国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、フィリピンのオクラ生産量は1990年から2023年にかけて全体的に増加の傾向を示しています。1990年の生産量は23,913トンで、2023年には33,152トンに達し、約39%の増加が見られました。この間、1998年には24,007トンまで急減しましたが、以降は安定的な回復と成長が続き、現在に至るまで右肩上がりの動向を見せています。特に2020年以降の増加は顕著で、年間500トン前後の成長が見て取れます。
フィリピンのオクラ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 33,152 |
1.24% ↑
|
2022年 | 32,747 |
1% ↑
|
2021年 | 32,422 |
-0.65% ↓
|
2020年 | 32,632 |
2.91% ↑
|
2019年 | 31,708 |
1.38% ↑
|
2018年 | 31,277 |
-0.32% ↓
|
2017年 | 31,379 |
2.78% ↑
|
2016年 | 30,529 |
-0.36% ↓
|
2015年 | 30,638 |
1.2% ↑
|
2014年 | 30,274 |
0.51% ↑
|
2013年 | 30,122 |
1.17% ↑
|
2012年 | 29,774 |
2.21% ↑
|
2011年 | 29,129 |
-1.98% ↓
|
2010年 | 29,716 |
0.02% ↑
|
2009年 | 29,710 |
0.76% ↑
|
2008年 | 29,485 |
5.73% ↑
|
2007年 | 27,886 |
4.41% ↑
|
2006年 | 26,709 |
2.89% ↑
|
2005年 | 25,958 |
4.19% ↑
|
2004年 | 24,913 |
8.36% ↑
|
2003年 | 22,992 |
-8.96% ↓
|
2002年 | 25,254 |
0.37% ↑
|
2001年 | 25,160 |
-1.15% ↓
|
2000年 | 25,452 |
1.1% ↑
|
1999年 | 25,174 |
4.86% ↑
|
1998年 | 24,007 |
-22.58% ↓
|
1997年 | 31,009 |
2.15% ↑
|
1996年 | 30,355 |
5.09% ↑
|
1995年 | 28,886 |
1.68% ↑
|
1994年 | 28,410 |
11.56% ↑
|
1993年 | 25,465 |
0.78% ↑
|
1992年 | 25,267 |
6.16% ↑
|
1991年 | 23,801 |
-0.47% ↓
|
1990年 | 23,913 | - |
フィリピンは熱帯気候を活かし、オクラを含む農産物の生産が盛んな国です。オクラは国内消費用に加え、アフリカや中東、アジア諸国への輸出品としても重要な役割を果たしています。今回のデータからは、1990年から2023年にかけて総じて生産量が増加していることがわかりますが、その背景にはいくつかの要因があると考えられます。
まず、全体的な増加の要因として、フィリピン政府による農業振興政策が挙げられます。洪水や台風など自然災害が頻繁に発生する同国では、オクラのように比較的育成が容易で短期間で収穫可能な作物が支持されています。また、海外市場での需要拡大も生産量増加を後押ししており、特に輸出用の高品質オクラ栽培が重視されています。
一方で、データを見ると、生産量が一時的に大きく減少した時期も見受けられます。例えば、1998年には24,007トンと前年に比べて急減しています。この減少には1997年から1998年にかけて発生したエルニーニョ現象の影響があったと考えられます。この気象現象により降水量が減少し、農産物の生産が停滞したことが推測されます。このような自然災害はフィリピンの農業に大きな影響を及ぼし、将来的にも課題として残るでしょう。
2020年以降に見られる顕著な増加についても注目に値します。この期間は新型コロナウイルスのパンデミックが進行していた時期ですが、フィリピンでは農業政策が見直され、国内自給率向上が図られた可能性があります。また、パンデミック中に健康志向が高まり、ビタミンやミネラルが豊富なオクラの需要が増えたことが生産量の押し上げに寄与したと考えられます。
こうした生産量増加にはポジティブな面が多い一方で、長期的な課題も残されています。台風や洪水を含む気象リスクにさらされやすいだけでなく、急速な都市化による農地の減少が懸念されています。また、農業従事者の高齢化と若年層の農業離れが進行しており、労働力の確保が将来の課題となる可能性があります。
これらの課題に対応するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。一つは灌漑設備の整備や農業技術の導入を進めることで、自然災害に対する耐性を高めることです。また、地元市場と輸出市場の多様化を進め、需要変動への対応力を強化することも重要です。さらに、若者に農業を魅力的な職業とするための支援策や教育プログラムの拡充が必要です。これらの施策を通じて、持続可能な形でオクラ生産量を維持・向上させることが求められます。
結論として、フィリピンのオクラ生産量は過去数十年で着実に増加しており、今後も国内外での需要増加が見込まれるでしょう。一方で、気象リスクや人材不足といった課題への取り組みが急務です。政府や国際機関、民間セクターが連携し、効率的かつ持続可能な農業の実現を目指すことが喫緊の課題であると言えます。