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フィリピンのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、2023年におけるフィリピンのパイナップル生産量は2,944,260トンと記録されています。この生産量は、過去数十年にわたる着実な増加を反映しており、特に1980年代以降、その増加ペースは顕著です。また、直近では2021年以降に生産量が再び大幅に拡大している点が注目されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,944,260
1.02% ↑
2022年 2,914,425
1.9% ↑
2021年 2,860,202
5.83% ↑
2020年 2,702,554
-1.65% ↓
2019年 2,747,857
0.62% ↑
2018年 2,730,985
2.22% ↑
2017年 2,671,711
2.27% ↑
2016年 2,612,474
1.15% ↑
2015年 2,582,699
3.02% ↑
2014年 2,507,098
1.98% ↑
2013年 2,458,528
2.54% ↑
2012年 2,397,745
6.72% ↑
2011年 2,246,806
3.58% ↑
2010年 2,169,233
-1.33% ↓
2009年 2,198,497
-0.49% ↓
2008年 2,209,336
9.56% ↑
2007年 2,016,462
9.95% ↑
2006年 1,833,908
2.56% ↑
2005年 1,788,218
1.61% ↑
2004年 1,759,813
3.64% ↑
2003年 1,697,952
3.59% ↑
2002年 1,639,161
1.31% ↑
2001年 1,617,906
3.74% ↑
2000年 1,559,563
-0.4% ↓
1999年 1,565,878
-0.59% ↓
1998年 1,575,145
-2.53% ↓
1997年 1,616,113
-1.2% ↓
1996年 1,635,744
-0.64% ↓
1995年 1,646,268
2.11% ↑
1994年 1,612,327
2.58% ↑
1993年 1,571,811
3.63% ↑
1992年 1,516,685
12.71% ↑
1991年 1,345,599
-5.35% ↓
1990年 1,421,663
20.61% ↑
1989年 1,178,750
-0.2% ↓
1988年 1,181,165
-9.38% ↓
1987年 1,303,389
2.37% ↑
1986年 1,273,176
23.62% ↑
1985年 1,029,952
-0.54% ↓
1984年 1,035,584
7.1% ↑
1983年 966,962
-4.24% ↓
1982年 1,009,779
3.83% ↑
1981年 972,486
-3.22% ↓
1980年 1,004,800
66.2% ↑
1979年 604,585
30.04% ↑
1978年 464,917
10.22% ↑
1977年 421,827
0.47% ↑
1976年 419,872
-1.06% ↓
1975年 424,370
25.44% ↑
1974年 338,300
15.3% ↑
1973年 293,400
4.01% ↑
1972年 282,100
20.4% ↑
1971年 234,300
0.37% ↑
1970年 233,431
-2.07% ↓
1969年 238,362
5.47% ↑
1968年 225,999
8.65% ↑
1967年 208,000
10.64% ↑
1966年 188,000
6.82% ↑
1965年 176,000
13.55% ↑
1964年 155,000
2.65% ↑
1963年 151,000
7.86% ↑
1962年 140,000
20.69% ↑
1961年 116,000 -

フィリピンのパイナップル生産量の推移を分析すると、1960年代には年間約10万トン~20万トン未満と控えめな規模からスタートしましたが、1980年代には100万トン規模へと大きな飛躍を遂げています。この急激な生産量の拡大は、主に農業技術の進展、農法の近代化、および輸出市場の需要増加に起因しています。その後も一貫して生産量は増加を続け、2023年には約294万トンに達し、過去最高値を記録しています。

特に注目すべきは1970年代から1980年代初頭にかけての伸びです。この期間は、一部地域での農地拡大、特にミンダナオ島などの熱帯地域での栽培適地の開発が進められたことが生産量の大幅な増加に寄与しました。1980年には初めて生産量が100万トンを突破、同時にフィリピンが世界における主要なパイナップル生産国としての地位を確立しました。

21世紀に入って以降は、2007年以降2,000,000トンを超える規模で安定した生産量を維持するとともに、2018年以降は毎年約数十万トン規模で堅調な増加を続けています。これには、国内政策による果物栽培の支援、輸出先の拡大、さらには冷凍果物や加工食品としての需要増加が大きくかかわっています。

これらの推移を見ると、フィリピンは気候条件や土壌環境がパイナップル栽培に適しており、これが継続して農業収益を上げるための強力な要素となっていることがわかります。しかしながら、課題も抱えています。まず第一に、近年頻発する台風や干ばつなどの気象災害が生産量に与える影響です。2020年に僅かに生産量が減少している点(2,702,554トン)は、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、気象条件が要因となっている可能性が指摘されます。このような災害への耐性を高めるためには、灌漑設備の改良や気象データの活用によるより精密な栽培計画が求められます。

また、輸出市場の競争が厳しさを増している点も課題です。フィリピンの輸出品であるパイナップルは、例えばコスタリカやタイなどの競合国とも競争しなければなりません。競争力を強化するためには、製品の品質向上や有機栽培技術の導入、差別化されたブランド化戦略が有効です。

さらに、気候変動の影響を考慮すると、持続可能な農業手法への移行が急務です。長期的に農地の肥沃度を維持し、生態系を保護するための政策支援が必要です。また輸出依存型の経済モデルを補完するため、国内消費量を活発化させる政策や、例えば加工品産業を国内で発展させることも一案です。

結論として、フィリピンのパイナップル生産量の増加傾向は、その産業基盤の強さを反映していますが、自然災害や気候変動、国際競争といった課題が今後の成長を制限するリスクを抱えています。このため、国や国際機関は、気候変動対策や持続可能な農業への投資、緊急時に対応可能な農業インフラの強化を進める必要があります。同時に、フィリピン産パイナップルのブランド価値を高めるために、品質管理の基準向上やマーケティングの改善が鍵となるでしょう。