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フィリピンのサトイモ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フィリピンのサトイモ生産量は1961年以降、大きな変動を見せてきました。特に1996年と1997年に突出した生産量を記録した一方で、それ以降の生産量は長期的に横ばいが続いています。2022年には113,131トンを記録しており、直近では安定的とはいえますが、ピーク時と比べて成長は限定的です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 107,422
-5.05% ↓
2022年 113,131
2.33% ↑
2021年 110,552
2.91% ↑
2020年 107,422
2.36% ↑
2019年 104,943
-2.79% ↓
2018年 107,957
-1.3% ↓
2017年 109,374
1.68% ↑
2016年 107,569
-3.95% ↓
2015年 111,988
1.47% ↑
2014年 110,365
-1.69% ↓
2013年 112,262
0.63% ↑
2012年 111,561
0.76% ↑
2011年 110,718
-0.04% ↓
2010年 110,761
-3.87% ↓
2009年 115,218
-0.64% ↓
2008年 115,956
1.76% ↑
2007年 113,954
1.8% ↑
2006年 111,942
2.04% ↑
2005年 109,700
7.26% ↑
2004年 102,274
1.56% ↑
2003年 100,705
-0.44% ↓
2002年 101,155
4.43% ↑
2001年 96,861
0.97% ↑
2000年 95,932
-1.42% ↓
1999年 97,317
-14.89% ↓
1998年 114,342
-25.3% ↓
1997年 153,076
-0.89% ↓
1996年 154,448
47.19% ↑
1995年 104,931
3.4% ↑
1994年 101,480
-4.32% ↓
1993年 106,061
-2.88% ↓
1992年 109,211
2.4% ↑
1991年 106,646
6.65% ↑
1990年 100,000
-2.91% ↓
1989年 103,000
-2.9% ↓
1988年 106,080
-3.12% ↓
1987年 109,500
6.33% ↑
1986年 102,980
10.67% ↑
1985年 93,049
-22.46% ↓
1984年 120,000
4.35% ↑
1983年 115,000
1.86% ↑
1982年 112,899
7.13% ↑
1981年 105,387
-3.64% ↓
1980年 109,373
-26.27% ↓
1979年 148,349
5.96% ↑
1978年 140,008
13.31% ↑
1977年 123,558
9.9% ↑
1976年 112,431
21.28% ↑
1975年 92,706
9.91% ↑
1974年 84,351
-7.91% ↓
1973年 91,596
6.19% ↑
1972年 86,254
-4.27% ↓
1971年 90,097
-1.67% ↓
1970年 91,628
-2.71% ↓
1969年 94,179
-3.18% ↓
1968年 97,268
1.04% ↑
1967年 96,265
-4.34% ↓
1966年 100,630
-9.84% ↓
1965年 111,607
-1.08% ↓
1964年 112,830
18.84% ↑
1963年 94,939
12.7% ↑
1962年 84,240
-8.93% ↓
1961年 92,498 -

フィリピンのサトイモ生産は1960年代から2022年までの約60年間で、通算して著しい波を伴った推移を見せています。例えば、1961年に92,498トンで推移していましたが、1978年から1980年にかけて140,000トンを超える異例の高い生産量を記録しました。その後、1996年と1997年に再び150,000トン台を超える大きなピークが確認されています。一方で2000年以降は概ね100,000トンから115,000トンの範囲内で推移しており、生産量に関しては長期的に停滞している状況と感じられます。

この変動については、いくつかの要因が影響していると推測されます。気候条件や土壌肥沃度の変化、農業技術の進歩、農業政策、さらには経済成長や国際市場の影響などが挙げられます。特にフィリピンは自然災害や台風の頻発地帯であり、こうした地理的特性が農作物、特に年間降水量に依存するサトイモ生産に大きく影響してきた可能性があります。例えば、1999年以降一時的に生産量が落ち込んだ背景には、強い台風の直撃やエルニーニョ現象による干ばつが挙げられるでしょう。

フィリピンのサトイモは主に主食あるいは地方の特産品として消費されており、特に農村部では重要な栄養源です。しかし、日本や韓国、中国などの先進農業国と比較して農業の効率化が遅れており、持続可能な生産体系が未確立であることが課題になっています。また、アメリカやヨーロッパの国々のように、大規模農業設備やデジタル技術の導入といった近代的な支援構造が十分ではありません。

今後考慮すべきポイントとして、まず農業における気候変動への適応が挙げられます。たとえば、耐干ばつ品種や高収量品種の導入を進めることで、自然災害のリスクを軽減することができます。また、灌漑施設の増設や農業用水管理の強化を通じて、気候の変動に追従する仕組み作りが不可欠です。さらに、農家への技術支援や教育、デジタル技術を活用した作付け管理が生産の効率化と持続可能性を高めると考えられます。

地政学的リスクとしては、フィリピンが中国との領有問題や貿易摩擦を含む南シナ海周辺の緊張に直面している点は、サトイモの国際取引や関連する農業資材供給への影響が想定されます。この影響を軽減するためには、国内市場の安定供給を優先しつつ、ASEANを中心とした地域内協力を強化し、農業技術交流を進展させることが重要です。

結局のところ、フィリピンのサトイモ生産量は大幅な成長ではなく安定が示されていますが、停滞の原因を突き止め、新しい技術や政策を導入することにより、農家の生活水準向上や食糧安全保障へと貢献できる可能性があります。国際協力や持続可能な農業技術の導入を積極的に進めることで、未来に向けた安定的かつ効率的なサトイモ産業が発展することが期待されます。