすくするためのインセンティブや教育プログラムを強化するべきです。また、物流インフラの強化に向けた地域間連携や国際的な投資の促進も不可欠です。

最後に、フィリピンのイチゴ生産回復の成功は、今後の農業政策づくりにおいて貴重な教訓を提供しています。政府や国際機関、地域社会が一体となって支援を行えば、地球温暖化や地政学的リスクの影響を最小化しつつ、持続可能な農業を実現することが可能です。この成功を他の作物への応用や、農業のさらなる発展に活かすべきでしょう。